CCoEとは?
クラウド活用推進組織の役割・立ち上げ方・成功ポイントを解説

FOR BUSINESS

課題解決のためのノウハウ

企業のDX推進が加速するなか、クラウド技術を全社的に活用するための専門組織「CCoE(Cloud Center of Excellence)」への注目が高まっています。部門ごとにバラバラにクラウドを導入すると、セキュリティリスクの増大やコスト管理の困難さ、ノウハウの属人化といった課題が生じます。こうした課題を解決し、クラウドの持つポテンシャルを最大限引き出すには、全社横断型の推進体制が不可欠です。本記事では、CCoEの定義と役割から、具体的な立ち上げステップ、成功のポイント、避けるべき失敗パターンまで解説します。

CCoEとは?クラウド活用を推進する専門組織

企業のデジタル変革を加速させるうえで、クラウド技術の戦略的な活用は避けて通れません。ここでは、CCoEの基本的な定義と、なぜ今この組織が必要とされているのかを明らかにしていきます。

CCoEの定義

CCoEとは、企業内でクラウド技術を全社横断的に活用するために設置する専門組織で、「クラウド活用推進組織」とも訳されています。

「CoE」は特定分野における専門知識や実績を持つ人材を集約した組織を指し、CCoEはクラウド領域に特化したCoEとして位置づけられています。クラウド戦略の策定から実行まで、必要な知見やリソースを一カ所に集約し、組織横断型の部署として機能します。

具体的には、クラウドサービスの選定基準の策定、セキュリティポリシーの統一、コスト管理の最適化など、多岐にわたる役割を担います。各部門が個別にクラウドを導入するのではなく、CCoEが全社的な視点から最適な活用方法を推進します。

CCoEが注目される背景

企業がCCoEを設置する背景には、現代のビジネス環境における以下の3つの要因があります。

DX推進の加速

デジタル変革の加速により、クラウド活用が経営戦略の中核となり、競争優位性を確立するための必須要素になりました。クラウドを活用することで、新規事業の立ち上げや既存業務の効率化が飛躍的に進み、市場での競争力を高めることができます。

クラウドファースト時代の到来

政府が打ち出した「クラウド・バイ・デフォルト原則」に代表されるように、オンプレミスよりもクラウドを優先的に利用する考え方が一般的になりました。この原則により、システム導入時にはまずクラウドサービスの活用を検討することが標準となっています。

ガバナンス維持の困難さ

部門ごとの個別最適では、全社的なセキュリティポリシーやITガバナンスの維持が困難になり、統括組織の必要性が高まりました。各部門が独自にクラウドサービスを契約すると、セキュリティレベルのばらつきやコストの無駄が発生しやすくなります。

従来のIT部門との違い

CCoEは従来のIT部門とは異なる特徴を持ち、クラウド時代に最適化された組織形態となっています。

組織横断型の構造

IT部門だけでなく事業部門やセキュリティ部門など複数の部署から人材を集約し、部門の壁を超えた推進体制を構築します。これにより、技術的な専門性と現場のビジネスニーズの両方を理解した組織運営が可能になります。

アクセルとブレーキの両立

クラウド活用を積極的に推進する「アクセル」の役割と、セキュリティリスクを未然に防ぐ「ブレーキ」の役割を同時に担います。スピード感を持ってイノベーションを進めながら、適切なリスク管理も行うバランスの取れた組織です。

恒常的な戦略組織

一時的なプロジェクトチームではなく、クラウド戦略を継続的に遂行する恒常的な組織として機能し、スピード感と適切なガバナンスを両立します。クラウド技術の進化に合わせて、組織も継続的に進化していく仕組みが組み込まれています。

CCoEの5つの役割と機能

CCoEは単にクラウドを導入するだけでなく、全社的な視点で多岐にわたる役割を担います。ガバナンスの確立から人材育成まで、組織全体のクラウド活用レベルを底上げする機能について紹介します。

ガバナンスの確立とセキュリティ基準の統一

CCoEが担う中核的な役割として、以下の取り組みを通じて全社的なガバナンス体制を構築します。

クラウド利用ポリシーの策定

全社で共通して適用するクラウド利用のルールとガイドラインを整備します。これにより、各部門が迷うことなくクラウドサービスを導入できる環境を整えます。

セキュリティガードレールの設定

各部門で共通して設定すべきセキュリティ基準を明確化し、統合的なクラウドモニタリングの仕組みを整えます。セキュリティインシデントの早期発見と対応が可能になります。

認証・ネットワーク・パッチ適用の管理

クラウド環境では物理的なアクセス制限が困難なため、あらゆるタッチポイントでのセキュリティ対策を実施します。ID管理やアクセス権限の適切な設定により、不正アクセスのリスクを低減します。

コンプライアンス強化

定期的な監査を通じて、企業が安全にクラウドを利用するための環境整備を担います。法規制への対応状況を継続的に確認し、必要な改善を実施します。

企業のセキュリティ対策について詳しく知りたい方は、「企業に必要なセキュリティ対策の基本と実践のポイント」も併せてご覧ください。

技術支援と仲介機能の提供

各部門のクラウド導入を円滑に進めるため、以下の技術的なサポートを提供します。

ベストプラクティスの提供

過去の成功事例やノウハウを共有し、効率的なクラウド導入を支援します。他部門の失敗や成功から学ぶことで、試行錯誤の時間を大幅に短縮できます。

リファレンスアーキテクチャの整備

標準的なシステム構成のひな型を用意し、導入時の設計工数を削減します。ゼロから設計する必要がなくなり、品質の均一化も図れます。

クラウド移行支援

システム間の依存関係や業務プロセスを詳細に理解したうえで、実践的な移行計画を策定します。移行に伴うリスクを最小化し、業務への影響を抑えます。

技術選定のサポート

IaaS・PaaS・SaaSなど多様な選択肢から、各部門の要件に最適な技術を選定します。コストパフォーマンスや運用負荷を考慮した提案を行います。

クラウド移行の具体的な手法について知りたい方は、「マイグレーションとは?種類や手法、成功のポイントを解説」もご覧ください。

人材育成とコミュニティ運営

組織全体のクラウドリテラシー向上のため、以下の学習機会を継続的に提供します。

研修・OJTの実施

体系的なトレーニングプログラムを通じて、クラウド技術の基礎から応用までを習得できる環境を整備します。座学だけでなく、実際のシステム構築を通じた実践的な学習を提供します。

社内勉強会・イベントの開催

最新技術の情報共有や事例紹介を通じて、学習意欲を高めます。他部門の取り組みを知ることで、新たなアイデアが生まれやすくなります。

コミュニティ運営

チーム間でのナレッジ共有を促進し、部門を超えた協力体制を構築します。質問や相談ができる場を設けることで、孤立することなくクラウド活用を進められます。

クラウド文化の醸成

新しい技術やサービスに対して積極的に学習し、組織に取り入れていく風土を育てます。失敗を恐れずチャレンジできる文化が、イノベーションを生み出します。

コスト管理と最適化の推進

クラウドの従量課金モデルに対応した、以下の統一的な予算管理を実施します。

クラウド利用状況の可視化

部門ごとのリソース使用状況をリアルタイムで把握し、透明性を確保します。ダッシュボードを通じて、誰がどのサービスをどれだけ利用しているかを一目で確認できます。

コスト配分と予算管理

組織全体でのクラウド利用料を効率的に分配し、各部門における予算管理の負担を軽減します。部門ごとの利用実態に応じた公平な配分により、無駄な支出を抑制します。

FinOps的アプローチの実践

継続的なモニタリングと最適化により、投資対効果を最大化します。コストと価値のバランスを常に意識し、ビジネス成果に貢献する支出かどうかを評価します。

無駄なリソースの削減

定期的な見直しを通じて、コスト効率の高い運用を実現します。各部門で使われていないリソースや過剰なスペックを特定し、適切なサイズに調整します。

イノベーション推進と変化への対応

急速に進化するクラウド技術を活用し、以下の取り組みを通じて競争力を強化します。

最新技術の評価と導入

新しいクラウドサービスや技術を積極的に取り入れ、業務の効率化を図ります。AIやIoTなどの先端技術を活用した新たなビジネスモデルの創出も支援します。

クラウドネイティブ開発の推進

コンテナやマイクロサービスなど、クラウドに最適化された開発アプローチを促進します。これにより、システムの柔軟性とスケーラビリティが大幅に向上します。

新ビジネスモデルの構築支援

クラウドの特性を活かした、革新的なビジネスモデルの創出をサポートします。従量課金モデルやサブスクリプション型サービスなど、新しい収益モデルの実現を支援します。

変化対応力の強化

組織が技術革新に柔軟に対応し、競争力を維持・向上させるための推進役を担います。市場環境の変化に素早く対応できる組織文化を育成します。

クラウド活用における技術トレンドについて詳しく知りたい方は、「クラウドネイティブとは?企業が知るべき基礎知識とメリット・課題を解説」もご覧ください。

CCoE立ち上げの5ステップと成功・失敗のポイント

CCoEの立ち上げには段階的なアプローチと明確な戦略が求められます。ここでは、具体的な構築手順と、成功している組織の共通点、避けるべき失敗パターンについて解説します。

Step1:ビジョンと目的の明確化

自社のクラウド活用における現状分析を行い、既存のITインフラやクラウド利用の実態、課題などを洗い出します。その上で、CCoEが目指すビジョンと、どのような価値を企業にもたらしたいのかという目的を明確にします。

立ち上げスタイルには、経営層からの指示によるトップダウン型と、現場からの要請によるボトムアップ型があり、企業の状況に応じて選択することが大切です。トップダウン型は全社的な推進力が得られる一方、ボトムアップ型は現場のニーズに即した活動ができるという特徴があります。

Step2:チーム編成と人材選定

リーダーシップを発揮できる推進責任者、オペレーション担当、インフラストラクチャ担当、セキュリティ担当、アプリケーション担当など、多様な役割を担う人材を配置します。

専任者の配置が理想ですが、バーチャルチームや兼務者で構成されるケースも多く見られます。その場合、CCoEの活動がボランティアとならないよう、人事評価と連動させる仕組みの構築が不可欠となります。活動への貢献を適切に評価することで、メンバーのモチベーションを維持し、継続的な取り組みを促進します。

Step3:ポリシー・ガイドライン策定

セキュリティポリシー、クラウド利用ルール、標準化の指針など、CCoEとしての活動指針となるポリシーやガイドラインを策定します。

これらは社内全体で共有され、実際のクラウド活用の現場で実効性のある形で運用されることが求められます。単なるルールブックではなく、仕組みで統制する環境を整備し、各部門と協力しながら透明性のある運用ルールを構築していきます。ユーザー視点に立った使いやすいガイドラインを作成することで、現場での実践につながります。

Step4:小規模プロジェクトでの実証

選定したチームとガイドラインに基づき、小規模なパイロットプロジェクトからCCoEの活動をスタートします。

プロジェクトを通じて得られる経験と知見は、今後の全社展開に向けた貴重な基盤となります。ナレッジの収集と蓄積、共有のための仕組みづくりも並行して進め、現状に課題意識を持つメンバーを引き込みながら、小さな成功体験を積み重ねてCCoEの輪を広げていくことが大切です。成功事例を可視化し、他部門への横展開を促進します。

Step5:全社展開と継続的改善

パイロットプロジェクトでの成功事例を水平展開し、全社的なクラウド活用を推進します。

定期的な見直しと最適化により、組織やビジネス環境の変化に合わせてCCoEの役割も進化させていきます。CCoEは発足させて終わりではなく、常に変化することを前提とした組織設計が必要です。クラウドの最新技術動向の把握や運用最適化など、継続的な改善が価値向上の要となります。

成功のための3つのポイント

成功しているCCoEには多くの共通点があり、特に欠けてはならないポイントが以下の3つです。

強力なリーダーシップ

熱意と巻き込み力を持ったリーダーの存在が不可欠で、CCoEは泥臭い仕事であるため、やらされ仕事では何も変えられません。リーダーは技術的な知識だけでなく、組織を動かすコミュニケーション能力も求められます。

事業部門とIT部門のコラボレーション

両者の連携により技術的な専門性と現場ニーズの把握を両立でき、実効性の高い施策を展開できます。定期的な意見交換の場を設け、お互いの立場を理解することが効果的です。

仕組みでの統制

運用側の都合ではなくユーザー視点に立った使い勝手の良いクラウド環境を整備することが成功の鍵となります。自動化ツールやテンプレートを活用し、誰でも簡単に適切なクラウド利用ができる仕組みを作ります。

避けるべき失敗パターン

CCoEの立ち上げにおいて、失敗するパターンは以下のようなものがあります。

経営層のコミットメント不足

すべての経営幹部とコミュニケーションを取り、サポートを求めることが不可欠です。経営層の理解と支援がなければ、予算や人材の確保が困難になります。

ビジネス成果との紐付けがない

特定のビジネス上の課題を解決するためのCCoE設立を意図しない場合、ビジネス価値は大きなものになりません。明確なKPIを設定し、成果を測定可能にすることが必須です。

リーダーのDX熱意欠如

リードする側に熱意がない場合、クラウド利用がゴールとなり、CCoEは「誰も遊ばない遊園地の案内係」に陥ります。リーダー自身がDXの価値を信じ、組織を変革する強い意志を持つことが必要です。

チーム編成の不備

組織全体のさまざまなチームからクラウドにフォーカスしたリソースを集め、連帯感と協力体制を構築する必要があります。多様な視点を持つメンバーを集めることで、バランスの取れた判断ができます。

変化への対応力不足

クラウド製品が常に進化する中、既存の前提にこだわらず、新たなオプションをオープンに受け入れる姿勢が求められます。定期的な技術トレンドの調査と、柔軟な方針変更が欠かせません。

人事評価との連動の欠如

CCoEの活動がボランティアとならないよう、人事評価と連動させる仕組みの構築が必要です。貢献度を適切に評価し、キャリアパスとして認識される制度設計が効果的です。

まとめ:CCoEでクラウド活用を加速し企業価値を向上させる

CCoEは、企業がクラウドの持つポテンシャルを最大限引き出すための戦略的な組織です。ガバナンスの確立、技術支援、人材育成、コスト管理、イノベーション推進という5つの役割を担い、全社横断型の推進体制を構築します。立ち上げにあたっては、明確なビジョン設定から始まり、適切なチーム編成、ガイドライン策定、小規模実証、全社展開という5つのステップを踏むことが効果的です。

成功の鍵は、強力なリーダーシップ、事業部門とIT部門のコラボレーション、仕組みでの統制という3つのポイントにあり、経営層のコミットメント不足やビジネス成果との紐付け欠如といった失敗パターンを避けることも重要です。今後のデジタル変革においては、自社のビジネス戦略に最適なCCoEを構築することで、持続可能な競争優位性を確立していきましょう。

こうしたCCoEの構築と運用には、安定性の高いクラウド基盤とデータセンター環境が不可欠です。STNetでは、高効率な運用を実現するデータセンター「Powerico(パワリコ)」と、柔軟なリソース調整が可能な「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」により、お客さまのクラウド活用推進を支援しています。

さらに、これらのサービスを組み合わせたハイブリッド環境の活用により、基幹システムの安定運用と新規システムの柔軟な展開を両立し、段階的なクラウド化を進めることができます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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よくあるご質問

Q. CCoEとは

A. CCoE(Cloud Center of Excellence)とは、企業がクラウド技術を全社横断的に活用するために設置する専門組織です。クラウド戦略の策定、ガバナンスの確立、技術支援、人材育成などを担い、DX推進の中核として機能します。

詳しくは「CCoEの定義」をご覧ください。

Q. CCoEを立ち上げるメリット

A. クラウド導入のスピード向上、セキュリティ水準の統一、コスト最適化、ナレッジの全社共有などが主なメリットです。部門ごとの個別最適を脱却し、全社的なDX推進が可能になります。

Q. CCoEの立ち上げに必要な人材

A. リーダーシップを発揮できる推進責任者、クラウドアーキテクト、セキュリティ専門家、アプリケーション開発者、事業部門の代表者などが必要です。組織規模や成熟度に応じて柔軟に編成します。

詳しくは「CCoE立ち上げの5ステップと成功・失敗のポイント」をご覧ください。

Q. CCoEの立ち上げで失敗しないために

A. 経営層のコミットメントを得ること、明確なビジネス成果と紐付けること、熱意あるリーダーを配置することが重要です。小規模から始めて段階的に拡大するアプローチが推奨されます。

詳しくは「避けるべき失敗パターン」をご覧ください。

Q. CCoEは永続的な組織なのか

A. 多くのCCoEは「いずれ不要になる」ことを理想としています。各部門が自立してクラウドを使いこなせる状態を目指し、環境整備と人材育成を進めます。ただし、組織の変化に応じて役割は進化し続けます。