AI開発環境はどう構築すべき?
クラウド・オンプレの比較とコストを抑える選定ポイント

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課題解決のためのノウハウ

AI開発の成否を分けるのは、大量の計算処理を支える「開発環境」の選定です。クラウド型とオンプレミス型、それぞれにメリット・デメリットがあり、開発のフェーズや予算、セキュリティ要件によって最適な選択は異なります。本記事では、AI開発環境の主な構築手法を比較し、GPUサーバーの調達コストや電気代、冷却設備といった見落としがちなコスト要素を解説します。

AI開発環境の主な構築手法:クラウドとオンプレミスの違い

クラウドとオンプレミス、AI開発環境としてどちらを選択するかは、それぞれの違いを理解しておかなければなりません。ここでは、それぞれの特徴を見た上で、選択のポイントを解説します。

迅速なスタートとコスト管理を両立する「クラウド型」

クラウド型AI開発環境は、資産を持たずに即座に開発を開始できる柔軟性が最大の魅力です。GPUサーバーなどの高額な機材を購入する必要がなく、必要なリソースを必要な期間だけ利用できるため、初期投資を大幅に抑えられます。

加えて、最新のGPUモデルへのアクセスが容易な点も見逃せません。オンプレミスでは数年単位での設備更新が前提となりますが、クラウドであれば最新世代のGPUを選択できるため、技術進化に柔軟な対応が可能です。

また、開発規模の変動に応じてスケールアップ・ダウンが容易で、プロジェクトの初期段階や検証フェーズに適しています。ただし、海外パブリッククラウド(AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど)では従量課金制が基本のため、データ転送量や利用時間によって予期せぬコスト膨張のリスクがあります。

高いカスタマイズ性と長期的なTCOに優れた「オンプレミス型」

オンプレミス型は、自社専用のGPU構成やネットワーク設定を自由にカスタマイズでき、機密性の高いデータを自社専用環境で扱いたい企業に適しています。

ハードウェアの選定から構成まで完全にコントロールできるため、特定のAIモデルに最適化した環境を構築できる点は、クラウドでは実現困難な大きなアドバンテージといえるでしょう。

特に、AI開発が長期的かつ高稼働率で継続するプロジェクトでは、初期投資は大きいものの、中長期的なトータルコスト(TCO)を抑えられる可能性もあります。

また、データの外部流出リスクを最小化したい金融機関や研究機関などでは、オンプレミス型を選択するケースが多いようです。ただし、GPUサーバーの購入費用、設置スペースの確保、電力・冷却設備の増強、専門人材の確保など、導入のハードルが高くなる点には注意が必要です。

効率を最大化する「ハイブリッド環境」という選択肢

クラウド型とオンプレミス型の長所を組み合わせたハイブリッド環境も有力な選択肢となります。たとえば、開発・検証フェーズは手軽なクラウドで行い、大規模な学習フェーズは物理サーバーで実行するといった柔軟な使い分けが可能です。

その結果、プロジェクト初期の不確実性が高い段階ではクラウドでコストを抑え、本格稼働が確定してからオンプレミスへ移行することにより、無駄な投資を回避できます。

また、一部のデータやモデルはセキュリティ要件の高いオンプレミス環境で管理し、その他の処理はクラウドで行うという運用も可能です。ハイブリッド環境を成功させる鍵は、物理サーバーとクラウドを低遅延かつセキュアに接続できる閉域ネットワーク環境の構築にあるといえるでしょう。

以上のように、スピード重視であればクラウド型、長期的な開発環境が必要であればオンプレミス型が向いています。また、大規模な開発になると状況に応じ双方のメリットを生かしたハイブリッドも選択肢として検討する必要があるでしょう。

クラウドとオンプレミスの使い分けについて詳しく知りたい方は、「オンプレミスとクラウドの違いとは?メリット・デメリットと移行の流れをチェック」もあわせてご確認ください。

AI開発環境構築における「コスト」の正体

一般的にAI開発環境を構築するには多くの予算を必要とします。そのため、しっかりとした予算のシミュレーションが欠かせません。ここでは見落としがちなコストも含め、予算をシミュレーションする際のポイントを解説します。

GPUサーバーの調達コストと為替・従量課金リスク

AI開発に欠かせない高性能GPUサーバーは、1台あたりの購入費用が非常に高額です。オンプレミスで調達する場合、この初期投資が大きな負担となります。

一方、クラウドを利用する場合は初期投資を回避できますが、海外パブリッククラウドでは為替変動により円建てコストが変動するリスクがあります。

円安局面では、利用料金が大幅に増加する可能性があり、年間予算の策定が困難になるケースもあるため、為替リスクへの対策は重要な検討事項です。

また、データ転送量や利用時間に応じた従量課金により、「予期せぬ請求」が発生するケースも少なくありません。特に、大容量のデータセットを頻繁にアップロード・ダウンロードする場合や、長時間のモデル学習を行う場合は、コストが急激に膨らむ可能性があります。

見落としがちな「電気代」と「冷却設備」の維持費

高性能なGPUサーバーは膨大な電力を消費し、強力な排熱を伴います。これらを自社ビルで運用する場合、電気代が想定以上に高額になるケースも少なくありません。

特に、複数のGPUを搭載したサーバーでは、1ラックあたりの消費電力が10kW以上に達することもあり、一般的なオフィスビルの電気容量では対応しきれない場合もあります。

さらに、一般的なオフィス用空調では冷却が追いつかず、サーバーの性能低下や故障のリスクが高まります。そのため、専用の精密空調設備や冷却システムの導入が必要となり、その設備投資と運用コストも無視できません。

データセンターを利用する場合、これらの電力・冷却インフラはすでに整備されており、スケールメリットによる効率的な運用が可能です。

構築・運用にかかる人的リソースと工数の削減

AI開発環境の構築には、複雑なネットワーク設計、OS・ミドルウェアのインストールと設定、セキュリティ対策など、専門的な知識と工数が必要です。

これらを自前で行う場合、IT人材の確保と育成にコストがかかるうえ、運用開始後も障害対応、セキュリティパッチの適用、バックアップ管理などの継続的な作業が発生します。

電力・冷却・設置場所などオンプレミスサーバー特有の課題

自社オフィス内にAI環境を構築する際に直面する物理的な制約として挙げられるのは、高負荷・高熱のほか、電力キャパシティと床耐荷重などです。具体的にどのような制約なのかについて解説します。

一般的なオフィス環境で課題となる「高負荷・高熱」問題

AIサーバー、特にGPUを多数搭載したサーバーが発する熱量は非常に高く、一般的なオフィス用空調では冷却不足により性能低下や故障を招くリスクがあります。

通常のオフィス用空調は、人が快適に過ごせる温度を保つことが目的であり、サーバーのような高発熱機器の冷却を想定していません。そのため、AI環境の構築には専用の冷却設備が必須となります。

GPUサーバーの安定稼働には、データセンター級の冷却能力を持つ精密空調が欠かせません。これを自社で導入するには、空調設備の増強工事や電気容量の見直しが必要となり、かなり高額な投資となってしまう可能性もあります。

電力キャパシティと床耐荷重の壁

GPUサーバーは1ラックあたりの消費電力が極めて高く、一般的なオフィスビルの電気契約容量を容易に超える可能性があります。増設には、電力会社との契約変更や受電設備の増強が必要となり、時間とコストがかかってしまうでしょう。

また、高密度のサーバーラックは重量も大きく、オフィスビルの床耐荷重を超える場合、床の補強工事が必要です。これらの物理的制約により、自社オフィス内でのAI環境構築が困難なケースも少なくありません。

以上のように、単純にオンプレミス、クラウドのどちらというだけではなく課題点も含めた選択をすることで、効果的な開発環境の構築が実現します。

GPUサーバーの運用について詳しく知りたい方は、「GPUサーバーとは?GPUサーバーのメリットや高密度サーバーのデータセンター運用のポイントを解説」もあわせてご確認ください。

STNetが提案する「ハイブリッド」ソリューション

STNetでは、クラウドの利便性とデータセンターの堅牢性を組み合わせる「ハイブリッド」ソリューションを提案しています。ここでは、STNetが提供するおすすめのクラウドサーバーサービスとデータセンターについて、それぞれの特徴、メリットを解説します。

AI開発を支える周辺システムに適したクラウド基盤「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」

AI開発ではGPUによる学習・推論処理だけでなく、データの前処理や管理、学習ジョブの制御、推論APIの提供、運用・監視といった周辺システムも重要な役割を担います。「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」は、こうしたAI開発を支えるCPUベースのシステムを安定的に運用する基盤として活用できる国産クラウドサービスです。円建ての定額料金制を採用しているため、海外パブリッククラウドで課題となりやすいや従量課金によるコストの不確実性を抑え、予算管理しやすい環境を構築できます。また、データ転送料が無料のため、追加コストを気にせず利用可能です。

高負荷サーバーを支える国内最高水準のデータセンター「Powerico(パワリコ)」

STNetのデータセンターPowericoは、1ラックあたり最大定格21kVAの高い電源供給力を誇り、高密度のGPUサーバーの設置に最適です。

一般的なデータセンター(4〜8kVA程度)では対応できない高負荷サーバーも、Powericoなら安定稼働が可能です。

また、最新の冷却技術により高い冷却性能を実現し、サーバーの性能を最大限に引き出します。さらに、地震リスクの低い香川県という立地により、BCP対策としても優れた選択肢となります。

データセンターの設備について詳しく知りたい方は、「データセンターの設備と構成要素を解説!基本的な設備から最新動向まで」もあわせてご確認ください。

クラウドと物理サーバーを構内LANでつなぐ「真のハイブリッド」

Powerico内に設置した物理サーバーと同一施設内のシステムをコネクティビティサービスで接続できるため、低遅延かつセキュアなハイブリッド環境を構築できます。これにより、機密データは物理サーバーで管理しながら、その他の処理は外部インターネットを経由せず安全に連携するといった運用が可能です。

外部インターネットを経由しないため、セキュリティリスクを最小化しながら、高速なデータ転送が実現できます。この独自性が、STNetのハイブリッドソリューションの大きな強みです。

社会課題への対応:再エネ活用による脱炭素AI開発

電力を大量消費するAI開発だからこそ、環境への配慮は十分に考慮しなくてはなりません。ここではAI開発と環境への配慮を両立させる再エネ活用による脱炭素AI開発について解説します。

サプライチェーンが求める「グリーンなIT基盤」への対応

企業の脱炭素化が取引条件となるなか、AI開発における電力消費のクリーン化は急務です。特に大手企業のサプライチェーンに属する企業では、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量の国際的な算定・報告基準)におけるScope3(サプライチェーン全体の間接排出)の削減が求められるようになっています。そうした意味でAI開発に使用する電力の再生可能エネルギー化は重要な対応策となるでしょう。

おすすめはPowericoのように再生可能エネルギーを導入しているデータセンターの選択です。自社での大規模な設備投資を必要とせずAI開発の脱炭素化を実現でき、企業のESG経営推進に貢献します。

脱炭素化について詳しく知りたい方は、「脱炭素化に挑戦する企業の取り組みとは?CO2削減を目指した具体的施策」も併せてご確認ください。

AI開発環境の構築にはクラウドとデータセンターのハイブリッド活用がおすすめ

AI開発環境の構築は、将来の拡張性とコスト構造を正しく理解することが成功への近道です。一般的にはクラウド型、オンプレミス型のいずれかで開発環境を構築します。

クラウド型は初期投資を抑えて迅速にスタートできる一方、従量課金や為替変動のリスクがあります。これに対しオンプレミス型は高いカスタマイズ性と長期的なTCO削減が期待できますが、電力・冷却設備の投資や設置場所の制約が課題です。そこで、それぞれの長所を組み合わせたハイブリッド環境が多くの企業にとって最適解となります。

STNetの「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」は、円建て定額料金により予算管理が容易な国産クラウドサービスです。

また、データセンター「Powerico(パワリコ)」は、1ラックあたり最大定格21kVAの高い電源供給力と最新の冷却技術により、高負荷GPUサーバーの安定稼働を実現します。さらに、両者を構内LANで接続することで、低遅延かつセキュアな真のハイブリッド環境を構築できます。

そして、有料オプションとしてご用意している再生可能エネルギーを活用すれば、脱炭素化にも対応可能です。AI開発環境の構築をご検討の際は、ぜひSTNetにお気軽にお問い合わせください。

この記事で紹介しているサービス

STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]

一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えた国産クラウドサービスです。

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

よくあるご質問

Q. AI開発環境はクラウドとオンプレミス、どちらがよいか

A. 開発のフェーズや予算、セキュリティ要件によって最適な選択は異なります。クラウド型は初期投資を抑えて迅速にスタートでき、開発規模の変動に応じた柔軟なスケーリングが可能です。オンプレミス型は高いカスタマイズ性と長期的なTCO削減が期待できますが、電力・冷却設備の投資や設置場所の制約があります。多くの企業にとって、開発・検証はクラウド、大規模学習は物理サーバーといったハイブリッド環境が最適解となります。

詳しくは「AI開発環境の主な構築手法:クラウドとオンプレミスの違い」をご覧ください。

Q. AI開発でクラウドを使うとコストが高くならないか

A. 海外パブリッククラウド(AWS、Azure、Google Cloudなど)では従量課金制が基本のため、データ転送量や利用時間によって予期せぬコスト膨張のリスクがあります。また、為替変動により円建てコストが変動する可能性もあります。この課題に対し、国産クラウドの定額制サービスとGPUサーバーの安定稼働を実現する「Powerico(パワリコ)」を組み合わせることで、為替の影響を受けにくく予算管理が容易な環境を構築できます。

詳しくは「GPUサーバーの調達コストと為替・従量課金リスク」をご覧ください。

Q. 自社オフィスにAIサーバーを設置する場合の課題は

A. GPUサーバーは膨大な電力を消費し、強力な排熱を伴います。一般的なオフィス用空調では冷却不足により性能低下や故障のリスクがあり、専用の精密空調設備が必要です。また、1ラックあたりの消費電力が極めて高く、一般的なオフィスビルの電気契約容量を超える可能性があります。さらに、高密度のサーバーラックは重量も大きく、床耐荷重を超える場合は補強工事が必要です。これらの物理的制約により、自社オフィス内での構築が困難なケースも少なくありません。

詳しくは「電力・冷却・設置場所などオンプレミスサーバー特有の課題」をご覧ください。

Q. ハイブリッド環境のメリットとは

A. ハイブリッド環境では、開発・検証フェーズは手軽なクラウドで行い、大規模な学習フェーズは物理サーバーで実行するといった柔軟な使い分けが可能です。また、機密データはセキュリティ要件の高いオンプレミス環境で管理し、その他の処理はクラウドで行うという運用も考えられます。STNetのソリューションでは、Powerico内の物理サーバーと「STクラウドFLEX」を構内LANで直接接続できるため、低遅延かつセキュアな環境を構築できます。

詳しくは「STNetが提案するAI開発に最適な『ハイブリッド』ソリューション」をご覧ください。

Q. AI開発環境で脱炭素化に対応する必要はあるのか

A. はい、重要性が高まっています。企業の脱炭素化が取引条件となる中、AI開発における電力消費のクリーン化は急務です。特に大手企業のサプライチェーンに属する企業では、Scope3(サプライチェーン全体の間接排出)の削減が求められます。Powericoのように再生可能エネルギーを導入しているデータセンターを選ぶことで、追加投資なしにAI開発の脱炭素化を実現でき、企業のESG経営推進に貢献できます。

詳しくは「社会課題への対応:再エネ活用による脱炭素AI開発」をご覧ください。