ファイアウォール(Firewall)とは?
仕組み・種類・設定方法まで解説

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課題解決のためのノウハウ

サイバー攻撃の高度化により、企業のセキュリティ対策への関心が高まっています。その中でも、ファイアウォールは情報セキュリティの基盤となる防御システムとして欠かせない存在です。本記事では、ファイアウォールの基本定義から、その仕組み、種類、そして運用ポイントまで詳しく解説します。 企業の情報システム部門で働く方々にとって、ファイアウォールに関する知識は必須といっても過言ではありません。また、システムの老朽化に伴い新たな攻撃手法への対応等を迫られ、そのためのコスト増大の課題を抱える企業にとって、ファイアウォールの導入は新たな選択肢となるかもしれません。情報セキュリティを強化するための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

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ファイアウォールとは何か?基本概念と必要性

ファイアウォールの基本的な定義から、企業が直面するセキュリティ課題における位置づけまで、その本質を理解していきましょう。

ファイアウォールの定義と役割

ファイアウォールとは、コンピューターネットワークにおいて、外部からの不正アクセスや悪意ある通信を遮断する防御システムのことです。「防火壁」を意味する英語が語源となっており、火災の延焼を防ぐ壁のように、サイバー攻撃の侵入を阻止する役割を担っています。

具体的には、事前に設定されたセキュリティルールに基づいて通信を監視し、許可された通信のみを通過させることで、内部ネットワークの安全性を確保します。インターネットと内部ネットワークの境界に設置され、24時間365日休むことなく通信を監視し続けているのです。

ファイアウォールが必要な理由

デジタル化の進展に伴い、企業の業務システムがインターネットに接続される機会が増加している現在、外部からの脅威は日々多様化しています。IPAの調査によると、2024年上半期だけで企業を標的としたサイバー攻撃が前年同期比で約30%増加しており、その被害規模も拡大傾向にあります。

特に近年では、標的型攻撃やランサムウェア攻撃が巧妙化し、従来の対策では防ぎきれない脅威が増加しています。このような状況下で、ファイアウォールは第一線の防御として機能し、組織の重要なデータと業務継続性を守る役割を果たしているといえるでしょう。

ファイアウォールを導入しないリスク

ファイアウォールが未導入の環境では、外部からの不正アクセスを受けやすく、データ漏洩や改ざん、マルウェアやウイルス感染といった深刻な被害を招く可能性があります。2023年には、ファイアウォール未設置により企業の基幹システムが攻撃を受け、約1週間の業務停止と数千万円の復旧費用が発生する事態がありました。

このようなリスクを回避するためにも、適切なファイアウォールの導入は企業運営における必須要件となっています。また、ファイアウォール未導入による被害は、直接的な金銭的損失だけでなく、顧客情報の漏洩による信頼失墜、法的責任の発生、競合他社への機密情報流出など、企業の存続に関わる深刻な影響を与える可能性があります。さらに、コンプライアンス違反による行政処分や取引先からの契約解除といった二次的な損害も想定されるため、予防的な対策としてのファイアウォール導入の重要性は極めて高いといえます。

サイバー攻撃の詳細な手法と対策について詳しく知りたい方は、「サイバー攻撃を受けるとどうなる?よくある被害事例と企業の対策を解説」も併せてご覧ください。

企業におけるファイアウォールの重要性

現代の企業経営において、ファイアウォールは単なるセキュリティソリューションを超え、コンプライアンス対応、事業継続性の確保、顧客からの信頼獲得など、多角的な価値を提供する基盤技術として認識されつつあります。

特に、リモートワークの普及により社内外のネットワーク境界が曖昧になった現在では、その価値がより一層高まっているといえるでしょう。従業員が自宅や外出先から社内システムにアクセスする機会が増える中、ファイアウォールは企業の情報資産を守る最前線の砦として機能しています。

ファイアウォールの仕組みと動作原理

ファイアウォールがどのような技術的原理に基づいて動作し、通信を制御しているのかを見ていきましょう。

パケットフィルタリング型の仕組み

パケットフィルタリング型は、最も基本的なファイアウォール技術として広く使用されています。この方式では、ネットワークを流れるデータを小さな単位であるパケットに分けて監視し、各パケットのヘッダー情報を詳細に検査する仕組みを採用しています。

検査対象となる主な情報として、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、ポート番号、プロトコル種別があり、これらの情報をもとに事前に定義されたセキュリティルールと照合して通信の許可・拒否を瞬時に判断します。処理速度が非常に高速である反面、パケットの実際の内容までは検査しないため、暗号化された通信内に隠された高度な攻撃に対しては限界があります。

アプリケーションゲートウェイ型の仕組み

アプリケーションゲートウェイ型は、より高度なセキュリティ機能を提供するファイアウォール方式です。この技術では、ファイアウォールが通信の中継役として動作し、内部ネットワークのコンピューターに代わって外部サーバーとの通信を行います。アプリケーション層でのデータ内容まで詳細に検査できるため、悪意のあるコードや不正なデータを効果的に検出・遮断することが可能です。

具体的には、メールの添付ファイルをスキャンしたり、Webページの内容を分析したりすることで、従来のパケットフィルタリングでは発見できない脅威を発見できます。ただし、詳細な検査を行う分、通信の遅延が発生する可能性があり、運用には高度な専門知識が求められます。

サーキットレベルゲートウェイ型の仕組み

サーキットレベルゲートウェイ型は、セッション層での通信制御に特化したファイアウォール技術です。この方式では、通信セッションの確立時に認証と検証を実施し、信頼できる接続と判断された後は、データの中身に関与せず接続の管理のみを行います。

初期認証により高いセキュリティを確保しながら、確立後の通信では高いパフォーマンスを維持できる特徴があります。VPNやリモートアクセス環境での利用に適しており、認証済みユーザーに対してスムーズな通信環境を提供できます。しかし、セッション確立後の通信内容については詳細な監視が困難であるため、他の方式との組み合わせが効果的とされています。

動的パケットフィルタリング(ステートフルインスペクション)

動的パケットフィルタリングは、従来の静的なパケットフィルタリングを進化させた技術として注目されています。この手法では、通信の状態(ステート)を監視し、正常な通信の流れを記録・追跡することで、より精密な制御を実現します。

例えば、内部から外部へのリクエストに対する応答のみを自動的に許可し、通信終了後は自動的に許可を解除するといった動的な制御が可能です。これにより、不正な外部からの接続試行を効果的に遮断しながら、正当な業務通信は円滑に処理できます。現在の多くのファイアウォール製品で標準搭載されており、セキュリティと利便性のバランスを取った運用を支援しています。

ファイアウォールの種類と分類

企業のニーズに応じた最適なファイアウォール選択のため、様々な分類方法と特徴を整理してご紹介します。

提供形態による分類(ハードウェア・ソフトウェア)

ファイアウォールは提供形態によって、ハードウェア型とソフトウェア型に分けられます。ハードウェア型は専用機器として提供され、大量のトラフィックを効率的に処理できる性能や安定性が特長です。専用プロセッサや大容量メモリを搭載することで高い処理能力を発揮し、企業向けの高度なセキュリティ機能も備えています。ただし初期投資や設置スペースが必要なため、主に中規模以上の企業での導入が一般的です。

一方、ソフトウェア型は既存サーバーやPCにインストールする方式で、コストを抑えつつ柔軟に導入できます。カスタマイズ性が高く、既存環境を有効活用できる点が強みであり、中小規模の企業に適した選択肢となります。

保護対象による分類(ネットワーク・パーソナル)

保護対象の範囲によって、ネットワークファイアウォールとパーソナルファイアウォールに分類されます。ネットワークファイアウォールは企業や組織全体を外部脅威から守るために境界に設置され、統一的なポリシーで大規模なトラフィックを処理しつつ、集中管理による効率的な運用が可能です。企業全体のセキュリティ基盤を支える存在といえます。

一方、パーソナルファイアウォールはPCやモバイル端末など個々の機器に導入され、アプリケーションごとに通信制御を行える点が特徴です。多くのOSに標準機能として備わっており、特にリモートワーク環境では社外から接続する端末を守る上で重要な役割を果たします。

次世代ファイアウォール(NGFW)とは

次世代ファイアウォール(NGFW:Next Generation Firewall)は、従来のファイアウォール機能に加え、侵入防止システム(IPS)、アプリケーション制御、Webフィルタリングなどを統合した高度な防御製品です。Deep Packet Inspection技術により通信内容を詳細に検査し、暗号化されたトラフィックに潜む脅威にも対応可能です。

また、脅威インテリジェンスを活用して最新の攻撃パターンに即応でき、セキュリティを自動的に強化します。さらに、業務で利用されるクラウドサービスやアプリを可視化し、利用状況を把握した上で細やかな制御を実現できる点も特徴です。多層防御の中核として、企業のセキュリティ体制を支える不可欠な存在となっています。

クラウド型・オンプレミス型の違い

運用環境とインフラストラクチャにより、クラウド型とオンプレミス型のファイアウォールが選択できます。クラウド型ファイアウォールは、クラウドサービスプロバイダーが提供するインフラストラクチャ上で動作し、専用ハードウェアの購入が不要なため大幅な初期投資の抑制が可能です。クラウドサービスプロバイダーによる24時間体制での運用管理により、企業の内部IT部門の負担を大幅に軽減できます。需要の変動に応じて処理能力を柔軟に拡張できる高いスケーラビリティを持ち、インターネット接続があればどこからでもアクセス制御が可能で、グローバルに展開する企業のリモートワーク環境に最適です。

オンプレミス型ファイアウォールは、企業が自社のデータセンターやサーバールーム内に設置して運用する形態です。すべてのデータが自社管理下にあるため、機密性の高い情報を完全に統制でき、組織固有の要件に応じた細やかなカスタマイズが可能です。ただし、運用管理の専門知識と継続的な保守が必要となります。

ファイアウォールとその他セキュリティ製品との違いと連携

包括的なセキュリティ対策の構築に向けて、ファイアウォールと関連技術との関係性や連携のポイントを解説します。

WAF(Webアプリケーションファイアウォール)との違い

WAFとファイアウォールは、保護対象とする通信レイヤーが根本的に異なります。

従来のファイアウォールがネットワーク層(OSI参照モデルの第3-4層)での制御を行うのに対し、WAFはアプリケーション層(第7層)でのWebアプリケーション専用の保護を提供します。従来のファイアウォールはIPアドレスやポート番号による基本的な通信制御を行い、ネットワークレベルでの包括的な防御と高速な処理能力を特徴とします。

一方、WAFはHTTPリクエストの内容を詳細に検査し、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといったWebアプリケーション特有の攻撃に特化した防御を提供します。両者は補完関係にあり、多層防御の観点から組み合わせることで、より強固なセキュリティ環境を構築できます。

WAFの詳細な機能について詳しく知りたい方は、「WAFとは?Webアプリケーションを守る最新セキュリティ対策を解説」も併せてご覧ください。

IDS/IPS(侵入検知・防止システム)との違い

IDS(侵入検知システム)とIPS(侵入防止システム)は、ファイアウォールと補完関係にあるセキュリティ製品です。ファイアウォールは通信の許可・拒否を基本機能とする予防的防御を担い、既知のルールに基づく制御により境界防御の第一線を担当します。IDSは不正侵入の検知と通報を行い、ネットワークトラフィックの監視・分析によりセキュリティインシデントの早期発見を専門とします。

IPSは検知した脅威の自動遮断を実行し、リアルタイムでの脅威対応と動的な防御ポリシーの適用を行います。ファイアウォールが予防的な境界防御を担う一方、IDS/IPSは侵入後の検知・対処を専門とするため、多層防御の観点から両者の組み合わせが効果的とされています。これらのシステムを連携させることで、包括的なセキュリティ体制を構築できます。

UTM(統合脅威管理)との関係

UTM(Unified Threat Management)は、ファイアウォール、IPS、アンチウイルス、Webフィルタリングなどの複数のセキュリティ機能を単一のアプライアンスに統合したソリューションです。UTMの主な利点として、単一の管理画面での運用による管理の簡素化、個別製品購入と比較した経済性によるコスト削減、物理的な設置面積の削減、各機能間での統合された脅威情報の共有があります。

一方で、全機能が同時に停止する可能性がある単一障害点となるリスクや、専門製品ほどの高度な機能は期待できない場合があることを考慮する必要があります。中小企業において、限られたIT資源で包括的なセキュリティ対策を実現する手段として注目されており、運用コストと管理負荷の削減を図りながら、必要なセキュリティ機能を提供できます。

UTMの詳細な機能について詳しく知りたい方は、「UTMとは?企業のセキュリティ強化に不可欠な統合脅威管理をわかりやすく解説」も併せてご覧ください。

多層防御におけるファイアウォールの位置づけ

現代のサイバーセキュリティにおいて、単一の防御手段に依存するのではなく、複数の防御層を組み合わせた多層防御の考え方が主流となっています。多層防御における各層の役割として、境界防御層ではファイアウォールが外部からの基本的な脅威を第一段階で遮断し、アプリケーション防御層ではWAFがWebアプリケーション特有の攻撃を防御します。

さらに、侵入検知・防止層ではIDS/IPSが内部への侵入を検知・防止し、エンドポイント防御層では個々の端末レベルでの保護を提供します。この体系において、ファイアウォールは最前線の境界防御として位置づけられ、外部からの基本的な脅威を第一段階で遮断する役割を担います。その後段にWAF、IDS/IPS、エンドポイントセキュリティなどを配置することで、段階的かつ包括的な防御体制を構築でき、一つの防御層が突破されても他の層で脅威を阻止できる堅牢なセキュリティ環境を実現できます。

ファイアウォール活用で築く強固なセキュリティ体制

ファイアウォールは、企業のサイバーセキュリティ戦略において中核的な役割を果たす重要な防御システムです。パケットフィルタリング、アプリケーションゲートウェイ、サーキットレベルゲートウェイといった基本的な動作原理を理解し、自社の環境や要件に適した種類を選択することが成功の鍵となります。また、WAFやIDS/IPSとの適切な連携により、多層防御体制を構築することで、より強固なセキュリティ環境を実現できるでしょう。

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