IaaSとは?クラウド導入に欠かせないIaaSの概要、PaaSやSaaSとの違いを解説

課題解決のためのノウハウ
ビジネスにおいてパブリッククラウドを使うことが当たり前となりつつある今、その代表格となるクラウドプラットフォームがMicrosoftのAzureとAmazonのAWSです。どちらもさまざまな機能を有し、業務効率化や生産性向上に大きく寄与していますが、それぞれの概要や違いを理解していないと、どちらを選択すればよいかわかりません。
そこで今回は、ビジネスのクラウド活用に欠かせないAzureとAWSについて、それぞれを比較しつつ、自社に最適なプラットフォーム選択のポイントを解説します。これからクラウド活用を始める、現在のサービスから移行を検討しているといった際には、ぜひ参考にしてください。
まずはAzure、AWSそれぞれの概要を解説します。
AzureとはMicrosoftが提供するクラウドプラットフォームで、2010年2月にサービスが開始されました。当初はWindowsのサービスとして提供されていましたが、2014年に入り「Microsoft Azure」に名称変更をしています。
提供するサービスはIaaS、PaaS、SaaSで、主な機能はAzureを統合管理する「Microsoft Azure portal」、サーバーレスでのコード実行環境を提供する「Azure Functions」、プロジェクト開発と運用を支援する「Azure DevOps」、オンラインストレージ「Azure Storage」、仮想マシンサービス「Azure Virtual Machines」などです。
2023年第一四半期における世界での市場シェアは23%と、全体の約4分の1となっています。
AWSとは、Amazon Web Servicesの略称で、Amazonが提供するクラウドプラットフォームです。2006年7月にサービスを開始しています。
提供するサービスはIaaS、PaaS、SaaSで、主な機能はサーバーの構築と管理を行える「Amazon EC2」、オブジェクトストレージサービス「Amazon S3」、イベント駆動型のコンピューティングサービス「AWS Lambda」、AWSとオンプレミス、およびほかのクラウド上のリソースとアプリケーションを観察・監視する「Amazon CloudWatch」などです。
2023年第一四半期における世界での市場シェアは32%と、Azureをわずかながら上回っていますが、その差は年々縮まっています。
参照:Cloud Infrastructure Services Market|Synergy Research Group
クラウド活用について詳しくは、「クラウドとは?その種類や活用のメリット・デメリット、導入のポイントを解説」をご覧ください。
AzureとAWSの概要を見たところで、それぞれの強みや弱み、料金やサポート体系、セキュリティについて比較していきます。
まずはAzureとAWS、それぞれのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
OfficeをはじめとしたMicrosoft製品との連携がとりやすいのが、Azureの大きなメリットと言えるでしょう。また、Microsoftが持つ広範囲のグローバルネットワークによるサービスの提供を受けられるのも、Azureならではのメリットです。
Azureのデメリットとしては、仮想マシンの起動がAWSに比べ遅い点が挙げられます。AWSでの起動時間が1分程度なのに対して、AWSでは2分半以上かかることもあります。わずかではありますが、日々利用するものの起動が遅いのは作業者にとってはデメリットと言えるでしょう。また、オンラインコミュニティの充実度が低い点や、活用に専門知識を要する点などもAWSと比べて弱い部分です。
AWSはAzureやほかのクラウドプラットフォームに比べ導入コストが安く、迅速に導入できる点に強みを持っています。また、190カ国を超える国での利用が可能なため、海外に拠点がある企業、グローバル展開を視野に入れている企業に対応できるのも大きなメリットです。
AWSのデメリットは、メンテナンスによりシステムが停止する際の対応を事前に決めておかなければならない点です。なぜならメンテナンスは、AWS側から事前告知はあるものの不定期に実施されるため、あらかじめ対策を立てておく必要があるのです。また、クラウドコンピューティングサービスでは基本的に用意されているプラン以外の増減ができないといった、カスタマイズの自由度の低さもデメリットと言えるでしょう。
料金体系はAzure、AWSのどちらも従量課金制で、利用した分だけの料金を支払う仕組みとなっています。ただ、どちらもデータ転送費用が別途必要になるため、閑散期でもデータ転送は頻繁に行うといった場合、運用コストが思った以上に高額になってしまうケースも少なくありません。
またAWSの決済手段は、換算はドルベースですが、Visa または MasterCard を使用すれば、決済するための通貨は選べます。つまりドル以外での決済も可能です。同じくAzureも価格設定はドルベースで、日本円での決済は可能ですが、為替の影響を受けるでしょう。
コストを最適化するには、自社業務のどの部分にAzure、AWSを活用するかを明確にすることが重要です。従来の業務プロセスを可視化させ、まずは一部の業務から開始しつつ、状況を見ながら増やしていくことでコストを最適化していけるようになるでしょう。
実際に利用する際のおおよその料金を知りたい場合は、料金計算ツールの活用がおすすめです。それぞれのツールの使い方について簡単に解説します。
Azureの料金計算ツールにアクセスし、推定時間単位もしくは月単位のコストを算出します。製品別、シナリオ別で必要な項目にチェックを入れ、自社で活用する数字を入れていくことで算出が可能です。
AWSの料金計算ツールにアクセスし、コストを算出します。製品カテゴリーのなかから、自社で活用したいサービスを選択すると料金例が表示されるので、自社に合ったコストの把握が可能です。
パブリッククラウドを選択する際のポイントとして、サポート体制は欠かせない要素のひとつです。特にAzureもAWSも海外のサービスであるため、日本語による適切かつ迅速なサポートがないとトラブル発生時には復旧に長い時間がかかってしまいます。
Azureはオプションで、範囲によって次の4つのサポートを提供しています。
タイプ | 料金 |
---|---|
Basic(すべての利用者が対象) | 月額利用料金に含まれる |
Developer(試用および非運用環境) | USD29/月 |
Standard(運用ワークロード環境) | USD100/月 |
Professional Direct(ビジネス上重要な用途での利用) | USD1,000/月 |
またAzureのほか、Microsoft 365、Dynamics 365を含む包括的な、組織全体を対象とするサポート プランとして、ビジネス向けサポートも用意されています。
AWSもオプションでサポートを提供しており、その内容は次のとおりです。
タイプ | 料金 |
---|---|
デベロッパー(各種サービスのテスト利用者向け) | 最低請求額のUSD29/月、または月額AWS使用料の3%のいずれか大きい方 |
ビジネス(AWSに本番環境のワークロードを持つ方向け(最小枠)) | 最低請求額のUSD100/月、または月額AWS使用料に対し1~4に応じて算出した金額の合計のいずれか高い方 月額AWS使用料のうち、 1.最初のUSD0~10,000に対して10% 2.USD10,000~80,000に対して7% 3.USD80,000~250,000に対して5% 4.USD250,000を超える分に対して3% |
Enterprise On-Ramp(AWSにプロダクションおよび/またはビジネスクリティカルなワークロードを持つ方向け) | 最低請求額のUSD5,500/月、または月額AWS 使用料の10%のいずれか高い方 |
エンタープライズ(AWSにビジネスおよび/またはミッションクリティカルなワークロードを持つ方向け) | 最低請求額のUSD15,000/月、または月額AWS使用料に対し1~4に応じて算出したものの合計のいずれか高い方 月額AWS使用料のうち、 1.最初のUSD0~150,000に対して10% 2.USD150,000~500,000に対して7% 3.USD500,000~1,000,000に対して5% 4.USD1,000,000を超える分に対して3% |
Azureを提供するMicrosoftが、サイバーセキュリティの研究と開発に年間USD10億を超える投資を行っていることからも、セキュリティを重視していることがわかります。
対するAWSは投資額こそ挙げていませんが、AWSのセキュリティ方針として、次の4点を掲げています。
この方針から見て、AWSもセキュリティを重視し、コストをかけて対策に取り組んでいると言えるでしょう。そうした意味では、セキュリティ面についてはAzureもAWSも共通点が多いとも言えます。
参照:https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/key-vault#layout-container-uidedae
参照:AWSにおけるセキュリティとコンプライアンス|アマゾンウェブサービスジャパン株式会社
サイバーセキュリティについて詳しくは、「サイバー攻撃とは?さまざまなリスクから自社を守るための対策を解説」をご覧ください。
AzureとAWSは、それぞれどのような用途に向いているのでしょう。ここまで見てきたそれぞれの特徴や強み、弱み、料金体系などをもとに解説します。
Azure最大の特徴は、同じMicrosoftの製品であることから、OfficeやMicrosoft365のほか、Windowsアプリ開発に使用されるVisual Studioのような統合開発環境(IDE)などとの親和性が高い点です。そのため、Windows Serverの環境をクラウドに移行したい場合や、すでにMicrosoft製のサービスを主に利用している場合に向いていると言えます。具体的な用途としては次のとおりです。
Azureのコンピューティングサービス、「Azure Virtual Machines」は、LinuxとWindowsのVM(仮想マシン)を素早く作成し、コスト削減を実現します。「Azure Virtual Machine Scale Sets」を使用すれば、1台から数千台までのVMインスタンスに数分でスケーリングすることも可能です。
AzureではPaaSのひとつとして、ストレージ管理を行う「Azure Storage」を提供しています。バイナリデータを格納するデータベースのためのストレージ「Azure Blob Storage」、ファイル共有を行うためのストレージ「Azure Files」のほか、分離したシステム間のメッセージング処理を提供する「Azure Queue Storage」、事前にデータ構造を定義することなくデータ格納を可能にするNoSQL(Not Only SQL)データベース「Azure Table Storage」などがあります。
Azureの主なネットワーク機能としては、接続、アプリケーション保護・配信、ネットワーク監視の4つがあり、それぞれ単独もしくは組み合わせての使用が可能です。
ほかにも、セキュリティサービスやAI+ML機能、データベースと分析機能などの用途があります。
AWSは海外で利用する企業が多く、シェアも高いことから、海外に拠点を持つ企業やグローバル展開をしている、もしくは検討している企業に向いています。また、AWSはMicrosoft以外の製品とも相性が良く、汎用(はんよう)性が高い点でも、中小から大企業まで幅広い規模の企業での利用に適しています。主な用途としては、次のようなものが挙げられます。
AWSの仮想サーバーサービスで、物理サーバーの構築、環境設定などをしなくても手軽に仮想サーバーを実現します。
AWSのストレージサービスである「Amazon S3」は、容量制限のないストレージサービスで、高い耐久性やセキュリティ性を持っています。データの保管やバックアップはもちろん、ストレージのディスク管理や冗長化を考慮せず開発を行うことが可能です。
オンプレミスでのデータベースサーバーの構築に必要となる煩雑な作業をすることなく、データベース構築を行えるリレーショナルデータベースです。管理画面からの構築が可能なうえ、容量追加も容易で高い拡張性を持っています。
ほかにもDNS(ドメインネームサービス)機能を持つ「Amazon Route53」、負荷分散機能を実装する「Elastic Load Balancing」、仮想デスクトップを構築する「Amazon WorkSpaces」、閉域網接続を実現する「AWS Direct Connect」などがあります。
Azure、AWSそれぞれの強みや弱み、特徴について見てきました。ここではそれを踏まえたうえで、「ビジネス用途と企業ソリューションから考える場合」と「テクノロジーと開発の観点から考える場合」とで、AzureとAWSのどちらを選択すべきかについて解説します。
ビジネスの目的や抱える課題の解決策としてAzureやAWSを選択したいと考える場合について、スタートアップ企業、大手企業、公共セクターの3つで見てみましょう。
Microsoftがスタートアップ企業と大手企業の協業を実現させるためのサポートをしているのが、スタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」です。
BtoBスタートアップ企業を対象として140カ国以上で展開するこのプログラムでは、インフラのバックアップや大企業での販売支援といった事業サポートを受けられます。そのなかで、GitHub Enterpriseの無料利用やビジネス支援などと合わせ、最長4年間のAzure無償利用枠の利用が可能です。
これに対し、AWSではスタートアップの立ち上げ、構築時点での課題解決につながる「AWS Activate」を提供しています。15年を超える期間にわたって、25万社を超えるスタートアップのサポートを行ってきた豊富な実績をもとに、新たなビジネスの創出、製品の構築、リーチ拡大、支援者との橋渡しまでを実現します。
Microsoftでは、大手企業が抱えるコストやセキュリティ課題の解決策としてAzureの活用を推進しています。例えば、近年、大手企業でも利用が進んでいるOSS(オープンソースソフトウェア)をAzureでは簡単に組み込むことが可能です。また、「Azure Security Center」「Microsoft Sentinel」など、セキュリティやコンプライアンスに関連する製品やサービスも豊富に用意されています。
ほかにもハイブリッドクラウド運用、インフラ・ネットワーク機器の保守・管理などについても、適切なサービスの提供によりコスト削減が可能です。
これに対し、AWSは大手企業でのDXをスムーズに進める用途への機能提供を推進しています。クラウドプラットフォームの提供はもちろん、Amazonが社内で行っていることを数日間のハンズオンを通して体験できるDIP(デジタルイノベーションプログラム)の無償提供や、これまでの豊富な実績をもとにしたDXサポートなど、さまざまな面からDXの実現を支援しています。
公共セクターでのAzureの利用で挙げられるのが、デジタル庁の実施する「ガバメントクラウド早期移行団体検証事業」です。Microsoftが支援するこの事業では、Azureを活用した技術的支援のほか、関連資格取得支援、「Azure OpenAI Service」での生成AI活用による事業開発などを実施しています。
これに対し、政府・地方自治体、教育機関などの公共機関にAWSやクラウドに関する情報サイトを公開し、導入を推進しているのがAWSです。公共団体のクラウド移行サポート、教員や研究者、非営利団体関係者を対象とした各種プログラムの提供など、公共機関でのAWS活用に欠かせないサービスを展開しています。
テクノロジーと開発の観点から考える場合について、「サーバーレス」「コンテナ技術」「AI&ML」の3点で見てみましょう。
サーバー運用の手間軽減につながるサーバーレスを目的にパブリッククラウドを選択する場合について、それぞれのポイントを解説します。
Azureが提供するサーバーレスサービスは、「Azure Functions」です。メリットとしては、サーバーの構築やリソースの割り当てをAzureが自動で行うため、ユーザーがコーディングだけに集中できる点が挙げられます。また、Windowsベースでの開発が可能なのも「Azure Functions」のメリットと言えるでしょう。
開発については、C#、JavaScript、Java、PowerShell、Python、TypeScriptなど、多様なプログラミング言語をサポートしています。さらに、サポート外の言語であってもHTTP プリミティブをサポートするすべての言語で実装できるカスタムハンドラーがあるため、あらゆる言語への対応が可能です。
「Azure Functions」に対し、AWSが提供するサーバーレスサービスは、「AWS Lambda」です。このサービスは、大手金融機関の残高照会サービスでも使われているという高い信頼性があります。また、AWSサービス間を疎結合(システムの構成要素ごとの独立性が高い状態)にしやすい特徴があり、トラブル発生時でもほかのサービスへの影響を最小限に抑えられるのも大きなメリットです。
対応するプログラミング言語も多く、Java、Go、PowerShell、Node.js、C#、Pythonなど、多彩なコードに対応。日本で開発されたRubyにも対応しています。そして、Azureのカスタムハンドラーに近いカスタムランタイムの活用により、Azure同様あらゆる言語への対応が可能です。
アプリケーションの実行に必要な要素を全て含んだソフトウェアのパッケージであるコンテナ技術を目的に、パブリッククラウドを選択する場合について、それぞれのポイントを解説します。
Azureが提供するコンテナサービスには、「Azure Container Instances(サーバーレスコンテナ)」、「Container Registry(コンテナレジストリ)」、「Azure Kubernetes Service(コンテナクラスタ)」などがあります。
どれも実行までの設定工程が少ないため、比較的容易に設定が完了できるのがメリットで、とりあえずコンテナサービスを使ってみたいといった際におすすめできます。
AWSが提供するコンテナサービスには、「AWS Fargate(サーバーレスコンテナ)」、「Amazon Elastic Container Registry(コンテナレジストリ)」、「Amazon Elastic Kubernetes Service(コンテナクラスタ)」、「Amazon Elastic Container Service(コンテナクラスタ)」などがあります。
設定にはある程度の知識を要しますが、ドキュメントやベストプラクティスが多いので、初心者でもある程度勉強すれば使いこなせるでしょう。また、専門性が高い分、Azureのコンテナサービスに比べ、設定の自由度は高くなっています。
人工知能と機械学習の略称であるAI&MLを目的にパブリッククラウドを選択する場合について、それぞれのポイントを解説します。
Azureが提供する主なAI&MLサービスには、「Azure Machine Learning(機械学習プラットフォーム)」、「AI Language(自然言語処理)」、「Azure Computer Vision(画像認識)」などがあります。機械学習モデルの設計や構築のプロセスを自動化するAutoMLで、表形式と画像データの使用が可能になっています。
AWSが提供する主なAI&MLサービスには、「Amazon SageMaker(機械学習プラットフォーム)」、「Amazon Comprehend(自然言語処理)」、「Amazon Rekognition(画像認識)」などがあります。
AutoMLは表形式データのみ使用可能ですが、MLOpsでは、ノーコード、ローコードサービスがAzureよりも充実しているのがメリットと言えます。
ここで、スタートアップ企業、大手企業、公共セクターでのそれぞれのAzureとAWSの導入事例を紹介します。
建設現場の遠隔管理を可能にするツールの開発を行っているあるスタートアップ企業では、サービスのインフラ基盤に複数のクラウドサービスのなかからAzureを選択しました。その理由は、汎用性の高さ、スモールチームでの運用実現性です。スタートアップ企業のなかでも、社内にエンジニアがいて、深い部分まで改良を重ねて開発を実現させたいといった場合は、汎用性の高いAzureが適していると言えるでしょう。
これに対してAWSは、個人向け家計簿アプリの提供を行っているあるスタートアップ企業で、低コストでの導入、容易な環境設定を実現しています。サービスが本格稼働する前で、成功するかどうかがわからないためスモールスタートで開始したい、社内にインフラ専門家がいないといったスタートアップ企業は少なくありません。そうした際に、コストを抑えた最小構成でも十分に活用ができ、専門家がいなくても環境設定が容易なAWSは適していると言えます。
事務機器、光学機器などを製造する日本有数のあるメーカーでは、以前より拠点ごとのデータをオンプレミスのVDI(デスクトップ仮想化)で集約していました。しかし、VDIのコストが高いことに加え、コロナウイルスの感染拡大により在宅での設計がメインになったことから、AzureのVDIであるAVD(Azure Virtual Desktop)に切り替えたのです。
AVDを選択したポイントは、グループ全体でMicrosoft 365を利用していたため、低コストで導入できる点、そしてWindowsデスクトップ環境とAzureの相性が良い点が挙げられます。今後もグループ内で横展開する際、迅速かつ低コストで進められる点において、Windowsデスクトップ環境が整備された企業であれば、Azureが適していると言えるでしょう。
AWSも多くの大手企業で活用されています。その大きな理由のひとつは、膨大なデータを高速で処理できる点にあります。例えば、ある企業ではスマートデバイス向けゲームを150カ国に同時公開する際に、ある国内大手の航空会社では予約・発券、運用実績などのデータ処理をする際にAWSを活用しました。
ほかにも、ある大手テレビ局がAWSサービスを活用した超低遅延配信技術を使い同時配信を行うといったように、大容量のデータ処理や管理にAWSは圧倒的な強みを持っています。
Azureの事例には、NTT西日本が地方自治体のDXが進まないことへの解決策として、2023年5月にMicrosoftと協業を始めると公表したケースが挙げられます。Azureは、2022年10月にガバメントクラウドとしてデジタル庁に認定されました。NTT西日本とMicrosoftとの協業により、政府が定める「自治体DX推進計画」において規定されたさまざまな取り組みをサポートしています。
具体的には、ガバメントクラウドへのリフト&シフト支援や標準化対象外のシステムのクラウドサービス化支援、ハイブリッドクラウド導入支援などです。加えて、海外でのハイブリッドクラウド「Azure OpenAI Service」の構築、導入、運用支援なども行っており、公共セクターがDXを進める際の選択肢のひとつとして活用が進められていくでしょう。
AWSの事例としては、地方の市役所で蓄積されている業務用のGIS(地図情報システム)の活用と、一般公開型Webシステムとしての構築が挙げられます。従来のGIS管理は職員に大きな手間がかかるうえ、システム更新時にかかるコストも大きな課題となっていました。しかしAWSの活用により、低価格でシステム更新できただけではなく、わずかな期間でのシステム構築、サービス開始を実現しています。
公共セクターにとっての大きな課題であるコスト削減や短期間でのシステム構築、サービス開始を目指すうえでAWSは大きな力を発揮すると言えるでしょう。
参照:https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/toyonakacity/
参照:https://www.ntt-west.co.jp/news/2305/230522a.html社
そもそもほとんどの企業、公共セクターが利用するPCがWindowsであるため、Azureはビジネス用途としての導入のハードルが低く、今後はさらなるシェア率の向上が予測されます。また、コスト最適化やデータの冗長性を高め、バックアップを進めたいといった理由から、マルチクラウド化が進むとの見方もあります。そうなれば、現在AWSを使っていても、2つめのパブリッククラウドとしてAzureを選択する企業が増加する可能性も高まるでしょう。
ただし、現時点においてAWSは、機能の多さ、性能の高さなどから根強い利用者も少なくありません。今すぐにどちらかが一強になるのではなく、それぞれの用途に合った使い方によって選択する企業が増えていくと予測できます。
AWS や Azure などのパブリッククラウドと、オンプレミスシステムなどを組み合わせて最適な環境を構築することをハイブリッドクラウドといい、こちらもマルチクラウドの一種と呼べるでしょう。
ハイブリッドクラウドについて詳しくは「ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットと使い分け例を紹介」をご覧ください。
業務のデジタル化に合わせ、基幹システムや業務システムのクラウド化も多くの企業で進んでいます。そこで重要となるパブリッククラウドですが、つい数年前までAWSの一強状態だったものの、近年ではAzureが猛追し、2023年においては両者の差は10%もありません。
今後、業務のさらなる効率化や生産性向上などを求め、単なるクラウド化からマルチクラウド化が進んでいくと予測されます。そのため、将来的にはAzureとAWSの両方を用途に応じて使い分けるケースも珍しくなくなっていくでしょう。どちらを使うかではなく、この業務にはAzure、この業務にはAWSといった使い分けが基本になっていきます。そのため、それぞれの特性や強み、弱みを理解し、自社の業務に最適な方を選択しなくてはなりません。
そこで欠かせないのは、クラウドサーバーの選択です。AzureとAWSの性能差が縮まっていくなか、他社との差別化を図るには、クラウドサーバーの選択が重要になります。おすすめは通信量に応じた従量課金がなく、定額で利用できて為替の影響も受けない、設定画面がわかりやすいと評判の「FLEX GUI」を提供しているSTNet「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」です。さまざまな用途に応じてクラウド環境構築を実現する専門技術員のサポートと、堅牢なデータセンター「Powerico」で安定した稼働を実現します。
また、AWSを利用する際は、「ST-WANダイレクトコネクト(クラウド接続)」をあわせて活用すれば、さらなるセキュリティ強化も可能です。AWS向けにインターネットを経由せず専用ネットワークを介して、高信頼・高品質・低遅延で安定した通信を実現します。
オンプレミスのクラウド移行を検討される際は、パブリッククラウドの選択と同時にクラウドサーバーの選択もしっかりと行うようにしましょう。
一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えた新しいクラウドサービスです。