クラウドリフト&シフトとは?
クラウドへの移行手法としての特徴とメリットを解説

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課題解決のためのノウハウ

現代では業務においては、クラウドの活用が主流となってきており、多くの企業がオンプレミスからクラウドへ移行しています。オンプレミス環境と比べたとき、クラウドにはさまざまなメリットがあり、事業活動にとって有効なプロセスとなるためです。
それでは、オンプレミスからクラウドへ移行するにはどのような手法があるのでしょうか。また、メリットが大きいといわれるクラウドリフト&シフトとはどのようなものなのでしょうか。この記事では、クラウドリフト&シフトの概要やメリット、注意点などをご紹介します。

クラウドの種類や選定ポイントついては、こちらでも解説しています。

クラウドリフト&シフトとは?

オンプレミスでの運用をクラウドへと移行するとき、その移行手段として3つのパターンがあります。

  • クラウドリフト
  • クラウドシフト
  • クラウドリフト&シフト

これら3つの移行手法について、それぞれの概要と違いを見ていきましょう。

クラウドリフト

クラウドリフトは、これまで使ってきた業務システムをできるだけそのままの形でクラウドへと移行する手法です。
既存のシステムをそのままクラウドに持ち込むため、新たにシステムを作らず最適化することができます。少ない手間でクラウドへの移行が可能ですが、古いシステムをそのまま使うことになり、老朽化によりシステム障害を引き起こすなどレガシーとなるリスクもあります。

クラウドシフト

従来の業務システムを活用せずにクラウド環境に合わせて新たにシステムを開発、導入する手法がクラウドシフトです。
システムを新規開発するため手間と時間はかかりますが、現状の課題を改善しながらクラウドへの移行ができるため、移行とともに効率化を図ることが可能です。

クラウドリフト&シフト

クラウドリフトとクラウドシフトの中間的な移行方法がクラウドリフト&シフトです。
クラウドリフト&シフトでは、今までのオンプレミスで活用していた既存のシステムをそのままクラウドへ移行し、必要な部分に改修を加えてクラウドへ実装します。
クラウドへのスムーズな移行とクラウド環境への最適化を同時に実施することが可能で、クラウドリフトとクラウドシフトの特徴をあわせ持つ移行手法といえます。
これまでのシステムを新しいシステムへ移行したり、データの格納先を新たな場所へ移行したりすることはマイグレーションといいます。

マイグレーションについては「マイグレーションとは?メリットや手法、失敗しないためのポイントを解説」をご覧ください。

また、クラウドへの移行については「クラウドサービス(IaaS)の選び方」にまとめてあります。ぜひご覧ください。

クラウドリフト&シフトのメリット

クラウドリフト&シフトは、クラウドリフトが持つ継続的な可用性と、クラウドシフトの課題解決能力を同時に実現することが可能な移行手法です。
クラウドへの移行手法としてクラウドリフト&シフトを行うことで、次のようなメリットが生まれます。

少ない手間でクラウド環境に最適化できる

オンプレミスで運用していたシステムをベースにクラウドに移行し、必要な部分のみ改修するため、少ない手間でクラウド環境への最適化が可能です。
業務を長い期間停止することなく、短期間で運用を再開できます。

老朽化したシステムのままの運用とならない

必要な部分を改修し、現状のシステムが抱える課題を解消しながら移行できるため、老朽化したシステムのまま使い続けるという状況から脱却できます。
プログラムの老朽化や技術者不在などによるブラックボックス化を防ぐことにもつながります。

業務に混乱なく移行できる

既存のシステムを基本としてそのままの形で移行するため、システムを使用するうえで混乱が生じにくく、移行後もスムーズに業務を開始できます。

教育コストを削減できる

クラウド移行後も既存システムの運用方法と大きく変わることなく使用できるため、新たに社員教育を行う必要がなく、教育コストを抑えることができます。
教育に必要な時間や場所、手順書の整備なども省略でき、経営リソースの節約もできます。

人・場所が限定されない

オンプレミスからクラウドへ移行することで、システムを操作する場所が限定されなくなります。
これに加え、クラウドリフト&シフトでは従来の操作方法を大きく変えることなく移行できるため、操作する人も限定されません。移行によって扱える人員を限定することなく、可用性を高めることができます。

BCP対策になる

BCP対策として大きな効果があることも、クラウドリフト&シフトの特徴のひとつです。
自社拠点が被災した場合にも重要データの安全性が保たれ、インターネットさえあれば場所を問わずに業務遂行が可能です。これにより中核事業の継続、または早期復旧が可能になります。
BCP対策は企業価値や信頼性を高めるうえでも重要であり、現代のあらゆる企業が取り組むべき課題です。

BCP対策について、より詳しくは「BCP対策とは?その目的や策定方法、注意点などを解説」をご覧ください。

クラウドリフト&シフトの手順

クラウドリフト&シフトを次のような手順で進めていくことで、オンプレミスからクラウドへのスムーズな移行が可能となります。

手順1:既存のオンプレミス環境を仮想化

操作するハードウェアとシステムのライフサイクルを分離し、自社の物理サーバー上でサーバーを仮想化します。
これにより、クラウドへ移行しやすい環境が整います。

手順2:クラウド環境でテスト運用

仮想化したサーバーの中で、影響が少ないことが予想されるものをクラウドに移行し、運用テストをします。
実体験により、次の段階での課題も明確化されます。

手順3:優先度を決めて順次クラウドへ移行

仮想化したサーバーにおいて、移行することで高い効果があると見込めるかどうかで順位づけをし、優先順位の高いものからクラウドへ順次移行していきます。
この手順はクラウドリフトを行っている段階と言えます。

手順4:クラウド機能によって効率化できる改修点を検討

次に行うのはクラウドシフトに該当する手順です。
既存の課題と手順2で明確になった課題、クラウドの機能を活用することで効率化できる部分などを検討し、解決策となる改修を実施します。

手順5:クラウドに最適化されたシステム設計と基盤構築

クラウドリフト&シフトによって既存のシステムのクラウドへの移行ができたら、クラウドへの最適化をさらに深める方法を検討します。
最初からクラウドでの運用を想定して構築された場合にはどのような設計になっていたかを考え、よりクラウドネイティブ化を進めていきます。
また、ビジネスにおけるメリットを最大化できるようなクラウド活用方法を模索し、必要に応じてクラウドとオンプレミスの使い分けも視野に入れて検討します。
こうして移行後も改善点を見つけ改修を繰り返していくことで、より効率的な運用を実現する仕組みを作ります。

クラウドリフト&シフトで移行する際の注意点

クラウドリフト&シフトでは、次のような点に注意しながら進めることでスムーズな移行と効率的な運用が可能になります。

要件と運用方法を明確にして手順を進める

クラウド活用によってどのような効果を期待するのか、クラウド移行後はどのような運用方法を期待し、どのような機能を追加したいのか明確にすることが重要です。
こういった部分が明確にならないまま進めると、不要なアプリケーションも移行される可能性が高くなります。不要なアプリケーションやデータは、データ通信の遅延や通信コストの増大、クラウド契約コストの肥大化を招きます。

セキュリティを備えたクラウドサービスを選ぶ

これまでオンプレミスで運用していたシステムをクラウドに移行することで、セキュリティのリスクが高くなるケースが考えられます。ただ、自社で強力なセキュリティを構築しようとすると、大きなコストがかかります。
そのため堅牢なセキュリティを備えたクラウドサービスを選ぶことにより、コストを抑えつつ強力なセキュリティに守られた運用が可能です。

ネットワークに関する社員教育が必要

クラウドへの移行により、これまで閉じたネットワークで運用されていたものを開かれたネットワークで使用することになります。
個人情報の取り扱いやストレージの使用に関するルールなど、外部とネットワークで接続されることがどのような影響につながるかという社員教育は必要です。

移行するクラウドサービスの操作性やサポートを確認

クラウドでのシステム運用を行ううえで、どういったクラウドサービスを利用するかは非常に重要です。
クラウドに切り替えることで、セキュリティレベルの高さやデータ保管の安全性などを自社で整えるのではなく、クラウドサービスに依存するようになるからです。また、インターフェースの操作性やサポートの充実度などを確認することも大切です。
クラウドサービスの選定が、安全性や作業性の方向を決定づけることになります。

クラウド移行はクラウドサービスの選定も重要

クラウドリフト&シフトは、スムーズな移行が可能なクラウドリフトと、課題を解消しながらシステム移行できるクラウドシフトの中間的な移行手法です。オンプレミスで運用していた既存システムの形を崩さずに、改修を加えながらクラウドへ移行することで、BCP対策にもつながります。
スムーズなクラウドリフト&シフトを行うためには、移行から運用にかけての利便性確保や機能向上を考えなければなりません。このとき、重要となるのがクラウドサービスの選定です。

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