データセンターのサーバーラックの規格とは?種類や選び方を解説

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AI・生成技術の普及やクラウドサービスの拡大により、データセンターへの注目が高まっています。しかし、データセンターの設備構成や最新の技術動向について、十分に理解できていない情報システム担当者の方も多いのではないでしょうか。企業のデジタル化を支えるデータセンターには、災害対策のための建築構造設備から最新のAI対応冷却技術まで、多様な設備が組み合わされています。本記事では、データセンターの基本的な設備構成、最新の技術動向、そして適切な選定基準について、企業の情報システム部門の皆さまに向けて基本知識から選定のポイントまで解説します。
データセンターの種類や選び方については、こちらでも詳しく解説しています。
データセンターは、企業の重要なITインフラを安全かつ安定的に運用するため、複数の専門設備が連携して構成されています。ここでは、データセンターを支える5つの基本設備について解説していきます。
日本は地震大国であることから、データセンターには特に高い耐震性能が求められます。耐震性能のうち、免震構造は地震の揺れを大幅に軽減する仕組みで、例えばSTNetのPowerico(パワリコ)では震度7クラスの大規模地震発生時でもサーバー階スラブ面での水平応答加速度を200gal以下まで低減できる設計となっています。さらに、浸水対策として地盤の高い立地選定や防水壁の設置、防火設備として不活性ガス消火システムの導入で、火災時にも機器への影響を最小限に抑制できます。
これらの総合的な災害対策により、企業の事業継続性を強力に支えています。
データセンターの電源設備は、24時間365日の連続稼働を実現するため、多重化された構成となっています。UPS(無停電電源装置)は停電発生時に瞬時にバッテリー電源へ切り替わり、その間に自家発電設備が起動して長時間の電力供給を維持します。
米国のデータセンター規格TIA-942では、TIER 3で72時間、TIER 4で96時間と規定されており、大規模なデータセンターでは約72時間の無給油運転が可能な設計となっています。電源系統の二重化により、一つの系統に障害が発生しても、もう一つの系統で継続して電力供給を行うことができ、基幹的なシステムの停止リスクを最小限に抑えることが可能です。
データセンターでは、サーバーなどのIT機器から発生する熱を適切に除去するため、精密な空調システムが導入されています。一般的なデータセンターでは、冷気と暖気の流れを効率的に管理するコールドアイル・ホットアイル方式が採用され、サーバーラック前面から冷気を供給し、背面から排熱を回収する構造となっています。
また、温度と湿度を一定に保つ精密空調機により、機器の安定稼働に必要な環境を24時間365日維持しています。温度センサーによる監視システムと組み合わせることで、機器の適正動作温度を自動的に管理し、突発的な環境変化にも迅速に対応できる仕組みが構築されています。
データセンターには企業の機密情報が集約されているため、多層的なセキュリティ対策が施されています。物理的なセキュリティでは、入館時の身分確認から始まり、ICカードによる認証、生体認証による個人特定を組み合わせています。
サーバールームへの入室は、前室での認証が完了するまで次の扉が開かないインターロック方式や、入室記録がなければ退室できないアンチパスバック方式が採用されています。これらのシステムにより、許可された担当者のみが入退室可能な環境を構築しています。
ネットワーク設備は単一障害点を排除するため、冗長化された構成が基本となります。複数のインターネット接続回線や異なる通信事業者による回線を確保し、一つの回線に障害が発生しても通信を継続できる設計となっています。
近年では、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどの主要クラウドサービスへの閉域接続や、マルチクラウド環境に対応したネットワーク構成が求められており、24時間365日の監視体制により安定した接続性を維持しています。
また、エッジコンピューティングの普及により、低遅延通信を実現するため、ユーザー利用拠点に近い場所でのデータ処理が可能な分散型ネットワークを構成することも必要とされています。
生成AIの普及とデジタルトランスフォーメーションの加速により、データセンター業界では従来の設備要件を大きく上回る技術革新が求められています。ここでは、2025年現在の最新設備動向について解説します。
生成AIサービスの普及により、従来のサーバーと比較して格段に発熱量の多いGPUサーバーの需要が急激に増加しています。これらの高性能サーバーは従来の空冷システムでは冷却が困難なため、冷却液を直接機器に循環させる液冷システムや、サーバー全体を冷却液に浸漬する液浸冷却システムの導入が本格化しています。
液冷技術は従来の空冷システムと比較して冷却効率が高く、データセンター全体の消費電力削減にも寄与する次世代技術として期待されています。特に、ChatGPTなどの大規模言語モデルを支えるGPUクラスターでは、従来の数倍から数十倍の発熱量に対応する必要があり、液冷システムの導入が不可欠となっています。
GPUサーバーに関して詳しく知りたい方は「GPUサーバーとは?GPUサーバーのメリットや高密度サーバーのデータセンター運用のポイントを解説」をご覧ください。
2050年カーボンニュートラル目標の達成に向け、データセンター業界でも脱炭素化への取り組みが加速しています。太陽光発電や風力発電の直接活用、非化石証書の購入による実質的な脱炭素化が進んでおり、常時再生可能エネルギー100%で運営するゼロエミッション・データセンターの開設も始まっています。
これらの取り組みにより、企業のESG経営やサステナビリティ目標達成に貢献できるデータセンターサービスが各社から提供されており、現在のデータセンターには、環境負荷の低減と安定稼働の両立が求められています。
クラウドファーストの時代において、データセンターの役割は単なるサーバー設置場所から、クラウドサービスへの安全で高速な接続拠点へと変化しています。マルチクラウド環境を活用する企業の増加に伴い、複数のクラウドサービス間を効率的に接続するネットワークハブとしての機能が求められています。
エッジコンピューティングの普及により、低遅延通信を実現するため、ユーザー利用拠点に近い場所でのデータ処理が可能な分散型データセンターの需要も高まっています。5G通信やIoTデバイスからの大量データ処理に対応するため、ネットワーク機器の高性能化と接続性の向上が継続的に進められています。
外資系IT企業による日本への大規模投資により、従来の日本市場では見られなかった超大型データセンターの建設が相次いでいます。これらのハイパースケールデータセンターは、将来的な拡張を前提とした設計を採用し、需要の増加に応じて段階的に設備を増強できる柔軟性を備えています。
電力供給においても従来の数倍から数十倍の容量に対応し、大規模なクラウドサービスやAI処理基盤の要求に応えられる設計となっています。コンテナ型データセンターの活用により、短期間での設備増強と、効率的な冷却システムの実現が可能となっています。
また、自動化技術の導入により、大規模施設においても効率的な運用管理を実現し、人的ミスの削減と運用コストの最適化を図っています。
企業がデータセンターを選定する際は、単純な立地条件だけでなく、自社の業務要件や将来計画を支える設備スペックを把握し、評価することが成功の鍵となります。ここでは、情報システム担当者が押さえておくべき設備観点での選定基準を解説していきます。
現在の要件だけでなく、中長期の事業成長を見据えた設備の選定が重要です。電力については、将来の拡張を見据えた電力容量の確保が必要で、特にAI・機械学習用途でのGPUサーバー導入を検討している場合は、従来の3~5倍の電力消費を想定した計画が求められます。
ラック仕様では、高密度化に対応した耐荷重性能や配線スペースの確保状況を検証し、将来的な機器更新時の物理的制約を事前に把握しておくことが大切です。
高発熱機器への対応可否を事前に確認することで、将来的な設備変更リスクを回避できます。従来の空冷システムに加え、液冷対応の可否や追加設備の導入余地を評価しておくことが求められます。
温度管理システムでは、サーバールーム内の温度分布の均一性、ホットアイル・コールドアイルの分離状況、リアルタイム監視システムの精度を確認し、機器の適正動作温度を維持できる冷却能力があるかを詳細に検証します。
冗長性についても、空調機器の故障時に備えた予備機の設置状況や、自動切り替え機能の有無を確認することで、冷却システムの単一障害点を排除できているかを評価することが必要です。
24時間365日の安定稼働を実現するため、電源設備の冗長化レベルを詳細に確認する必要があります。UPS(無停電電源装置)の容量と切り替え時間、自家発電設備の燃料容量と無給油運転可能時間を把握し、自社の事業継続要件と照らし合わせた評価が欠かせません。
TIER規格では、TIER 3で72時間、TIER 4で96時間の電力供給が規定されており、災害時の復旧期間を考慮した電源供給設備の選択が重要です。また、電力系統や配電盤の冗長性についても確認が必要です。
メンテナンス時の電源切り替え手順や、計画停電時の調整プロセスについても事前に確認し、業務への影響を最小限に抑える運用体制が整っているかを評価することが大切です。
物理的セキュリティ設備の構成と運用体制を総合的に評価します。入館時の身分確認システム、ICカード認証、生体認証(指静脈認証、虹彩認証など)の組み合わせによる多要素認証の実装状況を確認し、サーバールームへの入室制御についてはインターロック方式やアンチパスバック方式の採用有無を評価します。監視カメラシステムでは、録画期間、画質、死角のない配置設計を確認し、24時間365日の有人監視体制と組み合わせた総合的なセキュリティレベルを判断することが大切です。
セキュリティ認証の取得状況(ISO27001、SOC2など)や、セキュリティ監査の実施頻度についても検証し、第三者による客観的な評価を受けている施設を選択することが欠かせません。
建築構造設備の災害対応能力を科学的データに基づいて評価します。免震・制震・耐震構造の性能については、想定される地震規模に対する具体的な応答加速度数値を確認し、浸水対策として防水壁の高さや排水システムの能力、火災対策として不活性ガス消火システムの配置範囲と作動時間を詳細に把握します。
これらの設備仕様を自社のBCP(事業継続計画)要件と照らし合わせ、災害時にも業務継続可能な耐性レベルかを総合的に判断することが重要です。
立地条件についても、過去の自然災害履歴やハザードマップ、地盤の強度を確認し、複数のリスク要因を総合的に評価することで、最適な災害対策レベルを持つデータセンターを選択できます。
データセンターの設備は、企業のデジタル化とビジネス継続性を支える重要な基盤として、絶えず進化を続けています。基本的な5つの基本設備から最新のAI技術対応設備まで、それぞれが企業の競争力向上に直結する要素となっています。近年においては、従来の安定性・信頼性に加え、環境対応や拡張性、最新技術への対応力が選定に欠かせない基準となっています。
特に注目すべきは、生成AI時代に対応した液冷技術の普及、再生可能エネルギーを活用した脱炭素化への取り組み、そしてマルチクラウド環境に対応したネットワーク接続性の強化です。これらの技術革新により、データセンターは単なるサーバー設置場所から、企業のDX戦略を支える戦略的インフラへと進化しています。適切なデータセンター選択により、企業はITインフラの最適化とコスト効率化を同時に実現し、変化の激しいビジネス環境において持続的な成長基盤を構築できるでしょう。
STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」は、100年間で震度6以上の地震が発生していない立地条件の地理的優位性を持つ、災害に強いデータセンターです。震度7クラスの大規模地震発生時でもサーバー階スラブ面での水平応答加速度を200gal以下まで低減できる高度な免震構造と、最大定格21kVA/ラックの高い電源供給力、多層的なセキュリティ体制により、企業の重要なデータとシステムを最高水準で保護します。24時間365日の専門技術員による監視体制のもと、高品質なサービスを提供しており、お客さまのビジネス継続をしっかりとサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。