WAFとは?Webアプリケーションを守る最新セキュリティ対策を解説

課題解決のためのノウハウ
クラウド化やリモートワークの普及により、従来の境界型セキュリティでは十分な保護が難しくなっています。「信頼せず、常に検証する」というゼロトラストの概念に基づくゼロトラストアーキテクチャは、この課題に対する革新的なアプローチとして注目を集めています。本記事では、ゼロトラストの基本原則から、それを実現するゼロトラストアーキテクチャ実装のための具体的なポイントまでを解説します。情報システム部門の皆さまに、次世代のセキュリティ戦略構築のヒントをお届けします。
現代のビジネス環境において、ゼロトラストは企業のセキュリティ戦略を根本から変える新しい考え方として注目を集めています。
ゼロトラストは、「信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という原則に基づく新しいセキュリティの考え方で、2010年にアメリカで提唱されました。従来の境界型セキュリティとは異なり、ネットワーク内外を問わずすべてのアクセスを常に検証することを前提としています。
従来のセキュリティモデルは、「城壁と堀」のアプローチとも呼ばれ、企業の内部ネットワークを信頼し、外部からの脅威に対して強固な境界を設けることで防御していました。このモデルでは、内部システムへのアクセスを獲得すると、各種リソースへの制限が緩和される仕組みとなっていました。例えば日本の地方自治体では、この考え方に基づいた「三層の対策(三層分離)」と呼ばれるセキュリティ対策が長く採用されてきました。しかし、クラウドコンピューティングの普及、モバイルデバイスの増加、そしてリモートワークの一般化により、この「内部は安全」という前提が崩れつつあります。さらに、ランサムウェアの急増や新たな脆弱性の発見により、従来のセキュリティ対策の限界が顕在化しています。
そこで注目されているのが、ゼロトラストという新しい考え方です。ユーザー、デバイス、アプリケーション、そしてデータフローのすべてが、その場所や接続元に関わらず、常に認証と承認のプロセスを経なければならないという考え方です。これにより、内部脅威や高度な外部攻撃に対しても、より効果的に対応することが可能になるでしょう。
このような状況を背景に、2024年5月、デジタル庁が自治体の「三層分離」を廃止し、新たにゼロトラストの考え方を導入してセキュリティを確保する方針を示しました。これは、これからのセキュリティ対策がゼロトラストを基本とする方向に進んでいくことを示しています。
地方自治体の三層分離について詳しくは、お役立ち資料「三層分離からゼロトラストへ 自治体ネットワークセキュリティの進化」をダウンロードしてぜひご覧ください。
クラウド化やリモートワークの普及により、従来の境界型セキュリティでは対応しきれない新たな脅威が増加しています。さらに、IoTデバイスの急増やサプライチェーンの複雑化も、従来のセキュリティモデルの限界を露呈させています。また、サイバー攻撃の高度化と内部脅威の増加により、「信頼できる」内部ネットワークという概念自体だけでは、十分なセキュリティ対策を実現することが難しくなってきています。ゼロトラストの考え方は、これらの現代的な課題に対応し、より柔軟で強固なセキュリティ体制を実現するための必然的なアプローチとなっているのです。
ゼロトラストの概念を反映したネットワークについて詳しくは、「ゼロトラストネットワークとは?概要と従来型との違い、導入のポイントについて解説」をご覧ください。
ゼロトラストアーキテクチャは、「すべてのアクセスを検証する」という基本原則に基づき、以下の5つの主要要素から構成されています。
ユーザーやシステムの認証を継続的に行い、最小権限のみを付与することでセキュリティを強化します。この手法では、単一の認証だけでなく、アクセスの都度、リアルタイムで再確認を行うことが特徴です。多要素認証の導入も、このセキュリティ強化の不可欠な要素となるでしょう。
すべてのデバイスの健全性を常時監視し、セキュリティ基準を満たしていない機器からのアクセスを制限することが必要です。これにより、マルウェアに感染したデバイスからの攻撃を防ぎ、エンドポイントセキュリティを確保します。
ネットワークを細かく分割し、各セグメント間の通信を厳密に制御します。特に、マイクロセグメンテーション技術の導入が効果的です。マイクロセグメンテーションとは、ネットワークをより細かな単位に分割し、それぞれのセグメント間の通信を詳細に制御する技術です。従来の大きな単位でのネットワーク分割と異なり、アプリケーションやワークロードレベルでセグメントを作成することで、侵害が発生した場合の被害を最小限のセグメント内に封じ込めることができます。
アプリケーションやサービスの実行環境を保護し、不正な操作や改ざんを防止します。コンテナやサーバーレス環境など、新しい技術にも対応したセキュリティ対策を実施し、クラウドネイティブな環境での確実な保護を実現します。
重要データの暗号化を徹底し、データフローを可視化・分析することで、異常な挙動の迅速な検知が可能です。これにより、データ漏洩のリスクを最小化し、インシデント対応能力を向上させます。また、機械学習を活用した高度な分析により、より正確な脅威の検出が期待できるでしょう。
さらに、最近では、ゼロトラストアーキテクチャの実装を支援する新しいネットワークセキュリティアプローチの一つとして、SASE(Secure Access Service Edge)が注目されています。SASEは、ネットワーキング機能とセキュリティ機能をクラウドベースで統合し、ユーザー、デバイス、アプリケーションの場所に関わらず、一貫したセキュリティポリシーの適用を可能にします。特にリモートワークやクラウドサービスの利用が増加する現代のビジネス環境において、ゼロトラストの原則を効果的に実現する手段といえるでしょう。
ゼロトラストアーキテクチャの導入は、国家安全保障から産業競争力強化まで、広範囲にわたり影響をもたらします。近年増加するランサムウェア被害や新たな脆弱性への対応が求められるなか、その必要性はますます高まっています。以下に、そのメリットと課題を解説します。
政府機関や重要インフラのセキュリティが向上し、国家間サイバー攻撃への耐性が強化されます。従来の境界型セキュリティでは対応できなかった内部脅威や高度な標的型攻撃、さらにはランサムウェアなどの新たな脅威に対しても、効果的な対策が可能となります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速し、グローバル市場での信頼性が向上します。セキュアな環境下で新たなビジネスモデルの創出や業務プロセスの革新が可能となり、企業の競争力強化につながります。さらに、安全性を確保しながら場所や時間に縛られない業務環境を実現することで、グローバルな事業展開も容易になります。
ゼロトラスト関連技術の研究開発が促進され、セキュリティ専門家の需要が増加します。同時に、ゼロトラストに関連するサービスや製品市場が拡大し、経済成長の新たな原動力となる可能性があります。
大規模な予算確保と適切な配分、そして産業界全体での継続的な技術投資が必要となります。特に、既存のITインフラを刷新する必要がある企業にとっては、初期投資の負担が大きくなる可能性があります。
データプライバシーとセキュリティに関する法整備が必要となり、業界標準の確立と国際協調が求められています。特に、個人情報保護や越境データ移転に関する規制との整合性を図ることが重要課題となります。2024年5月のデジタル庁による三層分離見直しの発表は、この動きを加速させる転換点になったといえるでしょう。
高度なセキュリティ人材の育成と、全従業員に対するセキュリティ意識向上プログラムの実施が不可欠となります。技術の進歩に追いつくためには継続的な学習と訓練が必要であり、企業全体のセキュリティ文化の醸成が求められます。
ゼロトラスト製品の導入だけでは、企業の全てのセキュリティニーズを満たせない可能性があることに注意が必要です。特に、Webアクセスのセキュリティ確保とメールセキュリティでは、求められる対策が異なることがあります。製品によってはWebインターネットアクセスの保護のみに特化しているものもあり、メールを介したセキュリティ脅威に対しては別途の対策が必要となるでしょう。このため、ゼロトラストアーキテクチャの導入にあたっては、企業のセキュリティニーズを総合的にチェックし、必要に応じて複数のソリューションを組み合わせた包括的なアプローチを検討することが必要です。
ある地方銀行では、ゼロトラスト型リモートアクセスを導入し、営業力強化と業務効率化を実現しました。具体的には、営業職員がモバイル端末を使用して場所を問わず社内システムにアクセスできるようになり、セキュリティを確保しながら業務効率が向上しました。この事例は、ゼロトラストアーキテクチャが金融業界のデジタル化と競争力強化に貢献できることを示しています。
ある大手食品メーカーは、クラウドサービスを活用したゼロトラストセキュリティを実践し、IT環境の安全性と効率の向上を実現しています。包括的なゼロトラストアーキテクチャの展開により、メールセキュリティの強化、エンドポイントの保護、認証基盤の整備を行い、デバイスやネットワークの安全性を担保しました。これにより、場所を問わない安全な業務環境が整備され、業務プロセスのデジタル化が加速し、結果的に、営業利益の大幅な増加と年間総労働時間の短縮に成功したということです。この事例は、ゼロトラストアーキテクチャの考え方が生産性向上とセキュリティ強化の両立に貢献できることを示しています。
ある地方都市の自治体では、将来的な大規模災害への対応力強化と行政サービスの向上を目指し、クラウドベースのゼロトラストセキュリティ環境を構築しました。クラウドベースの業務用アプリケーションスイート、AIを活用した生成系サービス、そしてクラウドのデータソリューションを導入。セキュリティ面では、データ共有の制限、状況に応じたアクセス制御、エンドポイントデバイスの管理強化、セキュアなブラウザ環境の整備を実施しました。
これらの取り組みにより、災害時の情報共有と対応の迅速化、行政サービスのデジタル化促進、業務効率の大幅な向上、データ利活用による意思決定の精度向上などの成果が得られました。特に地震、台風の災害発生時には、リアルタイムでの情報共有やリソースの柔軟な配置が可能になり、データの可視化技術を活用した詳細な状況把握と分析により迅速かつ効果的な災害対応を行うことができました。
実際にゼロトラストセキュリティを実装するためには、企業の規模や業種によって最適なアプローチが異なります。導入を成功させるための主要なポイントについて見ていきましょう。
自社の環境を適切に確認し、優先順位をつけて段階的に導入することが成功の鍵となります。まず、現状のセキュリティ課題を特定し、データやアプリケーションへのアクセス制御を強化することから始めるのが効果的でしょう。その後、ネットワークセグメンテーションや継続的な監視システムを導入するなど、段階的なアプローチをとります。
自社のニーズに合った技術ソリューションを選択することが大切です。例えば、マイクロセグメンテーション技術やZTNA(Zero Trust Network Access:従来のVPNに代わり、アプリケーションレベルでのアクセス制御を実現する技術)の導入を検討します。ZTNAは、ユーザーやデバイスの認証を継続的に行い、必要最小限のアクセス権限のみを付与することで、よりきめ細かなセキュリティ制御を可能にします。専門家の支援を受けながら、自社の状況に最適なソリューションを選定することが推奨されます。
企業全体でセキュリティ意識を高めることが長期的な成功につながります。経営層から一般従業員まで、全員がゼロトラストの原則や新しいセキュリティ対策について理解を深める必要があります。定期的な研修や啓発活動を通じて、セキュリティ意識の向上を図ることが不可欠です。
導入後も定期的なチェックと改善を行い、常に変化する脅威に対応できる体制を維持します。ユーザーとデバイスの行動を常時監視し、異常を検知する体制を整えることが求められます。また、新たな脅威や技術の進化に応じて、セキュリティ対策を随時更新していく必要があります。
ゼロトラストアーキテクチャの導入は、単なる技術的な変更ではなく、企業全体のセキュリティアプローチの変革です。そのため、専門家の支援を受けながら、自社の状況に合わせて段階的に導入を進めることが求められます。企業の規模や業種によって、最適なアプローチは異なります。したがって、各企業の特性を考慮した柔軟かつ包括的な導入戦略が求められます。
ゼロトラストアーキテクチャの導入により、より強固で包括的なセキュリティ体制の構築が可能となります。その実装には慎重な計画と段階的なアプローチが必要であり、現状確認、適切な技術選択、企業全体のセキュリティ文化醸成、継続的な監視と改善など、包括的な取り組みが求められます。
ゼロトラストアーキテクチャの導入は、企業全体のセキュリティ戦略の変革です。この変革を成功させるには、専門的な知識と経験が不可欠です。
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