ファイルサーバーのデータセンターアウトソーシングで実現する、
事業継続性と効率化

FOR BUSINESS

課題解決のためのノウハウ

地震や気候変動による水害など、自然災害のリスクが年々高まっています。オフィスで運用しているファイルサーバーが被災した場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。本記事では、データセンターへのアウトソーシングによる解決策として、小規模な環境からでも導入可能な1/8ハウジングラック(4Uスペース)に焦点を当て、移行検討のポイントをご紹介します。ファイルサーバーの運用見直しをご検討の皆さまは、ぜひ参考にしてください。

災害に脆弱なオフィス設置型ファイルサーバーの課題

近年多発する自然災害により、オフィス内に設置されたファイルサーバーの脆弱性が、企業の事業継続における重大なリスクとして認識されています。事業継続性を脅かす自然災害のリスクについて、具体的な対策を解説していきます。

増加する自然災害のリスク

近年の気候変動により、水害の発生頻度が上昇傾向にあり、自社設備内に設置されたファイルサーバーは常に物理的な被災リスクにさらされています。特に地下や1階に設置されたサーバールームは、水害による浸水の危険性が高く、被災時にはハードウェアの損壊だけでなく、データの完全消失につながる可能性があります。また、地震による損傷リスクも深刻な課題です。耐震設計されていない一般的なオフィスビルでは、地震の揺れによるサーバーラックの転倒や機器の損傷が懸念されます。

バックアップデータの保管場所が同一建物内である場合、災害時にはデータ復旧が困難になる可能性が高くなります。遠隔地へのバックアップを実施していない企業では、事業継続に致命的な影響を及ぼすことになりかねません。

停電時の対策に関して詳しくは、「停電対策に不安な中小企業向け データセンター活用ガイド」をご覧ください。

オフィス設置の弱点

一般的なオフィスビルの電源設備や空調設備は、24時間365日の安定稼働を前提として設計されていません。計画停電や空調設備の不具合による機器の停止は、業務の中断につながります。特に夜間や休日の設備トラブルへの対応は困難を伴うことが予想されます。

UPS(無停電電源装置)を設置していても、バッテリー容量や寿命の管理が適切に行われていないケースも少なくありません。また、サーバーの発熱に対する冷却能力の不足や、夜間・休日の空調停止による温度上昇は、機器の故障率を高める要因となっています。

バックアップ体制の限界

社内でのバックアップ運用では、運用担当者の負担が大きく、作業の属人化や作業品質にばらつきが生じやすい傾向があります。特に小規模な企業では、専任の担当者を置くことが難しく、日々の業務の合間での対応を余儀なくされています。

データ量の増加に伴い、バックアップ時間の延長やストレージコストの上昇といった課題も顕在化しています。さらに、リストア作業の検証が十分に行われていないケースも多く、実際の障害時にデータが正しく復旧できない可能性も懸念されます。

運用担当者の負担や関連する課題に関して詳しくは、「ひとり情シスのためのデータセンター活用~ITインフラの課題と解決ポイント」をご覧ください。

サイバー攻撃のリスク

オフィス内に設置されたファイルサーバーは、外部からのサイバー攻撃のリスクも高まります。特に中小企業では、最新のセキュリティ対策の導入や運用が困難で、新たな脅威への対応が遅れがちです。

近年増加しているランサムウェア攻撃では、ファイルサーバー上のデータが暗号化され、バックアップデータまでもが被害を受けるケースも報告されています。また、標的型攻撃による機密情報の流出リスクも高まっており、業務停止による損失に加え、取引先や顧客からの信用低下にもつながる可能性があります。

セキュリティログの収集・分析や脆弱性診断など、高度な専門知識を要する対策も必要となっていますが、24時間の監視体制を整備できない企業では、不正アクセスの検知が遅れ、被害が拡大するケースも少なくありません。

メンテナンスコスト

ファイルサーバーの維持管理には、予想以上の費用と工数が必要です。ハードウェアについては、定期的な部品交換や保守期限切れに伴う機器更新の費用が発生し、特に耐用年数を超過した機器では、部品調達の困難さやコスト高騰に直面するケースが増えています。

運用面では、日常的な稼働監視や性能管理などの定常作業に加え、障害発生時の緊急対応体制の確保も必要です。また、運用手順の文書化や担当者の育成など、属人化を防ぐための取り組みも欠かせません。さらに、法令やガイドラインへの準拠対応など、企業の規模を問わず求められる管理業務も増加しており、自社での運用維持コストは年々増加傾向になってきています。

NASサーバー1台から始められるデータセンターアウトソーシングの価値

中小企業にとって、データセンターへのアウトソーシングは高コストというイメージがありますが、近年では1/8ラックという小規模なメニューを提供するデータセンターも登場しています。この1/8ラックは、一般的なファイルサーバーの形態であるNASサーバーを設置するのに十分なスペースを確保できるため、安価で簡単、かつセキュアな運用を実現できます。

1/8ラックで実現する安全性

データセンターは、耐震設計や免震構造による揺れ対策、無停電電源装置による電力供給の安定化など、自社設備内では実現が難しい高度な安全対策を標準で備えているのが特徴です。1/8ラックの小規模利用であっても、フルラックと同等の安全性と信頼性を確保できます。さらに、生体認証による入退室管理、監視カメラによる24時間365日の監視体制など、物理的なセキュリティ対策も万全です。

段階的な移行を可能にする柔軟性

1/8ラックから利用開始することで、必要最小限の規模からスタートできます。将来的な拡張が必要な場合は、一般的に物理的に異なるラックへの移行を伴いますが、計画的な移行により、システムへの影響を最小限に抑えることができるでしょう。また、業務の繁忙期を避けて段階的に移行することで、ユーザーへの影響を抑えながら、安全な移行を実現できます。移行の際は、データセンター事業者のエンジニアによるサポートも受けられるため、スムーズな移行が可能です。

コスト効率の高い運用形態

必要最小限の利用から始められるため、初期投資を最適化できます。パブリッククラウドと比較しても、長期利用におけるTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)の低減が期待でき、IT機器の集約による運用効率の向上も見込めるでしょう。

以下に、一般的なデータセンターの1/8ラックと一般的なパブリッククラウド(Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform等の主要クラウドサービス)の利用事例をもとに、コスト構造を比較してみましょう。

コスト要素 一般的なデータセンター 1/8ラック 一般的なパブリッククラウド
初期コスト 設備投資
  • 既存機器の移設が一般的
    ※新規調達の場合
     ‐ サーバー機器購入費
     ‐ ネットワーク機器購入費
  • 原則不要
初期設定
  • 搬入設置費
  • ネットワーク工事費
  • 初期設定作業費
  • 環境構築費
    (ネットワーク工事が必要な場合あり)
  • 初期設定作業費
ランニングコスト 基本使用料
  • ラック利用料(電気使用量含む)
  • 回線使用料(固定)
  • インスタンス料金(従量)
  • ストレージ料金(従量)
  • ネットワーク料金(固定または従量)
運用管理
  • 保守費(定額)
  • 運用監視費(定額)
  • AWSマネジメントコンソール等の管理ツール利用料
  • CloudWatch等の監視サービス利用料
その他
  • 機器更新費
  • ライセンス費
  • APIコール料金
  • 付加機能利用料
特徴 コスト予測
  • 月額費用が予測しやすい
  • 設備コストの平準化が可能
  • 利用量に応じた料金
  • スケールに応じたコスト検討が必要
拡張性
  • 物理的な制約あり
  • 計画的な拡張が必要
  • 柔軟な拡張が可能
  • 即時のスケーリングが可能

このコスト構造の比較から分かるように、データセンターの1/8ラックは既存機器を活用することで初期投資を抑えることができ、かつ利用料が固定的で予測しやすいという特徴があります。これにより、TCOの管理がしやすく、特に安定した運用が求められるファイルサーバーのような基幹システムでは、コストの予測可能性と安定性の面でメリットが大きいと考えられます。

TCOについて詳しくは、「クラウド時代のTCO戦略とは?IT投資を最適化する総所有コストの理解と管理」をご覧ください。

データセンターアウトソーシングで実現する3つの価値

システムの可用性を向上させながら、運用負担を軽減し、コストを抑えられる具体的な方法について説明します。

災害対策の抜本的強化

データセンターへのアウトソーシングにより、事業継続に必要な体制を確実に構築することができます。冗長化された通信回線により、災害発生時も遠隔地からのリモートアクセスによる業務継続が可能です。また、日常的な運用においても、システム監視や障害対応の体制が整備されており、予期せぬトラブルにも迅速な対応が可能です。さらに、災害時のバックアップデータへのアクセスや復旧作業も、データセンターの専門技術員のサポートを受けられるでしょう。

データセンターの免震構造について詳しくは、「免震構造とは?自社のデータを守る免震構造が講じられたデータセンター選択のポイントを解説」をご覧ください。

運用コストの抑制

データセンターの活用により、電力使用の効率化、設備維持費の削減、運用管理の効率化など、さまざまな面でコストの抑制が可能です。特に、データセンターの統合監視システムによる稼働状況の自動チェックや、定型化された運用手順の導入により、これまで手作業で行っていた日々の確認作業や障害対応にかかる人員の負担を軽減できます。また、スケールメリットを活かした電力供給や空調管理により、個別運用と比べてランニングコストの削減も実現できるでしょう。

運用負荷軽減の効果

データセンター事業者による24時間365日の運用監視により、夜間・休日の障害対応や定期的なメンテナンス作業の負担を軽減できます。標準化された運用手順により、属人化の解消と運用品質の向上が期待できるでしょう。情報システム部門は、より戦略的な業務に注力できる環境が整います。具体的には、日常的なシステム監視やバックアップ確認、障害一次対応などの定型作業から解放され、新規システムの企画・導入や、既存システムの改善提案など、本来注力すべき業務に時間を割くことが可能となるでしょう。

システム運用アウトソーシングについて詳しくは、「システム運用アウトソーシング成功の秘訣とは?メリットから選定ポイントまで解説」をご覧ください。

ファイルサーバーの移行プロジェクト成功のポイント

既存のファイルサーバーをデータセンターへ移行する場合、多くのケースでは現在使用中の機器をそのまま活用できるため、新規の機器購入費用や回線費用を抑えることが可能です。以下では、効率的な移行を実現するためのポイントを解説していきます。

1/8ラックへの移行準備

移行対象となるファイルサーバーの容量や性能要件を適切に見積もることが大切です。現行システムの利用状況を分析し、データ量の増加予測も考慮しながら、必要十分な構成を検討していきます。将来的な拡張性も視野に入れた計画立案が求められるでしょう。

なお、移行の準備段階で必要となる主な作業は以下の通りです。

1.現行環境の確認

  • 既存機器の仕様確認と移行後の利用可否判断
  • 運用状況の分析とボトルネックの特定
  • 将来的な容量要件の見積もり

2.ネットワーク環境の確認

  • データセンターとの接続に必要な回線構成の検討
  • 既存ネットワーク機器の活用可能性の確認
  • ユーザーアクセスへの影響分析

3.セキュリティ要件の整理

  • アクセス権限の設定方針の確認
  • データの暗号化要件の確認
  • 監査ログの要件定義

段階的なデータ移行計画

既存システムを活かしながら、部門ごとや業務システムごとなど、適切な単位でのデータ移行を計画します。優先度の高いデータから順次移行することで、ユーザーへの影響を最小限に抑えながら、確実な移行を実現できるでしょう。各部門の業務サイクルを考慮した移行スケジュールの策定も大切なポイントとなります。特に、データ移行時の整合性確保や、アクセス権限の設定移行、共有フォルダのパス変更など、細かな作業項目を漏れなく計画に組み込むことがスムーズな移行につながります。

効率的な移行の実現

移行作業の工数を適切に見積もり、計画的な移行スケジュールを立案することが必要です。データ移行時のネットワーク帯域確保や、業務への影響を考慮した作業時間の設定など、細やかな配慮が必要になるでしょう。

既存機器を活用した移行を前提とした場合でも、以下のポイントに注意が必要です。

1.事前検証の実施

  • 小規模なデータでのテスト移行
  • ネットワーク環境の接続確認
  • バックアップ・リストアの動作確認

2.移行スケジュールの最適化

  • 業務影響を考慮した作業時間の設定
  • データ量と必要な移行時間の見積もり
  • 部門ごとの移行優先順位の決定

3.リスク対策の準備

  • 切り戻し手順の確立
  • 緊急時の連絡体制の整備
  • 移行後の動作確認項目の明確化

データセンターアウトソーシングベンダーの選定基準

信頼性の高いデータセンター事業者を選定するための確認項目について詳しく解説します。

データセンターの設備仕様

免震・耐震構造や電源設備などの基本インフラに加え、空調設備や消火設備などの運用環境も重要なチェックポイントになります。入退室管理や監視カメラなど、物理的なセキュリティ対策の充実度も確認が必要でしょう。特に電源設備については、受電系統の冗長化や非常用発電機の燃料備蓄量、UPSのバックアップ時間など、詳細な仕様の確認が重要です。また、空調設備については、N+1以上の冗長構成や温湿度管理の精度、気流制御の方式なども、安定運用のために必要な確認項目となります。

ラックスペースの利用プラン

データセンター選定時は、提供されているラックスペースの仕様と利用条件を詳細に確認しなければなりません。1/8ラックなどの小規模なプランを提供しているデータセンターもありますが、提供事業者や条件は様々です。

電源容量や最大積載重量などの制限事項を把握し、長期的な運用を見据えた選定を行うことが望ましいでしょう。また、ラック内の電源コンセント数やネットワークポートの提供数、リモート保守用の管理ポート提供の有無なども運用上の大切な確認ポイントとなります。

ファイルサーバーのデータセンターアウトソーシング実現へ

自然災害のリスクが高まるなか、オフィス設置型のファイルサーバー運用にはさまざまな課題があります。データセンターへのアウトソーシングは、既存機器の活用も含め、安全性と運用効率の向上を実現できる選択肢として注目されています。災害対策の強化、運用コストの最適化、運用負荷の軽減という3つの価値を同時に実現できる有効な解決策といえるでしょう。移行にあたっては、段階的なアプローチと適切なベンダー選定が成功のカギとなります。

STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」は、コンパクトハウジングサービスとして、1/8ラックに加えて1/4ラックもご用意しており、お客さまの利用シーンに応じた最適なプランをご提案いたします。過去100年間で震度6以上の地震が発生していない地理的優位性を持つ、災害に強いデータセンターで、24時間365日の専門技術員による監視体制のもと、高品質なサービスを提供しています。免震構造や自家発電設備などの充実した設備環境で、お客さまの大切なデータを守ります。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事で紹介しているサービス

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。