サイバーBCPとは?
企業が今すぐ取り組むべき対策と実践ポイント

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課題解決のためのノウハウ

サイバー攻撃の件数は年々増加しており、企業がランサムウェアや標的型攻撃によって業務停止に追い込まれる事例は後を絶ちません。こうした状況のなか、注目が集まっているのが「サイバーBCP」という概念です。従来のBCPは地震や水害などの自然災害を主な想定リスクとしてきましたが、現在ではサイバー攻撃による事業中断も同等のリスクとして位置づける必要があります。

本記事では、サイバーBCPの概念から策定の実践的なポイント、そして実効性を高めるためのインフラ選択までをお伝えしますので、企業のセキュリティ担当者やBCP推進担当者の方はぜひ参考にしてください。

サイバーBCPとは? 従来のBCPとの違いと必要性

サイバーBCP対策をするには、まずサイバーBCPがどういったものかを知らなければなりません。ここでは、サイバーBCPの概要や重要性に加え、従来のBCPとの違いについて解説します。

サイバーBCPの定義とBCP・IT-BCPとの関係

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、緊急事態が発生しても重要な事業を継続させるための計画です。このBCPのうち、ITシステムの運用維持に特化したものが「IT-BCP(情報システム運用継続計画)」であり、さらにそのなかでサイバー攻撃リスクへの対処に焦点を当てたものが「サイバーBCP」です。

サイバーBCPの特徴は、サイバー攻撃を「完全に防げない前提」で策定することにあります。侵入を試みる攻撃を100%防ぐことは現実的ではなく、被害を受けた場合にいかに早く復旧するかという「レジリエンス(回復力)」の観点が重要です。

IT-BCPについて詳しく知りたい方は「IT-BCPとは?自社のIT資産を守り事業継続を実現するポイントを解説」も併せてご覧ください。また、BCP対策の全体像を把握したい方は「BCP対策とは?事業存続のカギとなるデータ管理の実践手法」も併せてご覧ください。

サイバー攻撃の深刻化と企業が直面するリスクの現状

警察庁の発表によると、2025年上半期のランサムウェアによる被害報告件数は116件に上り、業種を問わず多くの企業が影響を受けています。また、IPAの「情報セキュリティ10大脅威2025」では、ランサムウェアによる被害が10年連続で組織向けの脅威の第1位に選ばれています。

特に深刻なのが医療・製造業・インフラ事業者などへの標的型攻撃です。実際に、病院の電子カルテ停止や工場の生産ライン停止といった事例が相次いでいます。さらに、自社が十分な対策を講じていても、取引先や委託先を経由して被害が波及するサプライチェーン攻撃も深刻化しており、ランサムウェア被害に続き7年連続で2位です。もはや「自社だけ守れば安心」という時代ではありません。

参考:令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
   情報セキュリティ10大脅威2025|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

サイバー攻撃の種類や手口を知りたい方は「サイバー攻撃とは?さまざまなリスクから自社を守るための対策を解説」も併せてご覧ください。また、ランサムウェアへの対処法を確認したい方は「ランサムウェアに感染したらどうする?企業が取るべき緊急対応を徹底解説」も併せてご覧ください。

サイバーBCPに必要な「3つの柱」は予防・検知・復旧

サイバーBCPには、「攻撃を防ぐ(予防)」「侵入を早期に発見する(検知)」「被害から速やかに立ち直る(復旧)」の3つの視点を組み合わせた包括的なアプローチが欠かせません。ここではそれぞれについて具体的な方法を解説します。

予防:侵入リスクを最小化するための技術的・組織的対策

攻撃者が侵入しにくい環境を整えるには、技術面と組織面の両軸から対策を講じる必要があります。以下が代表的な取り組みです。

OSやソフトウェアの定期的なアップデートとパッチ適用

未公開の脆弱性を突くゼロデイ攻撃への曝露期間を短縮するうえで、もっとも基本的かつ効果的な手段です。

多要素認証(MFA)の導入

パスワードのみに依存した認証から脱却し、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。

ファイアウォールやEDR(エンドポイント検出応答)の導入

境界防御に加え、端末レベルでの不審な挙動を検知・隔離する仕組みを整えることで、多層防御を実現します。

従業員へのセキュリティ教育・標的型メール訓練

人的ミスを減らすため、定期的な訓練と教育を通じて組織全体のセキュリティ意識を底上げします。

脆弱性診断による自社システムの定期的な点検

第三者の視点でシステムの弱点を洗い出し、攻撃者に先んじて対処することができます。

経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」では、「セキュリティポリシーの策定」「リスク管理体制の構築」「緊急時対応体制の整備」など経営者がCISO等に指示すべき重要事項を示しています。サイバーセキュリティ対策は経営者がリーダーシップを持って取り組む経営課題です。

参考:サイバーセキュリティ経営ガイドライン|経済産業省

検知:侵入を早期に発見するための監視体制の構築

巧妙化した攻撃は侵入後も潜伏し、気づかないまま重要データの窃取や侵入エリアの拡大が進むことがあります。早期検知には、ログの継続的な監視・分析体制を実現するSOC(セキュリティオペレーションセンター)の整備が欠かせません。

SOCとは、ネットワークやシステムへの不審なアクセスを24時間体制で監視・分析する組織・機能です。自社でSOCを構築するリソースがない場合でも、外部の専門事業者によるマネージドSOCサービスを活用することで、高度な監視体制を実現できます。

早期検知の精度を高めるには、ファイアウォールやUTM機器から収集したログをSIEM(セキュリティ情報・イベント管理)等のツールで一元管理・相関分析し、攻撃パターンに合致する挙動をアラートとして抽出する仕組みが効果的です。また、SOCの運用にはセキュリティ機器の適切な設定と継続的なチューニングが必要であり、検知精度の維持・向上にも専門的な知見が求められます。

復旧:被害発生後の迅速な事業再開に向けた計画の整備

サイバーBCPにおいて特に重要なのが、「被害を受けても事業を止めない・早く再開する」という復旧計画です。ランサムウェアに感染したシステムの復旧には平均数週間を要するとも言われており、その間の事業停止による損失は計り知れません。復旧計画において中核となるのが次の要素です。

RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)の設定

どの業務をいつまでに、どの時点の状態まで復旧させるかを具体的に定めることで、優先順位の明確化と復旧作業の迅速化が可能です。

定期的なバックアップと、バックアップの完全性・復元性のテスト

バックアップを取るだけでなく、実際に復元できるかの定期的な確認が、いざという時の確実な復旧につながります。

インシデント対応手順(playbook)の整備と演習

発生シナリオごとの対応手順を文書化し、定期的な演習によって実効性を担保します。

CSIRT(コンピュータセキュリティインシデント対応チーム)の設置または外部連携

コンピュータセキュリティインシデント対応チームとして、インシデント発生時の司令塔となる機能を確立します。

サイバーBCP策定の実践ステップ

サイバーBCPの策定は適切な順番での実践が重要です。経済産業省・IPAの「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」や内閣府の「事業継続ガイドライン」も参考にしつつ、4ステップについて順を追って解説します。

STEP1:基本方針の決定と対応体制の構築

まず、経営者がサイバーBCPの基本方針を明文化します。「サイバー攻撃を経営リスクとして認識し、組織全体で対処する」という姿勢の表明により、インシデント発生時の指揮系統を明確化することが重要です。CISO(最高情報セキュリティ責任者)の任命や、CSIRTの設置または外部委託を検討しましょう。

STEP2:リスクアセスメント――脅威・脆弱性・影響度の評価

自社が直面する具体的なサイバーリスクを洗い出します。どのような攻撃が想定されるか(ランサムウェア・標的型攻撃・内部不正など)、どのシステムが影響を受けるか、被害発生時の財務的・社会的損失はどの程度かを分析します。BIA(業務影響度分析)と組み合わせれば、優先的に守り、早期に復旧すべき業務の順位の明確化も可能です。

STEP3:対策計画の策定と文書化

リスクアセスメントの結果を踏まえ、「事前対策計画」と「非常時対応計画」を策定します。事前対策計画に盛り込むのは、技術的セキュリティ対策・バックアップ体制・従業員教育などです。そして、非常時対応計画(インシデントレスポンスプラン)には、攻撃発覚後の初動対応・エスカレーション手順・対外発表の方針・復旧手順を具体的に記載します。

STEP4:訓練の実施と継続的な見直し

サイバーBCPは、計画を策定しただけで実効性を確保できません。具体的なシナリオを設定して対策本部の意思決定を模擬体験する「机上演習(テーブルトップエクササイズ)」が、計画の妥当性確認と要員育成に有効となります。

また、サイバー攻撃の手口は常に進化しています。新たな脅威・自社のシステム変更・組織変更などに応じて、計画を定期的に見直し・更新するPDCAサイクルの確立も欠かせません。

参考:サイバーセキュリティ経営ガイドライン|経済産業省
   事業継続ガイドライン|内閣府

サイバーBCPの実効性を高めるクラウド・データセンター活用

サイバーBCPの実効性を高めるには、計画の策定と並行して堅牢なITインフラの整備が重要です。ここでは、クラウドとデータセンターを活用した具体的な手法を解説します。

遠隔地バックアップとDR(ディザスタリカバリ)対策

ランサムウェアに感染した場合、社内ネットワークにつながったバックアップも同時に暗号化されてしまうケースがあります。

これを防ぐために重要なのが、物理的・ネットワーク的に切り離された「オフサイトバックアップ」です。遠隔地のデータセンターやクラウドストレージにバックアップを置くことで、本番環境が攻撃されても安全なコピーからの復旧が可能になります。

さらに、DR(ディザスタリカバリ)サイトの設置で、本番システムが被害を受けてもDRサイトへの切り替えによって業務継続が可能です。

DR対策の実践方法については、「DR対策とは?BCPに欠かせないサーバーやシステム復旧を迅速に行うための方法を解説」も併せてご覧ください。また、BCPとDRの違いを整理したい方は、「BCPとDRの違いとは?緊急時に事業早期復旧を実現させるためのポイントを解説」も併せてご覧ください。

クラウドを活用したセキュリティ強化とゼロトラストの考え方

クラウドサービスの適切な活用は、サイバーBCPにおけるセキュリティ強化にも寄与します。セキュリティ要件を満たしたクラウド環境は、多要素認証・暗号化・アクセス制御・監査ログの記録などが標準的に備わっていることが多く、オンプレミス環境と比較してセキュリティの水準を高めやすいという特徴があります。

また、近年注目される「ゼロトラストセキュリティ」も重要な視点です。「内部ネットワークは安全」という前提を捨て、すべてのアクセスを常に認証・認可する設計は、侵入後の横展開を防ぐ効果があります。

クラウドのBCP活用について知りたい方は、「BCP対策においてクラウド活用が生み出すメリットとは?デメリットを最小化するための注意点も解説」も併せてご覧ください。また、ゼロトラストセキュリティについて詳しく知りたい方は、「ゼロトラストセキュリティとは?デジタル時代のネットワーク防御のすすめ」も併せてご覧ください。

サイバーBCPは経営を守るための「攻めの備え」

サイバー攻撃はもはや「IT部門が対処すべき技術的問題」ではなく、経営を揺るがすリスクです。サイバーBCPの策定には、予防・検知・復旧の3つの視点を組み合わせた包括的なアプローチが求められます。また、リスクアセスメントから訓練・見直しまでのPDCAサイクルを経営者のリーダーシップで推進することも必要です。さらに遠隔地バックアップやDRサイトによる冗長化、クラウド活用によるセキュリティ強化も不可欠な要素となります。

STNetでは、データセンター「Powerico(パワリコ)」とセキュリティ運用監視サービス「NetStare(ネットステア)」および「セキュリティ診断サービス」によりサイバーBCPの実現を多角的に支援しています。

Powericoは、JDCC「ティア4」に準拠した高信頼のデータセンターとして遠隔地バックアップ・DRサイト構築に最適な環境を提供します。一方、「NetStare(ネットステア)」はSOC(セキュリティオペレーションセンター)とNOC(ネットワークオペレーションセンター)を統合したセキュリティ運用監視サービスです。専門エンジニアが24時間365日体制でお客さまのネットワーク・セキュリティ機器の稼働状態や不正アクセスを監視し、インシデント発生時には迅速に攻撃内容を調査のうえ最適な対応策を検討します。

また、「セキュリティ診断サービス」では技術員が遠隔からシステムの脆弱性を診断し、予防フェーズにおけるリスク把握を支援します。

自社のサイバーBCP体制を見直したい方は、ぜひSTNetへご相談ください。

この記事で紹介しているサービス

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

セキュリティ運用監視サービス NetStare (ネットステア)supported by SecuAvail

セキュリティのプロがネットワークシステムを24時間365日監視し、脅威への対応を実施します。

セキュリティ診断サービス

サイバー攻撃に備え、サーバーやWebアプリケーションなどのセキュリティ上の脆弱性を診断して解決策をご提案します。

よくあるご質問

Q. サイバーBCPと通常のBCPはどう違うのですか?

A. 通常のBCPが地震や水害などの自然災害・事故を主な想定リスクとしているのに対し、サイバーBCPはサイバー攻撃(ランサムウェア・不正アクセス・標的型攻撃など)による事業中断リスクへの対処に特化した計画です。近年のビジネス環境では、ITシステムへの依存度が高まる一方、サイバー攻撃による実際の事業停止事例が相次いでいます。自然災害対策のBCPとサイバーBCPは補完関係にあり、両方を整備することで企業の事業継続体制はより堅固になります。なお、ITシステム全体の継続計画を扱う「IT-BCP」のなかに、サイバーBCPが含まれると考えると整理しやすいでしょう。

詳しくは「サイバーBCPとは? 従来のBCPとの違いと必要性」をご覧ください。

Q. 中小企業でもサイバーBCPは必要ですか?

A. はい、企業規模を問わず必要です。むしろ、セキュリティへのリソースが限られがちな中小企業が狙われやすい傾向があります。また、大手企業の取引先として関わる中小企業が攻撃の踏み台となり、サプライチェーン全体に被害が及ぶケースも増えています。現在では、大企業との取引条件としてセキュリティ対策状況の確認を求められるケースも増えており、サイバーBCPへの取り組みは企業価値に直結します。限られた予算のなかでも、まずはリスクアセスメントとバックアップ体制の整備から始めることが現実的です。

詳しくは「サイバー攻撃の深刻化と企業が直面するリスクの現状」をご覧ください。

Q. サイバーBCPの策定はどこから始めれば良いですか?

A. 最初のステップは、経営者が「サイバー攻撃を経営リスクとして認識し対処する」という基本方針を表明し、対応体制(責任者・意思決定フロー)を整備することです。次に、自社が保有するシステムや情報資産を棚卸しし、どのシステムが停止すると事業にどれだけの影響が出るかを分析するリスクアセスメントを行います。その分析結果をもとに、優先度の高い業務・システムを守るための対策計画と、被害発生時の対応手順を策定します。経済産業省・IPAが公開する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」や内閣府の「事業継続ガイドライン」も参考になります。

詳しくは「サイバーBCP策定の実践ステップ」をご覧ください。

Q. ランサムウェアに感染した場合、どのように復旧すれば良いですか?

A. ランサムウェア感染が疑われた場合、まず感染した端末・システムをネットワークから切り離し、被害拡大を防ぐことが最優先です。その後、セキュリティ専門家や外部機関(IPAのサイバーインシデント緊急対応支援制度、JPCERT/CCなど)に連絡・相談することを検討してください。復旧は、事前に用意した「ランサムウェアに汚染されていないクリーンなバックアップ」から行います。オフサイト(社内ネットワーク外の遠隔地)にバックアップを置き、感染前の時点まで遡れる体制を事前に整えることが重要です。身代金の支払いは、データが返ってくる保証がなく推奨されません。

詳しくは「復旧:被害発生後の迅速な事業再開に向けた計画の整備」をご覧ください。

Q. STNetのサービスでサイバーBCPに活用できるものはありますか?

A. STNetでは、サイバーBCPの各フェーズに対応したサービスを有料で提供しています。予防フェーズでは「セキュリティ診断サービス」による脆弱性の把握、検知フェーズでは通信の常時監視によるサイバー攻撃の検知・ブロック、復旧フェーズではデータセンター「Powerico(パワリコ)」を活用したバックアップ・DR環境の構築が可能です。サービスの詳細や料金については、STNetのセキュリティサービスページをご確認いただくか、お気軽にお問い合わせください。