パブリッククラウドで実現するコスト削減と運用効率化

課題解決のためのノウハウ
ベンダーロックインとは、ビジネスを行ううえで特定ベンダーのサービスや製品に対する依存度が高くなり、他社への乗り換えが困難になってしまう状態を指します。同じベンダーと継続的な関係性を構築することはメリットもあるものの、リスクも少なくありません。そのため、ベンダーロックインの回避や、既にベンダーロックインに陥っている場合の脱却を検討している企業の情報システム部門やIT企画部門の担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、改めてベンダーロックインの発生原因、問題点を確認したうえで、回避策や脱却策を解説します。
ベンダーロックインが起きてしまう要因はさまざまで、それぞれに関連するリスクがあります。特に次のような点が挙げられます。
ひとつの要因は、長期間にわたって特定ベンダーの製品を利用している間に、機能追加やカスタイマイズなどを繰り返し、システムが複雑化してしまう点です。このように複雑化したシステムは、製品の老朽化により刷新が必要になった際、別のベンダーで同等の機能を実現させるのに多額のコストと手間がかかります。その結果、既存ベンダーとの契約を継続せざるをえず、ベンダーロックインが発生する可能性が高まってしまうのです。
既存ベンダーが独自の技術やフォーマットを使用している場合、特定のサービスや製品への依存度が高まります。しかし、独自技術の多くは他社製品との互換性がないケースも少なくありません。そのため、別のベンダーに移行する際、互換性の問題が生じてしまい、移行が困難になってしまいます。
サービスや製品導入時の契約を長期で締結し、途中で解約するには多額の違約金が発生する場合があります。その結果、解約せずに継続して特定ベンダーの製品を使用することになり、ベンダーロックインの状態になってしまうのです。
ベンダーを移行すると、新たに関係性の構築を行わなければなりません。自社業務を理解してもらう手間や、製品のカスタマイズや機能追加にかかる時間と手間を避けるあまり、既存ベンダーを解約できないまま、ベンダーロックイン状態になってしまいます。
システムの複雑化や独自技術の使用が要因となって起こるベンダーロックインは、一般的に「テクノロジーロックイン」と呼ばれます。
一方で、企業間の関係性により特定ベンダーへの依存度が高くなるのは「コーポレートロックイン」と呼ばれます。
企業がベンダーロックインの状態になってしまうことで生まれる主なリスクは次のとおりです。
ベンダーロックインの状態になると、新しいシステムへの移行が難しくなり、長期に渡り同じシステムを使い続ける可能性が高まります。その結果、システムの老朽化が進み、顧客の新たなニーズに対応するための柔軟性や拡張性が損なわれてしまうでしょう。
特定ベンダーへの依存度が高くなりベンダーロックインの状態になると、移行はもちろんメンテナンスやシステム更新も特定ベンダーに依存せざるをえません。その結果、価格交渉力の低下によるコストの高止まりが起きる可能性が高まります。
また、ベンダーロックインの状態になればベンダー間での競争がなくなるため、サポート品質低下につながり、サービスレベルが不安定になってしまうリスクもあるでしょう。
ベンダーロックインにより、特定ベンダー独自の技術や仕様に依存せざるをえなくなると、他社システムとの連携や統合が困難になる可能性も高まります。その結果、他社システムと連携させる際に改めてデータ加工やファイル形式の変更といった手間が生じ、効率化の妨げになるリスクも生じてしまうでしょう。
ベンダーロックインの状況に陥ってしまうと、自社内にシステムやツールに関する知識やノウハウが蓄積された人材がいなくなります。その結果、ベンダーロックインの状況を回避できても、社内にシステムを扱える人材がいないため、再び別ベンダーに依存してしまう可能性が高まってしまうでしょう。
特定のベンダーと長期間にわたって関係性が継続すると慣れ合いが生まれやすくなり、お互いに脆弱性を放置して、セキュリティリスクが高まってしまう可能性があります。
さまざまなリスクにつながるベンダーロックインの状態を回避するための主な対策は次のとおりです。
ベンダーロックインの大きなリスクのひとつとして挙げられるのが、ベンダーの独自技術や仕様に依存してしまう点です。回避策としては、オープンソースを活用したアプリケーションの活用、自社が属する業界で標準化された規格のサービスを採用することなどが考えられます。
ベンダーロックインに陥る最大の要因は、特定ベンダーにすべてを依存してしまう点です。そのため、複数のベンダーのサービスを組み合わせて使用する「マルチベンダー戦略」が効果的です。例えば、異なるベンダーのソフトウェアやクラウドサービスを組み合わせて使用することで、特定のベンダーへの依存度を下げることができます。
また、データセンターのハウジングサービスとクラウドサービスを併用するハイブリッドアプローチも有効な選択肢のひとつです。
具体的なアプローチとしては、セキュリティや制御の要件が高いシステムにはハウジングサービスを、スケーラビリティや柔軟性が求められるシステムにはクラウドサービスを活用するなど、用途に応じて使い分けることが可能です。
この際、クラウドサービスの選定では、オープンで標準的な技術を採用し、APIやデータフォーマットが標準化されているものを選ぶことで、ベンダーロックインのリスクを最小限に抑えられます。このようなマルチベンダー戦略とハイブリッドアプローチにより、自社のニーズに合った最適なシステム環境を実現しつつ、特定ベンダーへの依存度を下げることができます。
システムに関する知識やノウハウを自社内に蓄積することで、ベンダーへの依存度を低減できます。自社でシステムの基本的な管理や運用ができるようになれば、特定のベンダーに縛られるリスクも軽減可能です。
また、契約内容の慎重な検討も欠かせません。長期契約や高額な違約金などのペナルティがない契約を選択し、ベンダー変更のハードルを低くしておくことが大切です。契約期間や更新条件、データの所有権や移行手順なども事前に明確にしておくことで、将来的なベンダー変更の可能性を確保できます。
既にベンダーロックインの状態に陥っている場合の脱却策としては次のような対策が考えられます。
既存システムを最新技術で刷新することで、ベンダーへの依存度を低減できます。モダナイゼーションを通じて、オープンな技術や標準規格の採用により、特定のベンダーに縛られないシステム環境の構築が可能です。この過程で、自社のビジネスニーズを再評価し、より柔軟で拡張性の高いシステムへと進化させることもできます。
オンプレミス環境とクラウド環境を組み合わせるハイブリッドクラウドの導入は、柔軟性とベンダーロックイン対策の両立を図る有効な方法です。例えば、重要なデータや制御系システムはオンプレミスで管理し、スケーラビリティが求められる部分をクラウドで運用するような形が考えられます。各環境の利点を活かしつつ、特定ベンダーへの過度の依存からの脱却が可能です。
ハイブリッドクラウドについて詳しくは、「ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットと使い分け例を紹介」をご覧ください。
自社と特定ベンダーだけの関係になってしまうと、どうしてもベンダーロックインからの脱却は困難です。そこで、サーバーやネットワーク運用、保守・管理の一部を外部委託できるマネージドサービスを活用することで、ベンダーロックインから脱却しやすくなります。自社の要件に合ったマネージドサービスを適切に選定し、活用することで、ベンダーロックインから脱却してリスクを軽減することが可能です。
マネージドサービスについて詳しくは「マネージドサービスとは?メリット・デメリットやフルマネージドサービスとの違いについて解説」をご覧ください。
ベンダーロックインの回避・脱却、どちらの対策を行う場合でも次の点に注意して進めることが求められます。
自社の業務プロセスに合ったシステムを選定しようとすると、どうしてもカスタマイズや機能追加が必要となる可能性が高まります。そのため、システムに業務プロセスを合わせるといった意識が重要です。
システムに業務プロセスを合わせるようにすれば、カスタマイズや機能追加も最小限に抑えられます。また、ベンダーの独自技術や仕様に依存する必要性も低下するため、ベンダーロックインの回避や脱却も容易になるでしょう。
ベンダーロックイン対策を進める際は、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な視点に立って最適なソリューションを選択する必要があります。将来的な技術トレンドやビジネスニーズの変化を予測し、柔軟性と拡張性を持つシステム構築を目指すことが重要です。
同時に、ベンダーロックイン対策にはコストや時間がかかることを認識し、リスクとリターンのバランスを慎重に検討する必要があります。対策を講じることで得られる利益と、それにかかるコストや労力を比較し、自社にとって最適な選択を行うことが求められます。
また、ベンダーロックイン対策を段階的に実施することで、リスクを分散させつつ、継続的な改善を図れます。定期的に現状を評価し、必要に応じて戦略を調整することで、長期的かつ安定的なシステム運用を実現できるでしょう。
ベンダーロックインを回避・脱却するには、リスクを前提としたシステム選定や業務プロセスの適応、そして柔軟性と拡張性を備えたシステム環境の構築が重要です。
そこでおすすめなのが、STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」で運用するハウジングサービスとSTクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]のハイブリッドサービスです。これにより、長期的視点での業務用途やコスト検討、段階的な移行、新技術の追加が容易なハイブリッド環境を実現できます。
ハウジングサービスでは、ハードウェアの選択からソフトウェアの構成まで自由度が高く、特定ベンダーに依存しない環境を構築可能です。そして、STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]により、必要に応じてリソースを柔軟に増減でき、スケーラビリティも確保できます。さらに、両サービスをコネクティビティサービスで接続することで、用途に応じた最適なシステム活用が実現します。
加えて、STNetではAWSやAzureなどのパブリッククラウドとの連携も可能なソリューションを提供しています。パブリッククラウドと閉域接続できるST-WANダイレクトコネクトを利用すれば、オンプレミス環境とパブリッククラウドを安全かつ効率的に接続できます。
STNetのサービスを活用することで、ベンダーロックインのリスクを低減しつつ、自社のニーズに最適化されたシステム環境を段階的に構築できますので、ベンダーロックインでお悩みの際はぜひお気軽にご相談ください。
一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えた新しいクラウドサービスです。