ゼロトラストアーキテクチャとは?企業のためのセキュリティ革新をわかりやすく解説

課題解決のためのノウハウ
セキュリティ対策として注目を集める「ゼロトラストセキュリティ」。従来の境界防御モデルを超えた、新たなアプローチとして多くの企業が導入を検討しています。本記事では、ゼロトラストセキュリティの基本概念から導入のメリット、課題まで詳しく解説します。
ゼロトラストセキュリティは、「信頼せず、常に検証する」を基本原則とする新しいセキュリティモデルです。内部ネットワークも含めすべてのアクセスを潜在的な脅威とみなし、常時認証と承認を要求します。この考え方は、複雑化するサイバー攻撃に対する効果的な防御策として注目されています。
ゼロトラストセキュリティは、内部・外部を問わず、すべてのアクセスを潜在的な脅威とみなします。ユーザー、デバイス、アプリケーションなどすべてに常時認証と承認を要求することで、内部脅威やランサムウェアなど、高度なサイバー攻撃にも効果的に対応できます。このアプローチにより、アクセスの都度、「このユーザーは本当に正当な権限を持っているのか」「このデバイスは安全な状態にあるのか」を検証します。
従来の境界型セキュリティは外部と内部を明確に区別し、内部を信頼する「城壁と堀」モデルでした。一方、ゼロトラストの概念では内外の区別なく、常に認証と承認を要求します。これにより、たとえ社内ネットワークからのアクセスであっても、セキュリティチェックが行われ、不正アクセスのリスクを最小限に抑えることができます。
ビジネス環境のデジタル化に伴い、セキュリティリスクも多様化・複雑化しています。テレワークの普及やクラウドサービスの利用拡大により、従来の「社内」「社外」という概念が曖昧になり、新たなセキュリティアプローチが求められています。特に、テレワークが普及した現在では、従来の境界型セキュリティでは十分な保護が難しくなっているのです。
2024年5月、デジタル庁は記者会見で、自治体における従来の三層分離(フロント層、アプリケーション層、データ層)の考え方から方針を転換し、ゼロトラストの考え方を導入する方針を示しました。この方針転換は、デジタル化が加速する現代のビジネス環境とセキュリティリスクへの対応を見据えたものです。三層分離という従来の枠組みから、より柔軟で強固なゼロトラストの考え方への移行により、セキュリティの確保と業務効率の向上の両立を目指しています。
三層分離について詳しくは、お役立ち資料「三層分離からゼロトラストへ~自治体ネットワークセキュリティの進化~」をダウンロードしてご覧ください。
テレワークの普及により、従来の「社内ネットワーク」の概念が崩れつつあります。また、クラウドサービスの利用拡大に伴い、データやアプリケーションが社外に置かれることが一般的になっています。このような環境では、場所や接続経路に関係なく、すべてのアクセスに対して一貫したセキュリティ対策を講じる必要があります。
テレワークにおけるクラウド活用について詳しくは、「クラウドが支えるテレワーク環境!効果的な導入のポイントとは?」をご覧ください。
ゼロトラストセキュリティは、複数の重要な要素で構成されています。これらの要素が連携することで、エンドポイントからネットワーク、データまでを一貫して守るセキュリティ体制を実現します。
ゼロトラストの考え方の基本原則として、すべてのアクセスに対して常時認証を実施します。ユーザーには必要最小限の権限のみを付与し、不要なアクセスを制限することで、内部不正や誤操作によるリスクを低減します。多要素認証の実装により、不正アクセスのリスクを大幅に減少させることが可能です。
例えば、経理部門のスタッフには会計システムへのアクセス権限を付与しますが、開発環境へのアクセスは制限するといった具合です。
ゼロトラストの考え方では、ネットワーク、アプリケーション、データなど、すべての IT リソースを保護対象とします。これは、どのリソースも潜在的な攻撃対象となり得るという考えに基づいています。すべてのデバイスの健全性を常時監視し、セキュリティ基準を満たしていない機器からのアクセスを制限することで、マルウェアに感染したデバイスからの攻撃を防ぎます。各リソースに対して適切なセキュリティ対策を実施し、包括的な保護を実現します。
ネットワークを論理的に分割し、セグメント間の通信を厳密に制御することで、セキュリティリスクを低減します。特に、マイクロセグメンテーション技術の採用により、アプリケーションやワークロードレベルでのきめ細かな制御が可能です。
例えば、開発環境と本番環境を分離したり、部門ごとにネットワークを分割したりします。また、ネットワーク全体の可視化により、不審な通信パターンや異常を素早く検知し、対応できます。
アプリケーションやサービスの実行環境に対するセキュリティ対策も重要です。コンテナやサーバーレス環境など、クラウドネイティブな環境でも一貫したセキュリティポリシーを適用し、不正な操作や改ざんを防止します。また、アプリケーション間の通信も監視・制御することで、より細かな粒度でのセキュリティ確保が可能になります。
すべてのネットワーク通信を暗号化することで、データの盗聴や改ざんを防ぎます。重要データの暗号化を徹底し、データフローを可視化・分析することで、データ漏洩のリスクを最小化します。また、機械学習を活用した高度な分析により、より正確な脅威の検出が可能になるでしょう。
ゼロトラストセキュリティの導入は、包括的なセキュリティ強化をもたらすとともに、場所や時間を問わず、安全に業務が行える環境の実現にもつながります。ここでは、導入によって得られる主なメリットと、実装時の課題について解説します。
ゼロトラストの考え方により、以下のような強固なセキュリティ体制を構築できます。
従来の境界防御では防ぎきれなかった内部からの攻撃や高度なサイバー攻撃にも効果的な対応が可能です。特に、クラウドサービスの利用が増加する現代のビジネス環境において、その効果は顕著です。
すべてのアクセスを常時検証することで、内部犯行や不正アクセスのリスクを最小限に抑えることができます。多層的な認証プロセスにより、セキュリティレベルは大幅に向上します。
常時監視と認証の仕組みにより、不審なアクティビティをリアルタイムで検知し、即座に対応できます。これにより、インシデント発生時の被害を最小限に抑えられます。
ゼロトラストセキュリティの導入により、インシデント発生時のビジネスへの影響を大幅に低減できます。
早期検知と対応により、セキュリティインシデント発生時の調査・対応コストを抑制できます。また、影響範囲を最小限に抑えることで、復旧にかかる時間とコストも削減可能です。
システム停止時間の最小化や、データ漏洩による損害賠償リスクの低減により、ビジネスへの影響を抑制できます。
セキュリティインシデントによる企業イメージの低下や顧客信頼の喪失といったリスクを最小限に抑えることができます。
セキュリティ強化に加え、以下のような業務面でのメリットも得られます。
場所を問わず安全にリソースにアクセスできる環境により、テレワークの推進や事業継続性の向上が実現できます。これは、働き方改革の推進にも貢献します。
クラウドサービスへのアクセスを適切に管理・制御することで、さまざまなクラウドサービスを安全に活用できる環境が整います。
シームレスな認証プロセスとアクセス制御により、セキュリティを確保しながら、スムーズな業務遂行が可能となります。
ゼロトラストセキュリティ導入を成功させるために、以下の課題への適切な対応が求められます。
課題:既存のシステムやアプリケーションとの互換性確保
対策:段階的な移行計画の策定と、適切なツールの選定による円滑な統合の実現
課題:新しいセキュリティモデルへのユーザーの理解と適応
対策:体系的な教育プログラムの実施と、段階的な導入によるスムーズな移行
課題:初期投資と運用コストの最適化
対策:優先度の高い領域から段階的に導入を進め、投資対効果(ROI)を見極めながらの展開
ゼロトラストセキュリティへの移行は、組織全体に影響する不可欠な取り組みです。成功のためには、適切な計画と段階的なアプローチが不可欠です。ここでは、効果的な導入のための主要ステップを解説します。
まず、組織の現状を正確に把握し、明確な導入計画を策定することが求められます。以下の項目について、詳細な分析と確認を行います。
保護すべき重要なデータ、システム、アプリケーションを特定し、優先順位付けを行います。
現行のセキュリティ対策の有効性をチェックし、改善が必要な領域を明確にします。
組織全体のセキュリティリスクをチェックし、対応の優先度を決定します。
これらの分析結果に基づいて、具体的な導入戦略と目標を設定します。
分析結果をもとに、優先度の高い領域から段階的に実装を進めていきます。実装は以下の順序で進めることが効果的です。
ネットワークを論理的に分割し、セグメント間のアクセス制御を強化します。これにより、セキュリティインシデントの影響範囲を最小限に抑えることができます。
すべてのユーザーに対して多要素認証を実装し、アクセス時の認証を強化します。これは、不正アクセスのリスクを大幅に低減する効果があります。
組織内で使用されるすべてのデバイスを適切に管理し、エンドポイントでの脅威対策を強化します。これには、デバイスの健全性確認や脆弱性対策が含まれます。
業務アプリケーションへのアクセスを細かく制御し、必要最小限の権限のみを付与します。これにより、不要なアクセスを防ぎ、セキュリティリスクを低減できます。
重要データの暗号化と適切なアクセス管理を実施し、機密情報を確実に保護します。
本格的な導入前に、限定された環境でゼロトラストの考え方の有効性を検証します。PoC(Proof of Concept)とは、新しい概念や技術の実現可能性を検証するための試験的な実装のことです。この段階で得られた知見を基に、全社的な展開計画を調整し、リスクを最小限に抑えつつ効果的な導入を図ります。
各実装段階で効果測定を行い、必要に応じて戦略を調整します。また、ユーザーへの十分な教育と支援を提供することで、スムーズな移行を実現します。
ゼロトラストセキュリティは、従来の境界防御モデルの限界を超え、より柔軟で強固なセキュリティ体制を実現します。その導入には課題もありますが、段階的かつ戦略的なアプローチにより、多くの企業が恩恵を受けることができるでしょう。また、単なるセキュリティ対策ではなく、今後のビジネスの俊敏性と競争力を支える基盤となります。クラウド、IoT、AIなどの技術の進化とともに、ゼロトラストの概念もさらに発展していくでしょう。
こうしたゼロトラストセキュリティの実現に向けて、STNetは多層防御による包括的なセキュリティ対策のソリューションを提供しています。データセンター「Powerico(パワリコ)」は、高度なセキュリティ設備を備え、お客さまのシステムを安全に管理する環境を提供します。ST-WANダイレクトコネクトにより、Powericoのハウジングサービスと各種クラウドサービスを組み合わせたハイブリッド環境の構築が可能です。さらに、最大1Gbpsの高品質なインターネット接続サービスSTIAサービスにより、大容量データの安定した転送を実現します。
また、セキュリティ運用監視サービス「NetStare (ネットステア)」により、24時間365日のネットワーク監視と不正アクセスの早期発見が可能です。セキュリティ診断サービスでは、ネットワークやシステムの脆弱性チェックを行い、お客さまの環境に応じた改善提案を行います。STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]では、クラウドリソースの効率的な管理と運用コストの最適化を支援いたします。
これらのソリューションは、専門的な設備管理や保守の外部委託による運用コスト削減も実現し、クラウドリソースの柔軟な調整により、効率的な資産管理を可能にします。STNetは、お客さまのゼロトラストセキュリティ導入を包括的にサポートし、より安全で効率的なデジタルビジネス基盤の構築を支援します。ご興味のある企業のご担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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