データセンターとは?
基礎知識からクラウドとの比較、導入メリットまで徹底解説

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課題解決のためのノウハウ

近年、クラウドコンピューティングの普及に伴い、データセンターの重要性が高まっています。企業の機密情報や顧客データの保守・管理は重要な義務であり、「自社内でサーバーを抱えており、災害発生時の事業継続に不安を感じている」「データ管理や運用面においてシステム担当者に稼働負荷がかかっている」といった課題を抱える企業は少なくありません。本記事では、データセンターの基礎知識から種類、メリット・デメリット、最新動向、選び方まで徹底解説します。データセンターの活用を検討している方はもちろん、既に利用している方も改めて理解を深めるために、ぜひご一読ください。

データセンターの種類や選び方については、こちらでも詳しく解説しています。

データセンターとは?

データセンターとは何か、その役割や主要設備について解説します。データセンターを理解することは、企業のIT戦略を考える上で基礎となる知識です。

データセンターの定義と役割

データセンターとは、サーバーやネットワーク機器などのIT機器を集中的に収容し、安全に管理・運用するための専用施設です。単なる機器の保管場所ではなく、企業のデータやシステムを守るための高度なインフラが整備されています。高い電力供給能力、冷却設備、セキュリティ対策など、企業の情報資産を守るための環境が整備されており、24時間365日安定稼働するように設計されています。

現代のビジネスにおいて、データは最も重要な資産の一つとなっており、そのデータを安全かつ安定的に保管・処理するための施設としてデータセンターは不可欠な存在です。災害対策、セキュリティ強化、運用コスト削減など、多くの企業がデータセンターを活用してIT環境の最適化を図っています。

セキュリティ対策について詳しくは、「情報セキュリティ3要素とは?安全性を高めるうえで知っておきたいこと」をご覧ください。

データセンターの主要設備と機能

データセンターには、安定したサービス提供のための様々な設備が整っています。これらの設備が連携することで、高い可用性と安全性を実現しています。

主な設備としては、無停電電源装置(UPS)や自家発電設備による電源設備、サーバーの発熱を効率的に除去する空調設備、入退館管理システムや監視カメラなどのセキュリティ設備が挙げられます。

電源設備

無停電電源装置(UPS)や自家発電設備により、停電時でも安定した電力供給を確保できます。信頼性の高いシステム運用の基盤となります。

空調設備

サーバーから発生する熱を効率的に除去し、適切な温度と湿度を維持することで、機器の安定動作と長寿命化に貢献します。

セキュリティ設備

入退館管理システム、監視カメラ、生体認証などにより物理的なセキュリティを確保することができます。不正アクセスの防止に欠かせない要素です。

消火設備

火災発生時に電子機器への影響が少ないガス系消火設備などが設置されています。大切なデータの保護と事業継続に必須の装備です。

ネットワーク設備

冗長構成の高速ネットワーク回線により、安定した通信環境を提供できます。ビジネスのデジタル化を支える基幹インフラとなっています。

これらの設備が複合的に機能することで、企業の重要なシステムやデータを守り、ビジネスの継続性を確保することができます。特に近年は、環境負荷を軽減するための省エネ技術の導入や、AIやビッグデータ処理に対応した高密度・高効率な設備が注目されています。

環境対策について詳しくは、「持続可能な社会実現のために 再生可能エネルギー導入で企業ができる取り組みとは」をご参照ください。

データセンターの種類と特徴

データセンターは規模や用途によって様々な種類に分類されます。企業は自社のニーズに合わせて最適なタイプを選択することが求められます。

エンタープライズデータセンター

大企業が自社専用に構築・運用するデータセンターです。自社のニーズに合わせた柔軟な設計が可能である一方、構築・運用コストが高額になる傾向があります。

コロケーションデータセンター

複数の企業がスペースを共有し、各社が自社のIT機器を設置・運用する形態のデータセンターです。施設とインフラの共有によりコスト効率が高まります。

クラウドデータセンター

AWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスを提供するための大規模データセンターです。高い柔軟性とスケーラビリティが特徴です。

エッジデータセンター

ユーザーの近くに配置される小規模なデータセンターで、低遅延が求められるサービスに適しています。IoTデバイスの増加に伴い、注目度が増しています。

ハイパースケールデータセンター

非常に大規模で、何千もの物理サーバーを収容可能な設計のデータセンターです。主に大手クラウドプロバイダーや技術企業によって運営されています。

それぞれの種類には固有の特徴があり、企業規模や業種、ビジネス要件などに応じて選択することが重要です。特に中小企業にとっては、初期投資を抑えつつ高品質なインフラを利用できるコロケーションやクラウドデータセンターの活用が有効な選択肢となることが多いでしょう。

データセンターとクラウドの違い

データセンターとクラウドは密接に関連していますが、明確な違いがあります。企業のIT戦略を立てる上で、両者の特性を理解することが不可欠です。

物理インフラとサービスモデルの違い

データセンターは物理的な施設であり、サーバーやネットワーク機器、冷却システム、電源設備などのハードウェアインフラで構成されています。一方、クラウドはこうした物理インフラ上に構築されたサービスモデルであり、インターネットを通じてコンピューティングリソースを提供します。

簡単に言えば、データセンターは「箱」や「建物」であり、クラウドはその中で提供される「サービス」と捉えることができます。クラウドサービスプロバイダー(AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど)は、自社のデータセンター内に構築されたインフラを使って、仮想化技術を駆使したサービスを提供しています。

ユーザーから見た場合、データセンターサービスでは「スペース」や「ラック」を借りるのに対し、クラウドサービスでは「コンピューティングリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)」を必要に応じて利用する形となります。

所有形態と管理責任の違い

データセンターを利用する場合、企業はコロケーションやハウジングという形で、物理的なスペースやラックを借り、自社でサーバー機器を購入・設置・管理します。一方、クラウドサービスでは、ハードウェアの所有や管理はプロバイダーが担当し、ユーザーは必要に応じてリソースを利用します。

この違いは責任分界点にも大きく影響します。データセンター利用の場合、サーバーのOS管理やアプリケーション管理、セキュリティ対策などはすべて利用企業の責任となります。クラウドサービスでは、IaaS、PaaS、SaaSなどのサービスモデルによって責任範囲が異なりますが、基本的にはハードウェア層の管理負担から解放されます。

実際のビジネスシーンでは、自社のセキュリティポリシーや規制要件、既存システムとの連携性などを考慮して、どこまでを自社で管理し、どこからサービスプロバイダーに委託するかを判断することが必要です。

コストモデルの違い

データセンター利用の場合、設備投資(CAPEX)が主体となり、物理サーバーの購入、ラックスペースのレンタル、保守費用などの固定費が発生します。クラウドでは運用支出(OPEX)が中心で、使用したリソース分だけ支払う従量課金制が一般的です。

この違いは企業の財務戦略にも影響を与えます。データセンター利用では初期投資が大きく、長期的な利用を前提としたコスト計画が必要です。一方、クラウドサービスでは初期投資を抑えられる反面、長期的・大規模な利用では総コストが高くなる可能性があります。

中小企業や新興企業にとっては、初期投資を抑えられるクラウドサービスの方が参入障壁が低く、大企業や特定の規制業界では自社管理のデータセンター環境を構築するケースも多く見られます。ただし、近年はハイブリッドアプローチを取る企業も増えており、コスト効率と管理負担のバランスを考慮した戦略が求められています。

リソース拡張性と制御性の違い

クラウドサービスは、数分から数時間でリソースを拡張・縮小できる柔軟性が最大の特長です。対して、データセンター内の物理環境では、新しいサーバーの調達・設置に時間とコストがかかるため、急な需要変動への対応は容易ではありません。

この特性の違いは、ビジネスの成長フェーズやシステム要件によって、メリット・デメリットが変わってきます。急成長するスタートアップや、季節変動の大きいビジネスモデルでは、クラウドの柔軟性が大きな武器となります。一方、安定した負荷が予測でき、特殊なハードウェア要件がある場合には、データセンター環境の方が長期的なコスト効率が良くなるケースもあります。

基幹業務は自社管理のデータセンター環境で、開発環境や一時的な需要増に対応する部分はクラウドで、といった使い分けが有効です。これにより、安定性と柔軟性、コスト効率のバランスを取ることができます。

適したビジネスシーンと活用領域

データセンターは、規制要件の厳しい業界や、機密性の高いデータを扱う場合、特殊なハードウェア要件がある場合に適した選択肢となります。クラウドは、変動する需要への対応、地理的に分散したユーザーへのサービス提供、開発環境の迅速な構築などに向いています。

具体的なビジネスシーンとしては、以下のような使い分けが考えられます。

金融機関や医療機関

厳格なセキュリティと規制に対応するため、プライベートデータセンター環境を活用しています。個人情報や機密データの安全な管理が可能です。

Eコマース

季節変動やセール時の急激なトラフィック増に対応するため、クラウドの柔軟なスケーリング性を活用することが一般的です。需要に応じたリソース調整が容易となります。

研究開発部門

高性能計算や大規模シミュレーションに必要な特殊ハードウェアを備えたデータセンター環境が選ばれます。研究特性に最適化された環境を構築できる利点があります。

スタートアップ企業

初期投資を抑えつつ迅速にサービスを立ち上げるため、クラウドサービスが選ばれることが多いです。成長に合わせて柔軟にリソースを拡張できる特長があります。

多くの企業では、オンプレミス環境とクラウドを組み合わせたハイブリッド構成を採用しており、それぞれの利点を活かした最適な環境を構築しています。

ハイブリッド環境の構築については、「ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットと使い分け例を紹介」をご参照ください。

データセンターで利用できるサービス

データセンターでは様々なサービスが提供されており、企業のニーズに合わせて最適なものを選択することができます。それぞれのサービスの特徴と活用方法を理解することで、効果的なIT戦略を立てることが可能になります。

コロケーション

コロケーションサービスは、データセンター内に専有スペースを借りて、自社のサーバーやネットワーク機器を設置できるサービスです。専有スペース内では機器を自由にレイアウトでき、高いセキュリティレベルを維持できることがメリットです。

コロケーションサービスの主な特徴は以下の通りです。

柔軟なスペース選択

ラック単位、ケージ単位、部屋単位など、必要に応じたスペースを選択できます。用途や規模に合わせて最適な環境を構築できます。

高品質なインフラ共有

電源、空調、セキュリティなどの設備を共有することでコスト効率が向上します。自社での設備投資を抑えながら高品質なインフラを利用できます。

自社管理の自由度

ハードウェア選定や構成を自社要件に合わせて細かく調整できます。特殊な構成やレガシーシステムにも対応可能です。

拡張性

ビジネス成長に合わせて、必要に応じてスペースを追加できます。段階的な拡張計画を立てやすく、投資を最適化できます。

コロケーションサービスは、自社のIT環境を完全にコントロールしたいが、データセンター施設の構築・運用コストは避けたい企業に適しています。特に、専門的なハードウェア要件がある場合や、既存機器の移行を検討している場合に有効な選択肢となります。

コロケーションについて詳しくは、「コロケーションとは?情報管理担当者が知っておきたい基礎知識」をご参照ください。

ハウジング

ハウジングサービスも、データセンター内に専有スペースを借りて自社サーバーを設置するサービスです。一般的にはコロケーションよりも小規模なスペース単位で提供されることが多く、サーバーラック単位でのレンタルが一般的です。料金は主に使用するラックの数や電力使用量で決まりますが、ラックの電源供給力や耐荷重は選定時に意識すべきポイントです。

ハウジングサービスを選ぶ際のポイントは以下の通りです。

ラック仕様の確認

搭載予定の機器に対して十分な電力供給能力と耐荷重能力があるかを確認します。サーバーの性能を最大限に発揮するための基盤となります。

冷却能力の確認

高密度サーバーを利用する場合、十分な冷却能力があるかを検討します。発熱量の多い機器でも安定稼働できる環境が必要です。

ネットワーク帯域

必要な通信帯域と回線冗長性が確保されているかを確認します。業務に適した通信速度と安定性を持つ回線を選びましょう。

リモートハンズサービス

緊急時に代理で機器操作をしてくれるサービスの有無と対応範囲を把握します。遠隔地からでも迅速な対応が可能になります。

ハウジングサービスは、中小規模の企業や、特定のシステムだけをデータセンターに移行したい企業に適しています。自社のIT環境を維持しながら、電源や空調、セキュリティなどの運用負担を軽減できる点が魅力です。

ハウジングについて詳しくは、「ハウジングとホスティングの違いとは?自社に合った選択のポイントを解説」をご覧ください。

ホスティング

ホスティングサービスは、サーバー機器やインターネット回線などを全てレンタルできるサービスです。データセンター事業者がハードウェアから保守・運用までを一括して提供するため、自社でのサーバー管理スキルや人員が不足している企業にとって最適な選択肢となります。

専用ホスティングでは1台のサーバーを占有して利用でき、セキュリティ性と自由度が高い一方、共有ホスティングでは複数顧客で1台のサーバーを共有するためコスト効率に優れています。

VPSホスティングは仮想化技術により柔軟性とコスト効率のバランスを実現し、中小規模のビジネスに適しています。いずれのタイプも初期投資を抑えながら安定したサーバー環境を実現できます。

ホスティングの詳細については、「ホスティングサービスとは?サーバー管理の負担軽減を実現するサービス選択のポイントを解説」をご参照ください。

マネージドサービス

マネージドサービスは、ハウジングやコロケーションサービスのオプションとして提供されることが多く、サーバーの設置から運用・監視・保守までをデータセンター事業者が代行するサービスです。専門知識を持つスタッフが24時間365日体制で監視し、障害発生時には迅速な対応を行います。システムの安定運用に必要な日々のパッチ適用やバックアップ、セキュリティ対策まで包括的に提供するため、IT部門の負担を大幅に軽減できます。

特に中小企業や専門人材が不足している企業にとって、高品質なIT環境を少ない社内リソースで維持できる点が大きなメリットです。また、明確なSLA(サービスレベル契約)に基づいたサービス提供により、システム運用の品質と透明性が確保されます。

マネージドサービスについて詳しくは、「マネージドサービスとは?メリット・デメリットやフルマネージドサービスとの違いについて解説」をご覧ください。

クラウドサービスとの連携

近年、データセンターはクラウドサービスとの連携を強化しています。クラウド連携サービスでは、データセンターのハウジング環境とクラウド環境をシームレスに接続し、ハイブリッドクラウド環境を構築することができます。

クラウド連携サービスの主な特徴は以下の通りです。

専用接続サービス

AWS Direct ConnectやAzure ExpressRouteなど、クラウドサービスとの閉域接続が提供されています。セキュアで高速な専用線接続により、パブリックインターネットを経由せずに通信が可能になります。

マルチクラウド対応

複数のクラウドサービスと接続し、最適なリソース配置を実現することができます。各クラウドの強みを活かしながら、ベンダーロックインを回避できる柔軟性が特長です。

データ移行支援

オンプレミス環境からクラウドへのデータ移行をサポートするサービスも提供されています。大容量データも効率的に転送でき、移行プロセスを円滑に進めることが可能です。

統合管理環境

オンプレミスとクラウドのリソースを一元的に管理できるツールやサービスを提供されています。複雑化するハイブリッド環境でも統一的な運用が可能になります。

こうした連携サービスを活用することで、セキュリティ要件の高いシステムはデータセンター内に、変動の大きいワークロードはクラウドに、といった使い分けが可能になります。特に、段階的なクラウド移行を検討している企業にとって、柔軟な選択肢を提供してくれます。

クラウドとの連携について詳しくは、「ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットと使い分け例を紹介」をご参照ください。

データセンター活用のメリット

データセンターの活用には様々なメリットがあります。自社のニーズに合った選択をするためには、これらを正確に理解することが必要です。

セキュリティの強化

データセンターは、入退館管理システム、生体認証、監視カメラなどの物理的セキュリティと、ファイアウォールやIDS/IPSなどの論理的セキュリティを組み合わせ、多層的な防御を実現します。

データセンター活用によるセキュリティメリットは以下の通りです。

多層的な物理セキュリティ

外周フェンスから建物、フロア、ラックに至るまで段階的に強化されたセキュリティ対策により、物理的な侵入リスクを最小化できます。監視カメラや一人ずつしか通過できない連続ドア(エアロック式)により、許可された人員のみがサーバー設置エリアに入れるようになっており、不正侵入を確実に防止する仕組みとなっています。

専門的な監視体制

セキュリティのプロフェッショナルによる常時監視で、異常の早期発見と迅速な対応が可能になります。

高度な論理セキュリティ

最新のファイアウォールやIDS/IPS、DDoS対策などを導入し、サイバー攻撃からシステムを防御する体制が整えられています。

コンプライアンス対応の容易さ

業界標準のセキュリティ要件に準拠した環境により、各種規制やコンプライアンス対応の負担を軽減できる利点があります。

セキュリティノウハウの活用

データセンター事業者の豊富なセキュリティ知見とベストプラクティスを自社システムに適用できます。

データセンターの活用により、自社単独では実現困難な多層的で強固なセキュリティ対策が可能になります。専門家による最新のセキュリティ対策と常時監視体制は、増加する脅威に対する企業の防御力を大幅に強化します。情報資産の保護とビジネス継続性の確保を両立させるためにも、高度なセキュリティを備えたデータセンターの活用が推奨されます。

セキュリティ対策について詳しくは、「サイバーセキュリティとは?サイバー攻撃を受けた際のリスクや対策を解説」をご覧ください。

信頼性と可用性の向上

冗長構成を採用した電源設備や、ネットワーク回線、空調設備を有するデータセンターでは、システムの可用性が大幅に向上します。日本データセンター協会の基準によると、一般的なデータセンターは、99.98%(ティア3)から99.99%(ティア4)の高い稼働信頼性を想定しており、ビジネスクリティカルなシステムの安定運用に貢献します。複数系統の電源供給と無停電電源装置(UPS)により停電時もシステム稼働を維持し、さらに自家発電設備による長時間の電力バックアップも確保しています。ネットワークも複数キャリアとの接続や冗長構成により、通信障害リスクを最小化しています。加えて、24時間365日の監視体制により障害の早期発見と迅速な対応が可能となり、ダウンタイムを大幅に削減できます。

企業にとって、こうした高可用性環境を自社で構築することは技術的にもコスト的にも困難であり、データセンター活用の大きなメリットといえるでしょう。

参照:日本データセンター協会制定 データセンターファシリティスタンダードの概要

BCP対策と災害リスクの低減

日本は地震や台風などの自然災害が多い国であり、データセンターは耐震・免震構造の建物や、無停電電源装置(UPS)、自家発電設備などにより、災害時でもシステムを継続運用できる環境を提供しています。地理的に離れた複数のデータセンターを活用することで、大規模災害時のリスクをさらに分散できます。

BCP対策におけるデータセンター活用のメリットは以下の通りです。

業務継続性の向上

高度な防災対策により、災害時でも基幹システムの稼働を維持できます。通常のオフィスが被災しても事業を継続できる強固な基盤となります。

リカバリ時間の短縮

専門スタッフによる24時間365日の監視と迅速な障害対応により、システム復旧時間が大幅に短縮されます。ビジネスのダウンタイムを最小限に抑えられます。

データ保全の確実性

遠隔地へのバックアップや災害復旧サイト連携により、大規模災害時でも重要データの保全が可能です。データ損失リスクを大幅に軽減できます。

コンプライアンス対応

地理的に離れた複数のデータセンターを活用することで、広域災害にも対応できる冗長構成が実現できます。単一障害点を排除できます。

復旧計画

多くの業界で求められるBCP対応の法的・規制要件を満たすことができます。ステークホルダーからの信頼確保にも貢献します。

このように、データセンターの活用は単なるサーバー保管場所の確保以上の価値があり、企業のBCP対策として極めて有効な選択肢となっています。特に災害大国である日本において、事業継続性を高める上で、専門的な施設・設備・運用体制を持つデータセンターの活用は不可欠といえるでしょう。

BCP対策については、「BCPとは?企業の災害対策に重要なデータセンター選び」をご参照ください。

運用負担とコストの最適化

データセンターを利用することで、サーバールームの設置や空調設備の整備、24時間監視体制の構築などにかかるコストを削減できます。初期投資の大幅な抑制と運用コストの平準化により、IT予算の計画的な運用が可能になります。

自社でデータセンター相当の環境を構築する場合と比較すると、土地や建物の取得・維持費、専門設備の導入費、冗長化対応の追加コスト、専門人材の雇用費など、多くの点でコスト優位性があります。また、電力や冷却などのインフラを複数企業で共有することによるスケールメリットも大きく、特に中小企業にとってはエンタープライズレベルのインフラを手頃な価格で利用できる点が魅力です。さらに、IT部門の人的リソースをインフラ管理からビジネス価値創出へと振り向けられることも、間接的なコスト最適化につながります。

データセンターの最新トレンドと技術進化

データセンター業界は急速に進化しており、戦略的なIT投資を行うためには最新のトレンドを理解することが求められます。

AI・GPU対応データセンターの需要拡大

AI技術の普及により、高性能GPUサーバー向けの電力供給・冷却能力を備えたデータセンターの需要が急増しています。高密度ラックと液冷技術など、次世代AI基盤として価値がさらに高まるでしょう。

AI・機械学習ワークロードに対応したデータセンターの特徴は以下の通りです。

高密度ラック対応

1ラックあたり30kW以上の電力供給能力が必要とされています。従来の3〜5倍の電力密度に対応できる設備が求められています。

先進的冷却技術

液浸冷却や直接液体冷却(DLC)などの採用が求められます。通常の空冷では処理しきれない高い発熱量に対処する必要があるためです。

高速ネットワーク

InfiniBandやRoCEなどの低遅延・高帯域ネットワークが不可欠です。大量データの高速転送がAI処理のボトルネックとなるためです。

スケーラブルなインフラ

AI/ML処理の需要増加に対応できる拡張性が求められています。システム規模を柔軟に拡大できる設計であることが必須の条件となっています。

電力効率の最適化

GPUクラスタの効率的な電力管理と冷却が必須となっています。高消費電力機器の運用コストを抑える工夫が競争力を左右する要素です。

GPUサーバーについて詳しくは、「GPUサーバーとは?GPUサーバーのメリットや高密度サーバーのデータセンター運用で気を付けるべきポイントを解説」をご参照ください。

地方分散と地域活性化

大都市圏の電力ひっ迫や災害リスク分散を背景に、地方へのデータセンター展開が加速しています。大都市圏と比較して地価が安価な場合が多く、拡張性に優れている点や、地域経済への貢献も含め、自治体による積極的な誘致が進んでいます。

こうした地方分散型データセンターは、地域の雇用創出や関連産業の集積効果をもたらし、地方創生の新たな核として注目されています。また、地方では太陽光発電や風力発電などのための広大な用地確保が比較的容易であり、再生可能エネルギー設備との連携がしやすい環境にあります。こうした特性を活かしたデータセンターは、企業のカーボンニュートラル目標達成にも貢献するため、環境配慮とコスト効率の両面から評価が高まっています。

特に、大規模災害時のリスク分散という観点からも、地理的に分散した複数拠点でのデータセンター運用は、企業のBCP対策として重要性を増しています。

グリーンデータセンターと環境配慮

環境配慮型のグリーンデータセンターは、気候変動対策や企業のESG戦略において中核的な役割を果たしています。再生可能エネルギーの活用、高効率冷却技術の導入、PUE(Power Usage Effectiveness)値の最適化などを通じて、データセンターの環境負荷を大幅に低減することが可能になっています。特に近年は、太陽光や風力発電などのクリーンエネルギーを直接調達する企業間電力購入契約(PPA)の活用や、データセンターの排熱を地域暖房に利用するなど、エネルギーの循環利用も進んでいます。

PUE値についても、従来の2.0前後から着実に改善が進んでおり、国内データセンター業界では環境負荷低減に向けた取り組みが加速しています。日本政府も脱炭素社会の実現に向け、データセンターの省エネ化を重要課題と位置づけており、業界全体でのPUE値改善が進められています。また、LEED、CASBEE、ISO 14001などの環境認証取得を通じた客観的な環境性能の評価・公開も広がっており、カーボンニュートラル目標を掲げる企業にとって、グリーンデータセンターの選択は環境戦略の重要な要素となっています。

環境配慮型データセンターについては、「脱炭素化に挑戦する企業の取り組みとは?CO2削減を目指す具体的施策」をご参照ください。

データセンター選びのポイント

データセンターを選ぶ際には、様々な要素を総合的に判断しなければなりません。ビジネスの継続性や成長性、セキュリティなど多角的な視点から最適なデータセンターを選定するためのポイントを解説します。

データセンターの詳しい選び方については、「失敗しないデータセンター選び5つのポイント」をご覧ください。

立地条件と災害リスクの評価

データセンターの立地は災害リスクに大きく影響します。地震や津波、洪水などの自然災害リスクが低いエリアにあるデータセンターを選ぶことで、事業継続性を高めることができます。また、電力の供給安定性や、本社や主要拠点との距離も考慮すべき要素です。

立地選定で確認すべき主なポイントは以下の通りです。

地震リスク

活断層からの距離や過去の地震履歴を確認するとよいでしょう。耐震・免震・制震構造の採用状況も選定基準として欠かせない要素です。

水害リスク

海抜や河川からの距離、過去の浸水記録を調査することをお勧めします。洪水ハザードマップでの位置づけも欠かせない判断材料となります。

電力インフラ

商用電力の安定供給地域か確認することが大切です。複数変電所からの受電ルート確保が理想的とされています。

交通アクセス

災害時の駆けつけやすさを考慮する必要があります。複数の交通手段でアクセス可能な立地が望ましいとされています。

通信インフラ

複数の通信キャリアの利用可能性を確認することが推奨されます。バックボーンネットワークへの近接性も選定における主要な要素です。

データセンターの立地選定は、BCPの基盤となる重要な判断です。リスク分散の観点から、プライマリーとバックアップで異なる地域のデータセンターを選定することで、広域災害発生時でもビジネス継続性を確保することが可能となります。中長期的な視点で、災害リスクの低い立地にあるデータセンターを慎重に選定することをお勧めします。

立地選定の重要性については、「免震構造とは?自社のデータを守る免震構造が講じられたデータセンター選択のポイントを解説」をご参照ください。

ファシリティレベルと信頼性基準

データセンターの品質や信頼性を評価する際に欠かせないのが、ファシリティレベルです。日本データセンター協会(JDCC)の「データセンターファシリティスタンダード」では、ティア1から4までの4段階で評価されており、ティアレベルが高いほど冗長性や可用性が高くなります。

各ティアレベルが想定している、データセンターのサービスレベル
ティア1
  • 地震や火災など災害に対して、一般建物レベルの安全性が確保されている。
  • 瞬間的な停電に対してコンピューティングサービスを継続して提供できる設備がある。
  • サーバ室へのアクセス管理が実施されている。
  • 想定するエンドユーザーの稼働信頼性:99.67%以上
ティア2
  • 地震や火災など災害に対して、一般建物レベルの安全性が確保されている。
  • 長時間の停電に対してもコンピューティングサービスを継続して提供できる設備がある。
  • サーバ室へのアクセス管理が実施されている。
  • 想定するエンドユーザーの稼働信頼性:99.75%以上
ティア3
  • 地震や火災など災害に対して、一般建物より高いレベルでの安全性が確保されている。
  • 機器のメンテナンスなど一部設備の一時停止時においても、コンピューティングサービスを継続して提供できる冗長構成の設備がある。
  • 建物およびサーバ室へのアクセス管理が実施されている。
  • 想定するエンドユーザーの稼働信頼性:99.98%以上
ティア4
  • 地震や火災など災害に対してデータ保全の安全性を保ち、かつ可用性も確保した非常に高いレベルでの耐災害性が確保されている。
  • 機器の故障やメンテナンスなど一部設備の一時停止において、同時に一部機器に障害が発生してものコンピューティングサービスを継続して提供できる、より高いレベルの冗長構成の設備がある。
  • 敷地、建物、サーバ室及びラック内のIT機器へのアクセス管理が実施されている。
  • 想定するエンドユーザーの稼働信頼性:99.99%以上

引用:日本データセンター協会制定 データセンターファシリティスタンダードの概要

セキュリティ対策と認証

最適なデータセンターを選ぶ際、セキュリティ対策と各種認証の評価は選定プロセスにおいて極めて高い優先度を持ちます。企業の情報資産を預けるにふさわしいセキュリティレベルを持つデータセンターを見極めるためには、物理的セキュリティと論理的セキュリティの両面から包括的に評価することが求められます。また、第三者機関による客観的な認証取得状況も、データセンターの信頼性を判断する重要な指標となります。

セキュリティ評価の主なポイントは以下の通りです。

物理セキュリティの評価方法

生体認証の種類や監視カメラの設置状況、セキュリティゾーニングの明確さを確認するとよいでしょう。24時間有人監視の実施状況も不可欠な評価項目です。

アクセス管理の厳格さ

訪問者管理ポリシーや入退館記録の保管期間を確認することをお勧めします。特権アクセス管理の方法も評価すべき主要なポイントとなります。

監視カメラの設置状況

死角のない監視体制があるか確認するとよいでしょう。録画データの保存期間も主要な判断材料となります。

セキュリティ認証の種類

ISO 27001(ISMS)やPCI DSS、SOC2などの国際的な認証取得状況を確認することが推奨されます。認証の更新頻度も信頼性の目安となります。

セキュリティ監査の実施

第三者による定期的なセキュリティ監査の実施有無を確認するとよいでしょう。脆弱性診断の頻度も不可欠な判断材料となります。

インシデント対応体制

セキュリティインシデント発生時の対応フローやエスカレーション体制を確認することをお勧めします。過去のインシデント対応実績も有用な参考材料となります。

業種や取り扱うデータの機密性に応じて、必要なセキュリティレベルは異なります。金融機関や医療機関など、厳格な規制が適用される業種では、それらの要件を満たしているかを特に慎重に確認することが必須となります。

ネットワーク品質と接続性

データセンター選定において、ネットワーク品質と接続性は事業継続性に直結する重要な要素です。特に複数の通信事業者(キャリア)との接続が可能なキャリアニュートラルなデータセンターを選ぶことで、回線障害リスクを分散できるだけでなく、料金競争によるコスト最適化も図れます。また、帯域保証型の接続サービスでは、SLAによって通信品質が担保されるため、安定したサービス提供が可能になります。

グローバルに展開する企業や、オンラインサービスを提供する企業にとっては、低遅延・高帯域のインターネット接続が不可欠であり、主要なインターネットエクスチェンジ(IX)への近接性も重要な選定基準となります。さらに近年では、AWS Direct ConnectやAzure ExpressRouteなどの閉域接続サービスを提供するデータセンターも増えており、ハイブリッドクラウド環境の構築を検討している企業にとって大きなメリットとなります。

サポート体制とSLA

データセンター選びでは、24時間365日体制の監視サービスや障害時対応フロー、リモートハンズの品質など、サポート体制の充実度も不可欠な判断基準となります。特に自社にIT専門家が少ない企業にとって、専門スタッフによる手厚いサポートは大きな安心につながります。

SLA(サービスレベル契約)では、稼働率保証だけでなく、障害時の目標復旧時間や補償内容も確認すべきポイントです。障害発生時の連絡体制や一次対応の迅速さは、ビジネスへの影響を最小限に抑える上で極めて重要となります。また、定期的な運用レポートやパフォーマンス報告の有無も、継続的な品質管理の観点から評価するとよいでしょう。

最終的には契約前に実際のサポート体制や対応実績を確認し、自社の運用ニーズに合ったサービスレベルであるかを見極めることが、長期的に安定したシステム運用のカギとなります。

サポート体制については、「システム運用アウトソーシング成功の秘訣とは?メリットから選定ポイントまで解説」をご覧ください。

まとめ:データセンター活用で実現する企業ITの最適化

データセンターは、企業のITインフラを支える不可欠な基盤となっています。本記事では、データセンターの基本的な定義から始まり、提供されるサービスの種類、メリット・デメリット、最新動向、選び方のポイントまで幅広く解説しました。データセンターの活用は、単なるコスト削減だけでなく、セキュリティ強化、BCP対策、運用負荷の軽減、スケーラビリティの確保など、多くのビジネス価値をもたらします。企業は自社のニーズや予算、将来の成長計画を考慮しながら、最適なデータセンターとサービスを選択することが求められます。

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