AIOpsとは?
人材不足時代のインフラ運用を支える新しい選択肢

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課題解決のためのノウハウ

生成AIの活用が広がり、AIの処理を支える高性能なITインフラを自社に構える企業が増えています。一方で、そのインフラを24時間365日止めずに運用・監視し続ける体制づくりは簡単ではありません。IT人材の確保が年々難しくなるなか、「この運用を自社の人手だけで回し続けられるのか」と不安を抱える情報システム部門の担当者は少なくありません。本記事では、AIインフラの運用がいま限界を迎えつつある理由を整理したうえで、解決の方向としてAIOps(AIを活用した運用)と運用委託という2つの選択肢を解説します。

なぜ今、AIインフラの運用は限界を迎えているのか

AIインフラの運用が行き詰まりつつある理由は、大きく2つあります。1つは、運用を担う「人」を確保しにくくなっていること。もう1つは、人手を補ってきた従来の自動化が、システムの複雑さに追いつかなくなっていることです。

人材の確保も、人手による監視も限界がある

第一の限界は、運用を担う人材そのものを確保しにくくなっていることです。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査では、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と回答した企業は、2023年度の調査で62.1%と初めて半数を超えました。2025年の調査でも、不足を感じている企業は85.1%にのぼります。経済産業省が2019年に公表した試算でも、IT人材は2030年に中位シナリオで約45万人・最大で約79万人不足するとされています。採用で必要な人員を確保する難しさは、今後さらに増すとみられます。

しかもAIインフラの運用保守は、24時間365日の交代勤務や夜間の障害対応が前提となる仕事です。ただでさえ採用競争が激しいなか、負荷の高い運用の現場に人を集めて定着させるのは、多くの企業にとって簡単ではありません。

そして仮に必要な人数を確保できたとしても、人による監視そのものに弱点が残ります。人は休みなく画面を見続けることができず、夜間・休日の対応は担当者に重くのしかかります。大量の警告のなかでは重要な兆候を見落としやすく(アラート疲れ)、障害が起きてから原因を特定するにも時間がかかります。例えば、深夜2時、監視画面に数十件のアラートが同時に点灯する。どれが本当の障害で、どれが誤検知(ノイズ)なのか。疲弊したオペレーターが判断に迷う間にも、サービスは止まり続ける。こうした場面は、どの企業の運用現場でも起こり得ます。

つまり「人手頼み」の運用には、人材の「数」と、人による監視の「質」という二重の限界があるのです。

参考:IPA「DX動向2024―深刻化するDXを推進する人材不足と課題」 2025年7月

参考:IPA「DX動向2025―AI時代のデジタル人材育成」 2025年10月

参考:経済産業省 「IT人材需給に関する調査」

従来の「ルール頼み」の自動化でも追いつかない

「人手が限界なら、ツールで自動化すればよいのではないか」。そう考えたくなりますが、従来の自動化には構造的な限界があります。

これまでの監視ツールや自動化の多くは、人があらかじめルールやしきい値を決めておく方式です。判定の基準を人が設計する以上、システムが大きく複雑になるほどルールの手入れに追われます。条件を緩めれば見逃しが増え、厳しくすれば誤検知(ノイズ)が増えます。そのさじ加減の調整が、運用者の手間としてのしかかります。

とりわけAIインフラでは、この方式の無理が目立ちやすくなります。GPUサーバーでは、CPUやメモリといった従来の定番項目に加えて、GPU使用率・専用メモリ・温度をGPU専用の仕組みで別途監視する必要があります。さらに推論の仕組みはコンテナやベクトルデータベースといった部品の積み重ねで動いており、どこか1つの不調が別の場所の症状として現れます。何をどう見張るかを、人手のルールで設計し切ること自体が難しくなっているのです。

従来型の弱点は、大きく3つに整理できます。

監視の分断

ツールごとに監視が分かれ、大量のアラートを横断して集約・優先度づけする仕組みが弱い。突き合わせ作業は結局、人の仕事になる

未知の異常に弱い

あらかじめ決めたルールが中心のため、想定していないパターンの異常は捉えにくい

先読みが苦手

異常が「起きてから」知らせる設計が多く、将来の不調を予兆の段階で察知して未然に防ぐ動きは弱い

人を増やす道も、従来型の自動化を重ねる道も、複雑化したAIインフラの運用には追いつきにくくなっています。求められているのは、人がルールを作り込み続けるのではなく、AIがデータから学んで運用を支える新しいやり方です。

AIOpsとは何か ─ AIで運用を支える新しいやり方

AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations:IT運用のための人工知能)とは、AIと機械学習をIT運用に応用し、膨大な運用データをリアルタイムに分析して運用を自動化・高度化する考え方です。調査会社のガートナーが提唱した言葉で、特定の製品ではなく、運用のあり方そのものを指す概念です。前章で見た限界を超える鍵として、注目が高まっています。

従来の運用・自動化との違い ─ ルール頼みから、AIの学習へ

もちろん、従来のIT運用にも枠組みはありました。ITILに代表されるITSM(IT Service Management:ITサービスマネジメント)のもとで、インシデント管理や問題管理といったプロセスは標準化されてきました。ただし、これらはあくまで「人が回すプロセス」の設計図です。プロセスのなかで実際に異常を検知・分析し、対応する中身は、人と人が決めたルールに頼ってきました。AIOpsはITSMを置き換えるものではなく、このプロセスの中身をAIで自動化・高度化する位置づけにあります。

従来との決定的な違いは「判定の決め方」にあります。従来型の監視は、人があらかじめルールやしきい値を決めておく方式でした。AIOpsでは、AIが運用データから平常時の状態を学習し、そこからの逸脱を自ら判断します。人がルールを作り込み続ける運用から、AIがデータから学ぶ運用へ。この転換こそが、前章で見た「ルール頼み」の限界を解く土台になります。

なお、AIと機械学習の基礎について詳しく知りたい方は、「AIと機械学習の違いとは?基礎知識から活用例まで解説」も併せてご覧ください。

AIOpsが実現する自動監視・異常検知・予防保全

AIOpsの働きは大きく3つ。前章で挙げた従来型の3つの弱点に、それぞれ正面から応えるものです。

自動監視

ツールごとに分断されていた監視データをAIが横断して収集・相関分析し、関連するアラートを1つのインシデントに集約する。ノイズが減り、本当に見るべき警告が絞られる

異常検知

機械学習で「平常時の状態」を学習し、そこからの逸脱を検知する。ルールで想定していない未知のパターンにも気づきやすく、原因箇所の絞り込み(根本原因分析)まで自動で進む

予防保全

トレンド分析でリソース枯渇や性能低下の兆候を先読みし、障害が起きる前に対処する。既知の障害なら、決められた回復手順(Runbook)による自動対応まで完結する


これらの働きは、監視画面を見続ける負担や、障害のたびに原因を探し回る負担といった、人手の重い部分をAIが肩代わりすることでもあります。障害対応の指標であるMTTR(Mean Time To Repair:平均修復時間)の短縮も期待できます。

ただし、こうした仕組みを自社で構築して運用し続けるには、相応の準備と体制が必要です。

人材不足時代のデータセンター運用戦略 ─ 自社で持つか、委託か

ここまでの整理を踏まえると、残る問いはシンプルです。運用の仕組みを自社で持つか、それとも外部に委ねるか。この章では、その判断基準を整理します。

自社運用 vs マネージドサービス委託の判断基準

自社で持つ場合の負担から確認します。24時間365日の運用体制を自社で維持するには、交代制を前提に複数名の専任要員を確保し、育成し続けなければなりません。担当者の退職や異動でノウハウが失われるといった、属人化のリスクもつきまといます。

前章で見たAIOpsも、導入すれば終わりではありません。各システムから監視データを集めて整え、AIを自社の環境に合わせて調整し、動かし続ける必要があります。人材が限られるなか、この仕組みをゼロから構築・維持する難易度は高いといえます。

もちろん、専任の運用チームを持ちノウハウを自社の強みとして育てたい企業であれば、自社運用も合理的な選択です。一方で、限られた人員が本来の業務と運用を兼ねている企業ほど、ここまで見てきた負担は重くなります。

そうした企業にとっては、保守運用を専門事業者へ委託し、人的資源をコア業務へ振り向けることが戦略的な選択肢になります。

自社運用とマネージドサービス委託の比較

自社運用とマネージドサービス委託の比較

委託で生まれた時間の使い道を、2つの方向で挙げてみます。

システム改善・ガバナンス業務(運用の延長線上にある上流業務)

アーキテクチャの見直しや改善提案、AIOps自体のチューニングと誤報の分析、障害の事後分析(ポストモーテム)と再発防止策の設計。AIが検知・一次対応した後の「なぜ起きたか」を考えるのは、人の領域として残る

DX・AI戦略業務(経営・事業寄りの戦略業務)

DX戦略やAI活用の企画、セキュリティポリシーの策定・見直し、ベンダー評価やコスト最適化。「運用を回す」仕事から、「事業をどう変えるか」を考える仕事へ軸足を移せる

なお、AIガバナンスや監査対応の整備について詳しく知りたい方は、「RAGの情報漏洩はどこで防ぐ?『作り方』と『預け先』で決まるAIガバナンス」も併せてご覧ください。

運用を「自社で抱え込まず」に回す ─ マネージドサービスの活用

委託を選ぶ場合に大切なのは、「何をどこまで任せられる委託先か」を見極めることです。確認したい要件は、少なくとも次の2つです。

24時間365日の監視体制

死活監視だけでなく、OS・リソース・プロセス・ログ監視まで、監視の層を網羅していること

障害時の一次対応・現地対応の代行

事前に合意した手順書に基づく定型対応に加えて、遠隔からの指示でその場の作業を依頼できる柔軟さがあること

この2つがそろえば、人材確保の悩みや、人手による監視・障害対応の負担を大きく減らせます。

なお、AIOpsの導入は、委託とは別に検討する取り組みです。まず日々の監視や障害対応をマネージドサービスで安定させ、そのうえで自動化の仕組みには段階的に取り組む。人材が限られる企業には、この組み合わせが現実的な進め方になります。

インフラをクラウドとハウジングのどちらに置くかという配置の議論については、「『すべてクラウド』はもう古い?コスト高騰で選択される『戦略的ハイブリッド回帰』」で扱っています。

本記事が見てきたのは、その「置いた後」をどう運用するかという問いです。

AIインフラの運用は「人を増やす」から「AIと委託で支える」へ

本記事では、AIインフラの運用が限界を迎えつつある背景と、解決の方向を整理しました。運用を担う人材は確保しにくくなり、人手による監視には「数」と「質」の両面で限界があります。人がルールを作り込む従来の自動化も、複雑化したシステムには追いつきません。そこで鍵になるのが、AIがデータから学んで運用を支えるAIOpsと、監視や障害対応を専門事業者に任せる運用委託という2つの選択肢です。障害対応に追われる後追いの運用から抜け出し、空いた人的資源をシステム改善・ガバナンス業務やDX・AI戦略業務へ振り向けること。それが人材不足時代の運用の要点です。

こうした委託の受け皿の一例が、STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」が提供するマネージドサービスです。次のようなサービスを、必要に応じてオプションとして選び、組み合わせて利用できます。

監視サポート

専門技術員が24時間365日体制で、死活監視からOS・リソース・プロセス・ログ監視までを担う

リモートハンズ

遠隔指示ツールや電話で通話しながら、現地の専門技術員へ機器の確認や電源操作などの作業をその場で依頼できる

一次対応・障害復旧の代行

運用手順書に基づく一次対応(ワンタイムオペレーション)に加え、障害の切り分け・予備機への切り替え・修理手配・リストアまでを担う

監視や障害対応の仕組みを自社でゼロから構築・維持する負担ごと預けられるため、運用チームを抱え込まずに安定した運用体制を整えられます。

明日から動き出すためのステップは、次の3つです。

  • 自社の運用コストと、夜間・休日のエンジニアの稼働実態を可視化する
  • いまの運用業務のうち、AIで自動化できる部分と委託できる部分を棚卸しする
  • 任せたい業務をPowericoのマネージドサービスに委託できるか、相談してみる

データセンターの運用体制や人材確保にお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。

この記事で紹介しているサービス

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

よくあるご質問

Q1.AIOpsは、従来の監視ツールや自動化と何が違うのですか?

A. 従来の監視・自動化は、人があらかじめ決めたルールやしきい値で判断するため、システムが複雑になるほどルールの維持や誤検知に追われます。AIOpsは、AIが平常時の状態をデータから学習して異常を見抜き、アラートの集約から原因の絞り込みまでを素早く進めます。人がルールを作り込み続けなくても、変化に追従できる点が違いです。

Q2.手順書にない作業や自社固有の対応も、外部に任せられますか?

A. 可能です。リモートハンズを利用すれば、遠隔指示ツールや電話で通話しながら、現地の専門技術員へ機器の確認や電源操作などの作業をその場で依頼できます。状況に応じてリアルタイムに指示できるため、自社固有の突発対応にも柔軟に対応できます。定型の一次対応は、事前に取り決めた運用手順書に基づくワンタイムオペレーションで任せられます。

Q3.運用を外部に委託すると、自社にノウハウが残らなくなりませんか?

A. 委託しても、運用手順書(Runbook)はお客さまと取り決めて作るため、自社の運用方針はむしろ整理・可視化されます。任せるのは継続的な監視や定型の一次対応で、自社はシステムの設計や改善といった上流の判断に専念できます。ノウハウを失うのではなく、人手を高付加価値な業務へ振り向けられます。