西日本のDR拠点とは?
インフラ要件と選定ポイントを徹底解説

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課題解決のためのノウハウ

企業のデジタル化が加速するなか、事業継続性の確保は経営における最優先課題となっています。特に東日本エリアにシステムを集中させている企業にとって、大規模災害時のリスク分散は喫緊の対応事項です。西日本へのDR拠点(ディザスタリカバリ拠点)設置により、首都直下地震や南海トラフ地震といった広域災害発生時でもシステムの継続運用が可能となります。総務省のガイドラインでも地理的分散の必要性が明示されており、適切なインフラ要件を満たしたDR拠点の選定が求められています。本記事では、DR拠点の基礎知識から西日本エリアの優位性、具体的なインフラ要件、選定時の実践的なチェックポイントまで解説します。

DR拠点の基礎知識と西日本エリアの戦略的重要性

災害時の事業継続性確保は経営課題として位置付けられています。DR拠点の役割と西日本エリアの地理的優位性を確認します。

DR拠点とは?その役割と必要性

DR拠点とは、災害時に主要拠点のシステムが停止した際、業務を継続するための遠隔地システム復旧拠点です。

バックアップがデータのコピー保存を目的とするのに対し、DR拠点はサーバー・ネットワーク・アプリケーション環境を含むシステム全体の迅速な復旧機能を持つ点で異なります。単にデータを保管するだけでなく、災害発生後すぐにシステムを立ち上げて業務を再開できる環境を整備することがDR拠点の本質です。BCP(事業継続計画)実現の具体的手段として、目標復旧時点(RPO)と目標復旧時間(RTO)を設定して構成を決定します。

なぜ西日本エリアなのか?地理的分散の意義

東日本にシステムを集中させている企業にとって、西日本へのDR拠点設置は災害リスク分散に直結します。

東日本は北アメリカプレート、西日本はユーラシアプレート上に位置し、首都直下地震との連動リスクが低い地理的特性があります。プレートが異なることで、一方のエリアで大規模地震が発生しても、もう一方のエリアへの影響を最小限に抑えられます。総務省ガイドラインでも遠隔地バックアップの必要性が明示されており、さらに電力周波数の違い(東日本50Hz、西日本60Hz)により広域停電時のリスク分散効果も得られます。

DR拠点の主要な種類と特徴

DR拠点は復旧速度とコストのバランスにより、コールドサイト、ウォームサイト、ホットサイトの3つに分類されます。

種類 復旧時間 特徴 適用シーン
コールドサイト 数日~数週間 最小限の設備のみ配置。復旧に時間を要するがコスト抑制が可能 予算制約が大きく、復旧時間に余裕がある業務
ウォームサイト 数時間~1日 一部システムを常時稼働。中間的な構成でバランス重視 標準的な復旧時間が許容される業務
ホットサイト 即座 本番同等システムを常時稼働。即座に切替可能だが運用コストが高い 金融機関など高可用性が必須の業務

自社のRPO・RTO要件と予算を照らし合わせ、最適な構成を選択することが成功の鍵となります。

BCP対策の全体像について詳しく知りたい方は、「BCP対策とは?事業存続のカギとなるデータ管理の実践手法」も併せてご覧ください。

西日本のDR拠点選定で確認すべきインフラ要件

DR拠点の実効性を高めるには、適切なインフラ要件を満たした施設選定が不可欠です。技術面と運用面から押さえるべきポイントを整理します。

立地条件とファシリティの安全性

立地選定では自然災害リスクの低さと物理的安全性が第一の評価基準です。地震発生履歴、活断層からの距離、洪水・土砂災害リスクをハザードマップで確認し、過去100年間で震度6以上の地震が発生していないエリアは特に評価が高くなります。

建物の耐震・免震性能については、免震構造や耐震性能証明により地震時の機器損傷リスクを低減できるかを確認します。アクセス性の確保も見落としがちな評価項目で、障害発生時の駆け付け対応を考慮し、主要都市からのアクセスも評価が必要です。

電源とネットワークの冗長性

システムの安定稼働には、電源とネットワークの冗長化構成が必須となります。
電源設備の二重化では、複数変電所からの受電構成で電力供給の信頼性を確保します。一つの変電所からの受電では障害時に全系統が停止するリスクがあるため、異なる変電所からの二系統受電が基本です。自家発電設備やUPS容量も確認し、商用電源喪失時に何時間システムを維持できるかを把握しておく必要があります。

通信回線の多重化については、複数通信キャリアとの接続や異なる経路での回線確保により、障害時リスクを分散します。クラウド接続への対応も現代のDR環境では欠かせません。AWS、Azure、Google Cloudなど主要クラウドへの専用接続が可能か確認します。

セキュリティ対策と運用体制

DR拠点の選定では、入退室管理・監視体制・有人対応の3つのセキュリティ要件を満たしているかを確認する必要があります。

入退室管理システムでは、生体認証や多要素認証による厳格な管理で不正アクセスを防止します。カードキーだけでなく、指紋認証や静脈認証などを組み合わせることで、なりすましや不正侵入を確実に防げます。監視カメラと警備体制については、施設内外の常時監視と警備員配置で物理的セキュリティを確保します。

24時間365日の有人監視体制では、専門技術者による常時監視で障害の早期発見と迅速対応が可能です。ISO認証の取得状況は運用品質の客観的指標となり、ISO 27001(ISMS)やISO 9001(品質マネジメント)認証取得は、セキュリティと運用の両面で一定水準を満たしている証明となります。

データ同期とレプリケーション方式

本番環境とDR環境のデータ整合性保持には、適切なレプリケーション方式の選択が必要です。

同期・非同期レプリケーションの選択は、RPO要件に応じて決定します。同期レプリケーションはデータ損失を最小化できますが、ネットワーク遅延が本番環境のパフォーマンスに影響する可能性があります。非同期レプリケーションはネットワーク負荷を抑えられますが、わずかなデータ損失のリスクを許容する必要があります。

また、ストレージ・アプリケーションレベルでのレプリケーション実施層により、コストと復旧時の柔軟性が変わります。定期的な整合性確認も忘れてはなりません。データ同期が正常に機能しているか定期検証し、障害時確実に切替可能な状態を維持します。

DR拠点選定のチェックポイントとコスト最適化

技術要件だけでなくコストやSLA内容も総合評価が必要です。実務で活用できる選定基準を提示します。

SLAと運用サポートの確認事項

SLA(サービスレベル契約)の内容と運用サポート体制の詳細確認が成功の鍵となります。

チェックポイント①:稼働率保証の水準

99.9%以上が一般的基準ですが、ミッションクリティカルなシステムでは99.99%以上を求めます。わずか0.09%の差ですが、年間ダウンタイムに換算すると大きな違いとなります。

チェックポイント②:障害時の目標復旧時間

障害発生時の連絡体制、一次対応所要時間、復旧目標時間が契約に明記されているか確認します。単に稼働率だけでなく、障害時の具体的な対応フローと時間が明確になっているかが重要です。

チェックポイント③:障害時の緊急システム運用

遠隔地拠点のための現地作業代行の対応範囲と料金体系を把握します。サーバーの再起動、ケーブル抜き差し、目視確認など、どこまでが基本サービスでどこから有償オプションなのかを事前に明確にしておきましょう。

コスト構造とTCOの考え方

初期コストだけでなく、運用期間全体でのTCO(総所有コスト)算出が必要です。

初期構築費用には、ラック費用、ネットワーク構築費、機器設置費などの初期投資を含みます。ハウジング契約の場合、ラック単位での契約となるため、必要ラック数の見積もりが重要です。月額運用費用は、ハウジング費用、電力料金、回線費用、監視運用費用など継続コストとなります。電力料金は消費電力に応じた従量課金となるケースが多いため、機器の消費電力を正確に把握しておく必要があります。

拡張性とスケーラビリティも見落とせません。将来のシステム拡張を見据え、ラック追加や電力容量追加の可能性を確認し、後発生コストを抑制します。

TCOの最適化について詳しく知りたい方は、「クラウド時代のTCO戦略とは?IT投資を最適化する総所有コストの理解と管理」も併せてご覧ください。

クラウドDRとオンプレミスDRの比較検討

自社のデータガバナンス要件とコスト構造により、クラウドDRとオンプレミスDRのどちらを選ぶべきかが決まります。

クラウドDRは初期投資抑制と柔軟なリソース調整が可能でスモールスタートに適しています。従量課金モデルのため、使った分だけのコスト負担となり、災害時のみリソースを大きく確保するといった運用も可能です。オンプレミスDRはデータの完全コントロールが可能で、規制要件が厳しい業界や大規模システムに適します。金融機関や医療機関など、データの物理的な所在地管理が求められる業界では、オンプレミスDRが選択されるケースが多くなります。

ハイブリッド構成として、基幹システムはオンプレミスDR、その他はクラウドDRと使い分けることで、コストと信頼性のバランスを取る方法も有効です。

ハイブリッドクラウドの活用について詳しく知りたい方は、「ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットと使い分け例を紹介」も併せてご覧ください。

定期的なDR訓練と見直しの実施

DR環境を災害時に確実に機能させるためには、年1~2回の切り替え訓練実施が不可欠です。

当該訓練では、本番からDR環境への切替を実施し、手順確認と課題抽出を行います。訓練を通じて初めて発覚する設定ミスや手順書の不備も多いため、定期的な実施が不可欠です。フェイルバック手順の確認として、DR環境から本番への復帰手順も検証し、双方向で切替可能な状態を維持します。

BCP全体では、システム環境変化や事業内容変更に合わせて定期的に見直し、DR構成の適切性を再評価します。

IT-BCPの実践について詳しく知りたい方は、「IT-BCPとは?自社のIT資産を守り事業継続を実現するポイントを解説」も併せてご覧ください。

西日本のDR拠点構築で実現する強靭な事業継続体制

西日本へのDR拠点設置は、東日本に集中するシステムリスクを分散し、大規模災害時の事業継続性を確保する有効な戦略です。地理的に異なるプレート上に位置する西日本エリアは首都直下地震との連動リスクが低く、電力周波数の違いによる広域停電対策としても機能します。DR拠点の選定では、自然災害リスクの低い立地、電源・ネットワークの冗長性、24時間365日の運用体制、適切なデータ同期方式といったインフラ要件を総合的に評価することが必要です。さらにSLA内容やTCOを精査し、クラウドDRとオンプレミスDRの特性を理解したうえで自社要件に最適な構成を選択しましょう。定期的なDR訓練実施により実効性を継続検証することで、真に機能するDR体制を構築できます。

西日本エリアでのDR拠点構築には、信頼性の高いデータセンターとネットワーク基盤が不可欠です。STNetでは香川県に位置する「Powerico(パワリコ)」を通じて、過去100年間で震度6以上の地震が発生していない地理的優位性を持ち、24時間365日の専門技術員による監視体制を提供しています。免震構造の建物、電源の冗長化、複数キャリアとの接続など、DR拠点に求められるインフラ要件を満たした環境でお客さまの事業継続を支援します。クラウドサービスとの連携が必要な場合は「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」と組み合わせることでハイブリッド構成によるDR環境の構築も支援いたします。

西日本エリアでのDR拠点構築をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事で紹介しているサービス

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]

一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えた国産クラウドサービスです。

よくあるご質問

Q. DR拠点とバックアップの違い

A. DR拠点はシステム全体を遠隔地で迅速に復旧させる機能を持ち、サーバー・ネットワーク・アプリケーション環境を含めた包括的な復旧体制が整っています。一方バックアップはデータのコピー保存が目的で、復元に時間がかかる点が大きな違いです。

詳しくは「DR拠点とは?その役割と必要性」をご覧ください。

Q. 西日本のDR拠点として香川県が推奨される理由は

A. 香川県は過去100年間で震度6以上の地震が発生していない地理的優位性があり、災害リスクの低さを最重視する場合に適しています。東日本の主要拠点から離れた西日本エリアに位置し、首都直下地震との連動リスクも低いため、DR拠点としての立地条件を満たしています。

Q. クラウドDRとオンプレミスDR、どちらがよいか

A. クラウドDRは初期投資を抑えつつ柔軟なリソース調整が可能で中小規模システムやスモールスタートに適しており、オンプレミスDRはデータの完全なコントロールが可能で規制要件が厳しい業界や大規模システムに向いています。近年では基幹システムはオンプレミスDR、その他はクラウドDRとするハイブリッド構成を採用する企業も増えています。

詳しくは「クラウドDRとオンプレミスDRの比較検討」をご覧ください。

Q. DR拠点の運用で最も注意すべき点

A. 定期的な切り替え訓練の実施が最も重要で、年1~2回程度の本番環境からDR環境への切替訓練により手順確認と課題抽出を行う必要があります。さらにデータ同期状態の継続的な監視とRPO/RTO目標の定期的な見直しも欠かせません。

詳しくは「定期的なDR訓練と見直しの実施」をご覧ください。