GPUとインフラの基礎知識:AI活用を支える企業インフラの要点を解説

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生成AIの普及やDX推進を背景に、企業のIT基盤において「GPU」の重要性が急速に高まっています。しかしGPUとはどのようなものか、CPUとどう違うのか、どのようなインフラが必要なのかを正確に理解できている担当者はまだ多くないかもしれません。本記事では、GPUの基礎知識からインフラ要件、導入時の選択肢まで、企業担当者が知っておくべきポイントをわかりやすくお伝えします。AI活用のためのインフラ戦略を見直す際の参考にしてください。

GPUとは?CPUとの違いから理解する基礎知識

個人・企業を問わず、昨今のAI活用ブームを背景に「GPU」という言葉が急速に浸透しているものの、その本質を正しく理解しなければ、適切なインフラ選定も困難です。ここではGPUの定義と、CPUとの役割の違いを整理します。

GPUとは何か

GPUはGraphics Processing Unitの略で、もともと3Dグラフィックス描画に特化したプロセッサとして開発された演算装置です。その最大の特徴は、数千のコアを搭載し、大量の演算を同時並列で処理できる点にあります。グラフィックス用途で培われたこの並列処理能力が、AI学習における行列演算に非常に適していることから、現在では画像認識・自然言語処理・科学技術計算など、幅広い分野で活用されています。

GPUとCPUの役割の違い

GPUは「数千の小型コアで単純な処理を大量に同時並行で行う」設計であるのに対し、CPUは「少数の高性能コアで複雑な処理を順番に行う」設計です。日常の業務システムや基幹システムにはCPUが適していますが、AI・機械学習モデルのトレーニングや推論処理のように、大量の行列演算を繰り返す処理にはGPUの方が圧倒的に効率的です。

CPUとGPUの違いについて詳しく知りたい方は、「CPUとGPUの違いを解説!情報システム部門のための戦略的選択ガイド」も併せてご覧ください。

なぜ今、企業にとってGPUが重要なのか

生成AI・大規模言語モデル(LLM)の学習や推論処理には膨大な並列演算が不可欠で、CPUだけでは処理速度・コスト双方の面で対応が難しくなっています。製造業のシミュレーション、金融のリスク計算、医療画像の解析など、AIを活用するあらゆる業種でGPUへの需要が広がっているのはそのためです。

さらに、AIモデルの性能はパラメータ数を増やすほど向上するという「スケーリング則」が広く知られており、大規模モデルを扱うほど必要な計算資源が指数関数的に増大します。

自社でAIを直接開発しないから知らなくてもよいわけではありません。ビジネスでAI活用をする際、クラウドサービスやSaaS型AIツールのバックエンドで動いているのがGPUです。そのため、AI活用の恩恵を受けるためにも、GPUの基礎知識は企業のIT担当者にとって必ず知っておくべきものと言えるでしょう。

GPUサーバーの基本構成とインフラ要件

GPUを企業で活用するには、単にGPUカードを用意するだけでは不十分です。GPUサーバーには通常のCPUサーバーとは大きく異なる特別なインフラ要件が伴います。

GPUサーバーとはどういうものか

GPUサーバーは、GPUを複数枚搭載し、AI学習・推論、レンダリング、科学技術計算などの高負荷な並列処理に特化したサーバーです。通常のCPUサーバーとは設計思想が異なり、接続バス(NVLink、PCIeなど)やVRAM(ビデオメモリ)容量が性能に直結します。

主な用途として挙げられるのは、AIモデルの学習(トレーニング)・推論処理、3DCGや映像のレンダリング、流体・構造シミュレーション(CFD)、創薬や量子化学計算などです。特に近年はChatGPTに代表される生成AI・LLMの急速な普及により、大規模モデルの学習・推論のためにGPUサーバーを導入・検討する企業が著しく増えています。

GPUを活用する処理は、大きく「学習フェーズ」と「推論フェーズ」に分けられます。学習フェーズとは、大量のデータをもとにAIモデルのパラメータを調整し、モデルを構築する工程です。長期間にわたってGPUをほぼフル稼働させ続ける場合もあるため、安定した大電力の供給と高い冷却能力が求められます。

一方、推論フェーズはすでに完成したモデルをユーザーの入力に対して実行する工程で、即応性(リアルタイム性)とコスト効率が重視されます。インフラを設計するには、どちらのフェーズを主な用途とするかを事前に明確にしておかなければなりません。

消費電力と冷却設備の課題

GPUサーバー導入時に見落とされがちなのが消費電力の問題です。一般的なCPUサーバーの消費電力が1台あたり数百W程度であるのに対し、高性能GPUサーバーではシステム全体で数kWから10kW超の消費電力となり、従来のサーバーとは桁違いの電力需要が生まれています。

このため、既存のサーバールームや一般的なデータセンターでは電力供給が追いつかず、設置先の見直しが必要になるケースも出ています。冷却面でも、従来の空冷方式では高発熱のGPUサーバーへの冷却が限界を迎えつつあり、液冷(水冷)システムの導入が広がっています。

なお、消費電力の規模は用途によって一定ではありません。学習フェーズでは複数枚のGPUを長時間フル稼働させるため、電力消費はとりわけ高くなるのが一般的です。推論フェーズは学習に比べてGPU負荷が低い場合もありますが、24時間365日の常時稼働が前提となるためランニングコストは積み上がりやすい傾向があります。用途に応じた電力計画と、それに対応できる設備を持つ設置先の選定が重要です。

GPUサーバーの消費電力・冷却技術について詳しく知りたい方は、「GPUサーバー消費電力問題解決のための冷却システムとデータセンター選定ポイント」も併せてご覧ください。

ネットワーク帯域とストレージ

GPUサーバーの性能を最大限に発揮するには、ネットワークとストレージも併せて設計しなければなりません。GPUサーバーでAI学習を行う際には、複数のGPU間やストレージとの間で大量のデータをやりとりするため、高速ネットワーク(InfiniBandや高速イーサネット)と高スループットなストレージが求められます。ネットワークがボトルネックになるとGPUの性能を十分に引き出せません。そのため、GPUサーバーを導入する際は、GPU単体の仕様だけでなくインフラ全体のバランスを見据えた設計が必要となります。

データセンターの基本について詳しく知りたい方は、「データセンターとは?基礎知識からクラウドとの比較、導入メリットまで徹底解説」も併せてご覧ください。

GPUインフラの導入形態──オンプレミス vs クラウド

GPUインフラを企業が導入する際の大きな選択肢は「オンプレミス」と「クラウド(GPUクラウド)」のふたつです。それぞれの特徴を理解したうえで、自社の用途・規模・予算に合わせた選定が求められます。

オンプレミス型GPUサーバーの特徴

オンプレミスはGPUサーバーを自社(またはデータセンター)に設置し、専有環境として運用する形態です。パフォーマンスの安定性が高く、データの外部持ち出しを制限したい機密情報を扱う場合などセキュリティ要件の厳しいシーンで強みを発揮します。課題は、初期投資が大きく、導入まで数週間〜数ヵ月を要する点です。

クラウド型GPUの特徴

クラウド型はGPUリソースをインターネット経由で利用するモデルです。初期費用を抑えて即時利用を開始できる点が最大のメリットで、需要の変動に応じてリソースを柔軟に増減できます。課題は、長期・大規模な利用では運用コストが膨らむ場合があり、クラウドベンダーのメンテナンスや障害の影響を受ける点です。

vGPU(仮想GPU)という選択肢

近年注目されているのが、1枚の物理GPUを複数の仮想マシンで共有する「vGPU(仮想GPU)」技術です。リソースの効率的な活用が可能で、複数の開発チームや用途にGPUを柔軟に割り当てられます。クラウド環境やオンプレミスのプライベートGPUクラウドでも活用が広がっています。

オンプレミスとクラウドの使い分けの指針

オンプレミスとクラウド、どちらの形態を選ぶかは、利用目的と規模によって異なります。ここでは判断の目安となる観点を見てみましょう。

オンプレミスが有利なケース

常時・大規模なAI学習を継続的に行う場合は、TCO(総所有コスト)の観点でオンプレミスが有利になるケースが多い傾向があります。

クラウドが適するケース

短期集中のプロトタイプ開発や、需要変動が大きい推論処理にはクラウドが向いており、素早い立ち上げが可能です。

ハイブリッド活用

オンプレミスとクラウドを用途に応じて使い分けるハイブリッドクラウド構成を採用する企業も増えています。

いずれの形態においても、初期費用だけでなくランニングコストも含めたTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)の視点で比較することが大切です。特に大規模な学習処理を継続的に行う場合は、クラウドの従量課金が積み上がりやすいため、長期コストを試算したうえで判断することをおすすめします。

TCO戦略について詳しく知りたい方は、「クラウド時代のTCO戦略とは?IT投資を最適化する総所有コストの理解と管理」も併せてご覧ください。

GPUインフラに対応したデータセンターの選び方

GPUサーバーをデータセンターに設置する場合、従来の汎用データセンターではなく、GPU専用の「高電力データセンター」に対応した施設の選定が欠かせません。ここでは選定時に確認すべきポイントを整理します。

高電力データセンターが必要な理由

一般的なデータセンターの電力容量は1ラックあたり4kVA〜8kVA程度です。しかし、高性能GPUサーバーには20kVA程度の電力供給が必要となるケースもあり、従来の設計では対応できない施設も少なくありません。現状、高電力GPUサーバーに対応できるデータセンターは少数に限られており、選定が難航するケースも出てきています。

令和7年度情報通信白書によれば、データセンターサービスの市場規模は2028年に5兆812億円に達すると予測されており、市場が急拡大する一方でGPU対応施設は不足しているのが実態です。

参考:令和7年度情報通信白書|総務省

GPUサーバー設置に必要なデータセンタースペック

GPUサーバー向けデータセンターを選ぶ際に確認すべき主要ポイントとしては次のようなものが挙げられます。

ラックあたりの供給電力

20kW〜30kW級の電力が求められるケースもあるためGPUサーバーの電力要件を満たせるか事前に確認が必要です。

冷却方式

空冷・液冷(水冷)への対応状況を確認します。最新の高電力GPUサーバーには液冷対応が求められるケースが増えています。

床荷重

GPUサーバーは重量が大きいため、1t/m²以上の床荷重耐性が必要です。

ネットワーク接続性

AI学習・推論処理のデータ転送を支える、高速・低遅延の回線環境が整っているかを確認します。

電力冗長性・BCP対応

障害時や災害時にもシステム継続稼働が可能な電力冗長性と事業継続計画(BCP)対応の有無を確認します。

上記に加え、学習フェーズと推論フェーズでは求められるインフラ要件が異なる点にも注意が必要です。学習フェーズでは高い電源容量と冷却能力が最優先となる一方、推論フェーズでは24時間稼働を支える電力冗長性や、ユーザー数の増加に合わせたスケールアウトへの対応力が求められます。データセンターを選定する際は、現在の用途だけでなく、将来の用途変更や機器増設も見据えた拡張性を備えているかどうかも確認しておくとよいでしょう。

AI技術が急速に進化するなかでのデータセンター活用について詳しく知りたい方は、「AI時代のデータセンター活用戦略~企業競争力を高めるインフラ選択のポイント~」も併せてご覧ください。

GPUインフラへの理解が企業の競争力を左右する

GPUはAI・機械学習・シミュレーションなど、今後の企業経営に直結する処理の中核を担うプロセッサです。その活用には、GPUサーバー固有の高電力・高冷却要件への対応、オンプレミスとクラウドの適切な使い分け、そして高電力データセンターの選定が欠かせません。自社のニーズと照らし合わせながらインフラ戦略を整理し、信頼できるパートナーとともに最適な環境を構築することが、AI時代を乗り切る第一歩となるでしょう。

GPUインフラは一度構築して終わりではなく、GPU技術の進化やAIモデルの大規模化に伴い、継続的な見直しが求められます。現状のニーズに応えながら将来の拡張性も見据えた柔軟なインフラ設計が、企業のデジタル競争力を左右します。まずは自社の利用シナリオを整理し、専門知識を持つデータセンター・クラウド事業者に早めに相談するのがおすすめです。

STNetでは、GPUサーバーを含む高密度サーバーの設置に対応したデータセンター「Powerico(パワリコ)」を提供しています。1ラックに機器定格21kVAまでの電力供給を行えるため、高密度GPUサーバーにも対応可能です。

24時間365日体制の専門技術員による監視・運用サポートとともに、安定したGPUサーバー運用環境を提供しています。GPUサーバーの設置先やデータセンター選定でお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事で紹介しているサービス

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自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

よくあるご質問

Q. GPUとCPUはどう違うのですか?

A. CPUは少数の高性能コアで複雑な処理を順番に実行するのに対し、GPUは数千の小型コアで大量の単純演算を同時並列で処理する設計です。AIモデルのトレーニングや画像処理など、膨大な並列演算が求められる処理にはGPUが圧倒的に効率的といえます。日常の業務システムにはCPUが向いていますが、生成AIを社内で活用するにはGPUが不可欠です。

詳しくは「GPUとは?CPUとの違いから理解する基礎知識」をご覧ください。

Q. GPUサーバーを社内に設置できますか?

A. 技術的には可能ですが、最新の高性能GPUサーバーは1台あたり10,000W以上の電力を消費するケースがあり、一般的なサーバールームでは電力容量や冷却能力が不足する可能性があります。社内設置の場合は電気設備の増強や冷却設備の改修が必要になるため、高電力対応のデータセンターへのコロケーション設置やクラウドGPUの活用も合わせて検討することをおすすめします。

詳しくは「GPUサーバーの基本構成とインフラ要件」をご覧ください。

Q. GPUはオンプレミスとクラウドのどちらで使うべきですか?

A. 用途や規模によって最適解は異なります。AI学習を長期・大規模に継続する場合はオンプレミスのTCOが有利なケースが多く、短期間のプロトタイプ開発や需要変動が大きい推論処理にはクラウドが適しています。また、両者を組み合わせたハイブリッドクラウド構成を採用する企業も増えており、まずは自社の利用目的と予算を整理したうえで比較検討することが重要です。

詳しくは「GPUインフラの導入形態──オンプレミス vs クラウド」をご覧ください。

Q. GPUに対応したデータセンターを選ぶ際のポイントは?

A. GPUサーバーは一般のサーバーより消費電力・発熱量が格段に大きいため、①ラックあたりの供給電力、②冷却方式(空冷・液冷対応)、③床荷重(1t/m²以上)、④高速ネットワーク接続、⑤電力冗長性・BCP対応の5点を重点的に確認してください。これらを満たせる高電力対応データセンターは現状まだ少なく、早めの調査・相談をおすすめします。

詳しくは「GPUインフラに対応したデータセンターの選び方」をご覧ください。

Q. GPU活用に向けて、まず何から始めればよいですか?

A. まずは「自社でGPUをどのような用途に使うか」を明確にすることが出発点です。AI開発なのか、シミュレーション用途なのか、利用頻度や規模によって最適なインフラ形態(オンプレミス・クラウド・コロケーション)が変わります。用途が決まったら、必要なGPUスペックと合わせてインフラ要件を洗い出し、信頼できるデータセンター・クラウド事業者に相談することをおすすめします。