国産クラウドのメリットとは?データ主権とセキュリティの観点から選定するポイントを解説

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クラウドサービスが企業のデジタル戦略に欠かせない存在となるなか、国産クラウドへの注目が高まっています。外資系クラウドとの違いは何か、なぜ国産クラウドを選ぶべきなのか。本記事では、国産クラウドの定義から、データ主権やセキュリティの観点によるメリット、選定する際のポイントまで詳しく解説します。クラウドサービスの選択に悩む企業や、より安全で効率的なデジタル化を目指す企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

国産クラウドとは?外資系クラウドとの違いを比較

国産クラウドと外資系クラウドの特徴を理解することは、企業のクラウド戦略を決定する上で欠かせません。この違いを把握することで、企業は自社のニーズに最適なクラウドソリューションを選択できるでしょう。

国産クラウドの定義と特徴

国産クラウドとは、日本企業が開発・運営する、国内法規制に完全準拠したクラウドサービスを指します。これらのサービスは、日本の企業文化や商習慣を深く理解したうえで設計されており、日本企業特有のニーズに対応できる柔軟性を持っています。国産クラウドの特徴として、主に国内にデータセンターを置いているため通信速度が速いこと、日本語による充実したサポート、日本の法規制への厳格な対応などが挙げられるでしょう。

外資系クラウドとの違い

国産クラウドと外資系クラウドには、データの保管場所、法令順守、サポート体制など、いくつかの大きな違いがあります。以下の表で、これらを比較してみましょう。

国産クラウド 外資系クラウド
データの保管場所
  • 国内のデータセンターで管理
  • データの国内保管を保証
  • 海外のサーバーに保存される可能性がある
  • データの保管地が不明確な場合がある
法令順守
  • 日本の法律や規制に完全準拠
  • 日本の法規制に対応している場合もあるが、国産クラウドほど日本固有の要件に特化していない場合がある
サポート体制
  • 日本語による24時間365日のサポートが一般的
  • 言語の壁や時差の問題が生じる可能性がある
価格体系
  • 円建て/為替変動リスクなし
  • 多くの場合ドル建て/為替変動リスクあり
カスタマイズ性
  • 日本企業のニーズに合わせた柔軟なカスタマイズが可能
  • グローバル標準のサービスが中心。カスタマイズに制限がある場合あり

この表から分かるように、国産クラウドは日本企業のニーズにより適している可能性が高いといえるでしょう。

外資系クラウドの中にも日本語サポートを提供しているものがありますが、時差や文化的な違いにより、対応の速さや質に差が生じる可能性があります。

国産クラウド選択のメリットと企業が選ぶべき理由

国産クラウドを選択することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。

データ主権とセキュリティの確保

データ主権とは、自国のデータを自国の法律に基づいて管理・保護する権利を指します。データ主権とセキュリティの確保により、企業は日本の法律に基づいたデータ管理が可能となり、個人情報保護法への対応やデータ漏洩リスクの軽減などが実現します。

具体的には、個人情報保護法に基づくデータの適切な管理や、金融機関における顧客情報のデータ漏洩リスクの軽減などが挙げられます。

さらに、国産クラウドを利用することで、米国愛国者法(USA PATRIOT Act)のような外国の法律に基づくデータへのアクセス要求から、自社のデータをより効果的に保護することができます。米国愛国者法は、テロとの闘いを目的とした法律ですが、外国の企業のデータに米国の法執行機関がアクセスできる可能性を含んでいます。国産クラウドを選択することで、このような外国法の適用リスクを低減し、事業継続性と信頼性を高めることができます。

このようにデータ管理や法令順守がしやすいという点は、特に金融機関や医療機関など、厳格なデータ管理が求められる業界においてポイントとなるでしょう。また、グローバルに事業を展開する企業にとっても、データの所在と管理に関する法的リスクを軽減するうえで、国産クラウドは有効な選択肢の一つとなります。

日本企業のニーズに特化した機能とサポート

国産のクラウドサービスプロバイダーは、日本企業の業務プロセスや商習慣を深く理解しているため、それらに適した機能やサービスを提供できます。例えば、日本特有の会計システムや人事管理システムとの連携、日本の祝日に合わせたスケジュール管理機能など、きめ細かな対応が可能です。さらに、日本語でのサポートにより、トラブル発生時の迅速な対応や、複雑な技術的質問への的確な回答を得られます。

柔軟な契約形態とコスト最適化

企業のニーズに合わせた多様な契約オプションとコスト削減の両立が期待できます。AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureのような外資系クラウドの場合、利用した分だけ課金される従量課金制を採用しています。一方国産クラウドは、日本企業のニーズに合わせた柔軟な契約形態を提供していることも多く、例えば従量課金と定額制の組み合わせなど、企業のニーズに合わせた選択が可能となっています。これにより、リソースの無駄を省き、コストを最適化しつつ、ビジネスの変化に応じて柔軟にリソースを拡張・縮小できます。

さらに国産クラウドのメリットとして、為替変動リスクを回避し、より安定したコスト管理が可能となる点が挙げられます。外資系クラウドの多くは米ドル建ての料金体系を採用しており、円安の影響で予想外のコスト増加が発生する可能性があります。一方、国産クラウドは円建ての料金体系が一般的であり、為替変動の影響を受けにくく、予算管理がしやすくなるのです。

クラウドで実現するコスト削減について、詳しくは「パブリッククラウドで実現するコスト削減と運用効率化」をご覧ください。

国産クラウドサービス選定のポイント

企業が国産クラウドサービスを選定する際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。

セキュリティ認証と法令順守状況

国産クラウドサービスを選定する際は、セキュリティ認証の取得状況と法令順守の状況を確認しましょう。具体的には、ISO/IEC 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)やPマーク(プライバシーマーク)などの認証取得状況をチェックします。これらは、クラウドプロバイダーが適切なセキュリティ管理体制を整備していることの証明となります。加えて、個人情報保護法やマイナンバー法などの関連法令への対応状況も確認が必要です。

パフォーマンスと可用性

クラウドサービスのパフォーマンスと可用性は、企業のビジネス継続性に直結する要素です。SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)の内容を詳細に確認し、稼働率や応答時間などの保証レベルが自社のニーズを満たしているかを評価しましょう。また、障害発生時の対応体制や、バックアップ・リカバリの仕組みについても確認が必要です。定期的なメンテナンス情報の提供や、障害情報の迅速な共有体制があるかどうかも、必須のチェックポイントとなります。

将来的な拡張性とマルチクラウド対応

ビジネスの成長に合わせて、クラウドリソースを柔軟に拡張できるかどうかは、長期的な観点から重要な選定ポイントとなります。サーバーの性能を上げる「スケールアップ」とサーバーの台数を増やす「スケールアウト」の両方に対応しているか、必要に応じてリソースを迅速に追加・削減できるかを確認しましょう。

さらに、ほかのクラウドサービスとの連携やデータ移行の容易さも考慮に入れるべきです。マルチクラウド戦略を採用する企業が増えている現在、異なるクラウド間でのデータやアプリケーションの移行がスムーズに行えるかどうかは、重要な判断基準となるでしょう。

マルチクラウドについて詳しくは、「マルチクラウドを活用したコスト最適化とセキュリティ強化のポイント」をご覧ください。

日本固有の規制とコンプライアンス要件への対応

金融業や医療業など、厳格な規制が適用される業界では、日本固有の規制やコンプライアンス要件への対応が不可欠です。例えば、金融庁のガイドラインや厚生労働省の指針などに準拠しているかを確認する必要があります。国産クラウドプロバイダーは、これらの日本固有の要件を深く理解し、適切な対応を行っていることが多いため、規制産業にとっては大きなメリットとなるでしょう。

ハイブリッドクラウド環境への対応

ハイブリッドクラウドとは、プライベートクラウドやデータセンターのハウジングサービスなどの自社管理環境と、パブリッククラウドを組み合わせ、それらを統合して使用する環境を指します。この構成により、企業は既存のシステムを活用しつつ、クラウドの利点も取り入れられる柔軟性を得ることができます。

国産クラウドを選ぶ際は、このようなハイブリッド環境への対応も重要なポイントとなります。具体的には、既存のシステムとクラウドサービスを効率的に連携させる機能や、オンプレミスからクラウドへの段階的な移行を支援する仕組み、さらには異なる環境間のセキュアな接続オプションが提供されているかを確認しましょう。

また、プライベートクラウド、ハウジングサービス、パブリッククラウドなど、異なる環境のリソースを一元的に管理できるツールの有無や、一貫性のあるセキュリティポリシーの適用が可能かどうかも、判断基準となります。このようなハイブリッド環境を適切に構築することで、既存システムの安定性を保ちつつ、必要に応じてクラウドのリソースを効率的に利用できるようになります。

ハイブリッドクラウドについて詳しくは、「ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットと使い分け例を紹介」をご覧ください。

また、併せてお役立ち資料「クラウドサービス(IaaS)の選び方」も、ぜひダウンロードしてご覧ください。

国産クラウドが実現する安全で効率的なデジタル化

国産クラウドの採用は、企業のデジタル化戦略を推進する選択肢の一つです。データ主権の確保とセキュリティの強化により、企業は法規制への完全準拠とリスク管理の向上を実現できます。さらに、コスト最適化や日本語によるきめ細かなサポート、日本企業特有のニーズに対応した機能提供により、業務効率の向上とビジネスプロセスの最適化が可能となります。

STNetが提供する「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」は、パブリッククラウドの柔軟性とプライベートクラウドの安全性を融合したソリューションサービスです。国産クラウドの利点を最大限に活かし、日本円での定額制料金や、企業のニーズに合わせたリソースのオンデマンド変更、高度なセキュリティネットワーク環境の構築が可能です。

さらに、JDCC最高水準の「ティア4」に準拠した西日本最大級のデータセンター「Powerico(パワリコ)」との組み合わせにより、クラウドとのハイブリッド環境も利用できます。データセンターのハウジングサービスとクラウドを効果的に連携させることで、既存システムの安定性を維持しつつ、クラウドの柔軟性と拡張性を最大限に活用できます。この組み合わせは、BCP対策も含めた包括的なソリューションとなり、企業のデジタル戦略を推進できます。

また、STNetのサービスはマルチクラウド利用にも対応しており、閉域接続ができるST-WANダイレクトコネクト(クラウド接続)を通じて、複数のクラウドサービスを組み合わせて安全かつ効率的に利用することができます。

これらのサービスにより、STNetはBCP対策を含む幅広いビジネスニーズに対応し、企業の柔軟なクラウド戦略の展開を支援します。ご興味のある企業担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事で紹介しているサービス

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]

一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えた新しいクラウドサービスです。

ST-WANダイレクトコネクト(クラウド接続)

大手パブリッククラウド向けに異なる経路・設備で構成した専用ネットワークで直接接続するサービスです。