BCPとDRの違いとは?
緊急時に事業の早期復旧を実現させるためのポイントを解説

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課題解決のためのノウハウ

自然災害はもちろん、火災やウイルス攻撃などによる被害に遭った際、速やかに事業を復旧・継続させるための計画であるBCP。企業の損失を最小限に抑え迅速に復旧させるためには欠かせない施策と言えます。そして、事業復旧に欠かせないもうひとつの施策がDRです。

今回は、BCPとDRの違いやそれぞれを実現させるためのポイント、具体的な策定手順のほか、データセンターを利用した事例も紹介します。情報システムやIT企画部門で緊急時の対策を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

BCPとDRの基本的な違い

BCPもDRも基本的には緊急時の復旧対策を指すものですが、大きな違いがあります。それは、それぞれの目的です。

BCPとは

BCPとは、Business Continuity Planの略称で、日本語で「事業継続計画」と訳されます。BCPの主な目的は、緊急時に事業を速やかに復旧・継続させることです。

DRとは

DRとは、Disaster Recoveryの略称で、日本語で「災害復旧」と訳されます。DRの主な目的は、災害からの速やかな復旧、特にシステムを復旧させることです。

つまり、BCPは緊急時に事業を速やかに復旧・継続させるのが目的ですが、DRは災害からの速やかな復旧を目的としています。さらに、DRが復旧の対象としているのは事業全体ではなく、システムであることが一般的です。そうした意味では、DRはBCPの一部であり、BCPの中にDRが含まれていると考えればそれぞれの違いが明確になるでしょう。

BCPの定義や目的についてより詳しくは、「BCP対策とは?その目的や策定方法、注意点などを解説」をご覧ください。

BCP・DRを実現するポイント

2023年6月に帝国データバンクが発表した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)」によると、企業のBCP策定率は18.4%と決して高い数字とは言えません。そして、BCPを策定していない理由として最も多いのは、「策定に必要なスキル・ノウハウがない(42.0%)」です。そこで、ここではBCP・DRを実現させるために知っておくべきポイントについて解説します。

参照:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)|帝国データバンク

BCP・DRの重要性の把握

上記調査では、BCPの「必要性を感じない(20.9%)」といった回答が一定数いることがわかります。そのため、BCP・DRを実現させるには、まずBCP・DRが重要であることを把握することが必要です。BCP・DRの実現が欠かせない理由としては、次のようなものがあります。

事業の早期復旧・継続が可能になる

BCP・DRを実現できれば、事業が停止してしまう時間を最小限に抑えられるため、事業の早期復旧・継続が可能になり、自社が受ける損失も抑えられます。

取引先や消費者離れの防止につながる

BCP・DRが不十分で業務停止期間が長期化すれば、取引先や消費者は競合他社へ流れてしまう可能性が高まります。そのため、復旧できたとしてもそれ以前のような利益を上げられるようになるまでには相当な期間が必要になり、場合によっては復旧前に戻れずに損失だけが残るといったリスクも考えられるでしょう。

RTO、RPOの理解

DRを実現させる対策を実施する際にはRTO、RPOについての理解が欠かせません。まずはそれぞれの概要、これらの設定を行うことのポイントについて解説します。

RTOとは

RTOとは、Recovery Time Objectiveの略称で、「目標復旧時間」を意味するものです。トラブル発生から復旧までにどれだけの時間を要するのかを見るもので、秒単位から日数単位で設定します。当然、短ければ短いほど損害も小さく抑えられますが、その分手間やコストがかかり、担当者の負担も大きいものとなってしまうでしょう。技術的な問題と同時に、取引先や顧客にどれだけの影響を及ぼすかも総合的に検討して判断することが求められます。

RPOとは

RPOとは、Recovery Point Objectiveの略称で、「システムを復旧するためにさかのぼる目標復旧地点」を意味するものです。システムを復旧させる際、どのポイントまでの復旧を行うのか、その地点を設定します。復旧ポイントの設定は更新頻度により、頻度が高ければできるだけ直近で、頻度が低ければ数日前までさかのぼって行うのが一般的です。ただ、直近に復旧ポイントを設定する場合はバックアップを頻繁にとる必要があるため、手間やコストとのバランスを考えながら決める必要があります。

リスク評価

BCP・DRを実現させるうえで、どのような対策が必要かを知るには、まず自社にどのようなリスクがあるのかの把握が欠かせません。そこで、災害やウイルス攻撃などで緊急事態に陥った際にどのようなリスクが起こり得るかを洗い出しましょう。

具体的には、人、ライフライン、資産、情報、ステークホルダーなどの面からそれぞれリスクを洗い出し、評価を行います。

企業が採用すべきBCP・DRの具体的な策定手順

実際にBCP・DRを進めていくうえで、企業が採用すべき具体的な策定手順について解説します。

担当部門・担当者の招集

BCP・DRを実施するための部門やチームを作り、各部署から担当者を招集します。BCP・DRの実施は通常業務の片手間に行うのは困難なため、専門のチームづくりが欠かせません。また、部署により抱える課題は異なるので、あらゆる情報を収集・精査するには各部署から担当者を招集するのがよいでしょう。

リスク評価に対する対策の策定

それぞれの部署でのリスク評価を行い、そこで可視化されたリスクに対してどのような対策が必要になるかを検討します。

業種別の具体的な対策について詳しくは、「業種別BCP対策の事例に見るBCP対策の重要性。自治体独自の支援事例も紹介」をご覧ください。

外部サービス活用の検討

DRの一環として、システムのプラン見直しを行います。また、状況に応じてオンプレミスからクラウドサービスやデータセンターなどの外部サービス活用を検討することで、BCPを推進することも重要です。

BCP・DRを実現させるためのデータセンター活用について詳しくは、「データセンターとは?5つのメリットと失敗しない選び方を徹底解説」「BCPとは?企業の災害対策に重要なデータセンター選び」をご覧ください。

また、システムバックアップの重要性について詳しくは、「システムバックアップとは?その重要性とスムーズに進めるための方法を解説」をご覧ください。

BCP・DR策定書の作成

特定の部署だけが対策を理解していても、いざという際には対応が困難です。そのため、決定した対策をまとめ、BCP・DR対応マニュアルとして誰もが閲覧できるように共有します。また、「絵にかいた餅」にならないよう、BCPに沿った障害・災害対策訓練を定期的に実施し、情報収集やトリアージ、対応などのエスカレーションフローを確立することが重要です。

Powericoを利用したBCP・DRの事例紹介

STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」を活用したBCP・DRの事例を紹介します。Powericoは、国内でも自然災害リスクの少ない香川県高松市にあるデータセンターです。また、建物自体も地震の揺れを軽減する基礎免震構造、安定した電源供給力などを有しており、万が一の際にも大切なデータを守ります。

今回、事例で紹介するのは、愛媛県に本社を構えるコットンのグローバルカンパニー、丸三産業株式会社です。同社は2018年7月に起きた西日本豪雨の際、社屋が床上浸水の被害を受け、生産管理システムやネットワークが使用不可になったことから、BCP強化を目的にメインサーバーをPowericoへ移設しました。

当初はBCP強化が目的であったものの、Powericoの活用でサーバーの管理・運用業務のスリム化が実現し、空いた時間でDXへの注力も可能になりました。

上記事例については、こちらのダウンロード資料で詳しくご紹介しています。

BCP・DRの実現にはデータセンターとクラウドサーバーの活用がポイント

BCPとは「事業継続計画」であり、DRとは「災害復旧」を意味します。BCPが緊急時に事業を速やかに復旧・継続させることを目的とするのに対し、DRは主に災害からの速やかなシステムの復旧が目的です。あらゆる事業でシステム活用が進み、データの重要性が増している現在、BCPを実現させるにはDRの実現が欠かせないと言えるでしょう。

DRを実現させるためのポイントとして、RTO、RPOの理解も重要ですが、同時にデータセンターやクラウドサーバーの活用も欠かせません。データの冗長性を高めることで、一部のシステムに障害が発生しても他の部分からデータを復旧することができます。RPOを大幅に短縮することが可能となり、RTOの短縮にもつながります。そこでおすすめしたいのが、STNetのデータセンター「Powerico」です。

自然災害が少なく津波の影響も受けにくい地域に立地し、建物自体も日本データセンター協会(JDCC)が定める評価基準「データセンターファシリティスタンダード」の最高水準「ティア4」に準拠しています。

また、充実したサポート体制でDR実現に大きな効果を発揮するクラウドサーバー「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」を併用すれば、さらなる効果も期待できます。従量課金ではなく定額制のため、予算も立てやすく、BCP・DRコスト低減も可能です。BCP・DRを検討されている際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事で紹介しているサービス

STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]

一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えたIaaS型の国産クラウドサービスです。

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。