生成AIの電力問題とは?深刻化する電力需要と企業が取り組むべき解決策
課題解決のためのノウハウ
昨今の世界的なエネルギー価格の高騰により、企業のITインフラ運用における電気料金の負担は無視できないレベルに達しています。特に、24時間365日稼働し続けるサーバーやネットワーク機器の電力消費は、経費削減を目指す情報システム部門にとって深刻な課題です。
自社運用の場合、単にサーバー機器そのものの電気代だけでなく、それらを冷却するための空調設備や電源設備など、見えにくい「付帯電力」がコストを大きく押し上げているケースが少なくありません。現状のコスト構造を正しく把握し、適切な対策を講じなければ、利益を圧迫し続ける要因となってしまうでしょう。
本記事では、サーバー運用にかかる消費電力の計算方法、オンプレミス運用における熱対策の限界、データセンターやクラウドを活用したコスト最適化手法についてお伝えします。
自社でサーバー運用する際のコストを適切に把握するには、サーバー運用にかかる電気代の正確な見積もりが必須です。ここでは、サーバー1台あたりの消費電力と電気代の計算式に加え、サーバーの付帯電力や稼働率、スペックによる電力消費の変動要因を解説します。
サーバーの電気代は、基本的に「消費電力(kW)×稼働時間(h)×電気料金単価(円/kWh)」で算出されます。たとえば、消費電力300W(0.3kW)のサーバーを24時間365日稼働させた場合、年間で約2,628kWhの電力を消費する計算です。
電気料金単価を1kWhあたり30円と仮定すると、この1台のサーバーだけで年間約78,840円の電気代が発生します。さらに企業で複数台のサーバーを運用している場合、電力コストもそれに比例して増大していきます。
ここで重要になるのが、現状のコスト構造を「見える化」することです。PDU(電源タップ)などの計測機器を活用して実際の消費電力を把握し、無駄な稼働がないかを確認することが、電力コスト削減への第一歩となります。
サーバー運用にかかる電力は、IT機器そのものだけではありません。サーバーを安定稼働させるために不可欠な空調(冷却)やUPS(無停電電源装置)などが消費する「付帯電力」も大きな割合を占めます。これらを評価する指標が、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った「PUE(電力使用効率)」です。
一般的なオフィス環境でのサーバー運用では、PUEが2.0程度を超えるケースも多く見られ、サーバーが消費する電力と同等かそれ以上のエネルギーが冷却などに使われている可能性があります。たとえば、PUEが2.0の環境で100万円分のIT機器を稼働させる場合、空調や電源設備などで追加の100万円、合計200万円の電力コストが発生する計算です。そのため、サーバー単体の省エネ性能だけでなく、ファシリティ全体を含めたコスト構造を理解する必要があります。
サーバー本体や付帯電力以外で消費電力に大きく影響するのがハードウェアの世代や運用方法です。サーバーの電力効率(ワットパフォーマンス)は年々向上しており、古いサーバーを使い続けること自体が電力の浪費につながる可能性があります。そのため、最新サーバーへのリプレースや、仮想化技術を用いて物理サーバーの台数を集約することは、大幅な電力削減に有効です。
また、サーバーのCPU使用率(稼働率)と電力消費の関係も見逃せません。サーバーは低負荷時でも一定の電力を消費し続けるため、稼働率の低いサーバーの放置は非効率です。リソースを統合し、無駄な待機電力を減らすことがコスト削減につながります。
オフィスのサーバー室で電力を効率化しようとした際に直面する主な課題、「熱溜まりリスク」と「冷えない」ことによる無駄な電力使用について解説します。
近年のサーバー機器は高性能化に伴い高密度化が進んでおり、サーバールームにおけるラックあたりの発熱量も増大しています。
一般的なオフィスビルの空調設備は人間用であり、高密度サーバーの熱を処理しきれないケースがほとんどです。そのため、冷却が追いつかないとラック周辺に熱がこもる「ホットスポット(熱溜まり)」が発生します。
吸気温度が上がると、サーバーは機器を守るために内蔵ファンを高速回転させるため、さらに消費電力が増えるという悪循環に陥ってしまうでしょう。最悪の場合、熱暴走による故障や、CPUの処理能力を意図的に下げるクロックダウンが発生し、業務に支障をきたすリスクがあります。
データセンターでは、ラックの前面(コールドアイル)から冷気を吸い込み、背面(ホットアイル)から熱気を排出する配置が広く採用されています。しかし、一般的なオフィス環境では機器の配置やケーブルの取り回しなどが優先され、冷却効率は二の次になりがちです。
サーバールームについて詳しくは「サーバールームとは?構築のポイントや運用時の注意点を解説」をご覧ください。
効率的な冷却には、冷気と暖気を物理的に分けるエアフロー管理が欠かせません。しかし、自社運用の環境ではその徹底が困難です。適切な空気の流れを作れない環境では、冷気がサーバーの吸気口に届かず、冷却効率が著しく低下してしまうでしょう。
その結果、担当者は「冷えない」サーバーを冷やすため、部屋全体の空調設定温度を極端に下げるなどの対応を迫られます。しかし、特定の場所を冷やすために空間全体を過冷却すれば、空調機の消費電力を無駄に浪費する原因ともなりかねません。そうした意味で、自社運用は構造的にPUEの改善が難しく、電気代も高止まりしやすくなります。
現在、電気代高騰の負担増加は多くの企業で喫緊の課題です。電力コストを少しでも低減するためには、サーバーの消費電力を減らす施策を早急に実施しなければなりません。次章ではサーバーの消費電力低減につながる具体策について解説します。
サーバーの消費電力について詳しくは「GPUサーバー消費電力問題解決のための冷却システムとデータセンター選定ポイント」をご覧ください。
こうした課題を解消する有効な方法のひとつがサーバーの外部運用です。ここでは、外部運用により電力コストを全体最適化できる理由を解説します。
自社のサーバーをデータセンターに預ける「ハウジング」は、電力コスト削減に有効です。データセンターは大口の受電契約を結んでいるため、電力コストを抑制しやすくなるメリットがあります。
さらに、データセンターはサーバー冷却に特化した設計になっており、外気冷房の活用や徹底したエアフロー管理により、低いPUEで運用できる可能性も高まります。自社で非効率な空調を回し続けるよりも、こうした高効率な共有インフラを利用するほうが、トータルの消費電力量を抑制できるでしょう。
特に消費電力の大きい機器を多数運用している企業ほど、スケールメリットによる恩恵を受けやすくなります。
資源エネルギー庁では、2030年までに国内サーバー事業者の上位15%でPUE 1.4以下達成を目標に掲げています。つまり、目標を達成しているデータセンターを選択すれば、オフィス環境のPUE 2.0以上と比較し、同じIT機器を稼働させる場合でも電力コストを3割以上削減できる計算になります。
データセンターについて詳しくは「データセンターとは?基礎知識からクラウドとの比較、導入メリットまで徹底解説」をご覧ください。
物理サーバーからクラウドサービス(IaaS)へ移行すれば、ハードウェアの維持管理や電気代、空調費などのコストはすべて利用料金に含まれ、固定費を変動費化できます。
必要なときに必要な分だけリソースを利用する従量課金制を活用すれば、開発環境や一時的なプロジェクトなど、24時間稼働が不要なシステムの無駄な電気代をカット可能です。
また、物理的な資産を持たないため、数年ごとのハードウェアリプレースや廃棄に伴うコストからも解放されます。電気代の変動リスクを自社で負わなくて済む点も、経営上の大きなメリットです。
サーバーのクラウド化について詳しくは「社内サーバーのクラウド化はするべき?メリットと課題・対策を徹底解説」をご覧ください。
STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」と「STクラウドサーバーサービス[FLEXタイプ]」の活用により、電力量削減とコスト安定の両立が可能です。ここでは、それぞれの具体的な強みについて解説します。
「Powerico」は、1ラックあたり最大定格21kVAの電源供給力を備えており、多くの高発熱・高密度なサーバー運用にも対応しています。一般的なオフィスビルのラックあたりの電力供給能力が数kVA程度であることを考えると、高性能サーバーの集約運用において大きなアドバンテージとなります。
また、最新の空調システムや外気冷房を組み合わせることで、都市型データセンターと比較しても優れたエネルギー効率(低PUE)を実現しています。その結果、使い方にもよるものの、Powericoの活用により、省エネでコスト効率の良いインフラを構築できる可能性も高まるでしょう。
クラウドサービスには従量課金制と定額制があり、用途に応じた選択が重要です。開発環境や一時的なプロジェクトなど、稼働時間が変動するワークロードには従量課金制が適していますが、本番環境のように24時間365日稼働するシステムでは、予算管理の観点から定額制のメリットが大きくなります。
「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」は定額制を採用しており、電気料金の高騰や為替変動の影響を直接受けるリスクが大きく低減され、毎月のインフラコスト平準化が可能です。STNetのデータセンターPowericoとのハイブリッド構成も可能なため、既存の物理サーバーを残しながら段階的なクラウド移行が行えます。コストの予測可能性を重視し、長期的に安定した運用を求める企業にとって最適な選択肢となるでしょう。
Powericoは、単純に電力消費を抑えるだけでなく、再生可能エネルギー100%とする電気料金メニューの提供により、脱炭素経営にも大きく貢献します。具体的には次のとおりです。
今、企業に求められているものの1つが、コスト削減だけでなくカーボンニュートラルへの取り組みです。サーバーやデータセンターは電力を大量に消費するため、その電源を再生可能エネルギーに切り替えることは、CO2排出量削減に大きなインパクトを与えるでしょう。
上場企業やサプライチェーンの一員として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応や、温室効果ガス排出量の算定・報告が求められる企業が増えています。データセンターやサーバー運用に伴う電力消費は、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量の国際的な算定・報告基準)におけるScope2(間接排出)として報告対象となるため、再エネ電力への切り替えは報告数値の改善に直結する重要な指標の1つです。
Powericoでは、使用する電力を実質的に再生可能エネルギー100%とする電気料金メニューを提供しています。これにより、利用企業はサーバー運用に伴うCO2排出量の削減に貢献でき、自社で設備投資を行うことなく脱炭素経営を推進できます。環境価値への投資は、企業ブランドの向上やESG投資の呼び込みにもつながるため、コストと環境対応を両立する手段として有効です。
企業の脱炭素化への取り組みについて詳しくは「持続可能な社会実現のために―再生可能エネルギー導入で企業ができる取り組みとは?」をご覧ください。
サーバーの消費電力対策は、単なる設定変更だけでは限界があります。まずは現状の消費電力とPUEといった効率指標を正しく把握し、自社運用における無駄を可視化することが重要です。
そのうえでおすすめなのが、高効率なデータセンター「Powerico」へのハウジングや、コスト変動の少ない「STクラウドFLEX」への移行です。電気代削減だけでなく、運用負荷の軽減や災害対策、さらには脱炭素化への貢献など、経営課題を包括的に解決する手段となります。電力効率を最大化し、持続可能なITインフラを構築するために、ぜひSTNetへご相談ください。
Q. オンプレミスでのサーバー運用はなぜ電気代が高くなりやすいのか
A. 一般的なオフィスビルは、サーバー冷却に特化した設計になっていないためです。サーバーの排熱を効率よく処理できず、空調を過剰に稼働させる必要があり、結果として「PUE(電力使用効率)」が悪化し、余分な電気代がかかる傾向があります。
詳しくは「サーバー本体以外にかかる「付帯電力」のインパクト」をご覧ください。
Q. クラウドに移行すれば必ず電気代は安くなるのか
A. 多くの場合、スケールメリットによりコスト効率は向上しますが、利用形態によります。従量課金制の場合、予期せぬ利用増でコストが跳ね上がるリスクもあります。予算を安定させたい場合は、STクラウドFLEXのような定額制クラウドの利用が推奨されます。
詳しくは「予算管理が容易な『STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]』」をご覧ください。
Q. PUEとは
A. PUE(電力使用効率)は、データセンターなどの電力使用効率を示す指標です。「施設全体の消費電力 ÷ IT機器の消費電力」で算出され、1.0に近いほど効率が良いことを意味します。PUEが良い施設を利用することで、無駄な電力コストを削減できます。
詳しくは「サーバー本体以外にかかる『付帯電力』のインパクト」をご覧ください。
Q. データセンターを利用することで、脱炭素(GX)に対応できるのか
A. 対応可能です。省エネ性能の高いデータセンターを利用するだけで電力消費を抑制できるほか、STNetのPowerico(パワリコ)のように再生可能エネルギー由来の電力を利用できるプランを選べば、GX推進に貢献できます。