レガシーシステムとは?
IT人材不足時代における脱却方法を解説

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課題解決のためのノウハウ

企業のDX推進において、レガシーシステムの存在が深刻な障壁となっています。「2025年の崖」を迎えた現在、IPAの「DX動向2025」によると依然として約80%の企業が何らかのレガシーシステムを抱えており、年間最大12兆円の経済損失リスクに直面する可能性があります。老朽化したシステムは保守コストの増大やセキュリティリスクの上昇を招き、DXの実現を妨げる要因です。本記事では、レガシーシステムの定義から具体的な問題点、モダナイゼーションやマイグレーションなど3つの脱却方法まで、実務的な観点から解説します。

レガシーシステムとは?定義と5つの問題点

長年使用されてきた既存システムが企業の成長を阻害する要因となるケースが増えています。レガシーシステムの定義から、企業が直面する具体的な課題まで整理していきます。

レガシーシステムの定義

レガシーシステムとは、新しい技術の登場により相対的に古くなった既存のコンピューターシステムを指します。主に1980年代に導入されたメインフレームやオフコン(オフィスコンピューター)が代表例ですが、2000年前後に導入されたオープン系システムも現在ではレガシー化が進んでいます。

技術面の老朽化だけでなく、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化などの問題を抱え、経営・事業戦略上の足かせとなるシステムが該当します。つまり、単に古いシステムというだけでなく、ビジネス上の課題を引き起こすシステムこそがレガシーシステムなのです。

レガシーシステムが生まれる要因

レガシーシステムは突然生まれるものではなく、企業活動の中で徐々に形成されます。リソース不足により古いシステムの刷新が先送りされるケース、部門ごとのカスタマイズによりシステムが肥大化・複雑化するケース、担当者の異動や退職でシステムの全体像を理解する人がいなくなるケースなどが主な要因です。

さらに、外部企業への開発丸投げにより自社のシステム理解が浅くなることも、レガシー化を加速させる要因となります。このように、日常的な運用の中で少しずつ蓄積された問題が、気づいたときには取り返しのつかない状態になっているのです。

レガシーシステムが抱える5つの課題

企業が直面するレガシーシステムの問題は多岐にわたります。以下の5つの課題は、企業の競争力を大きく損なう可能性があります。

保守・運用コストの増大

旧世代の技術を理解できる人材が減少し、部品調達も困難になるため、保守に多額の費用がかかります。その結果、IT予算の大部分が既存システムの維持に使われ、新規システムへの投資余力を奪います。

セキュリティリスクの増加

サポート終了により適切な保守が困難になり、最新のセキュリティ基準に非対応となります。サイバー攻撃の標的となるリスクが高まり、企業の信頼性に直結する問題です。

DX推進の障壁

クラウドやAIなど最新技術との連携が困難で、データ活用やビジネス変革を阻害します。競合他社がデジタル技術で優位に立つ中、取り残される原因となります。

技術継承の困難化

システムを理解する人材の退職や高齢化により、属人化が進んでいます。誰もシステムの全体像を把握できない状態では、トラブル対応も困難になります。

市場変化への対応力低下

システムの機能追加や改修に多くの時間がかかり、デジタル競争で後れを取ります。ビジネス環境の変化に素早く対応できないことは、企業存続にも関わる問題です。

「2025年の崖」を迎えた日本企業の現状と継続するリスク

2018年に経済産業省が警告した「2025年の崖」を迎えた現在、日本企業のレガシーシステム刷新はどこまで進んでいるのでしょうか。最新データをもとに現状と今後の見通しを分析します。

「2025年の崖」とは

「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」で示された概念です。レガシーシステムの刷新が進まない場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生するリスクを指しています。

当時の試算では、2025年には21年以上稼働している基幹系システムが約6割に達し、IT人材不足も約43万人に拡大すると予測されていました。この経済損失は、システムの維持管理費用の増大だけでなく、データ活用の遅れによる機会損失、サイバーセキュリティリスクの高まり、そして市場の変化に対応できないことによる競争力低下など、複合的な要因から生じるものです。デジタル化が進む現代において、レガシーシステムの放置は企業の存続そのものを脅かす問題となっています。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服と DXの本格的な展開~|経済産業省

現在のレガシーシステム刷新状況

IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」によると、「レガシーシステムはない」と回答した日本企業は20.0%にとどまり、80%の企業が何らかのレガシーシステムを抱えています。内訳を見ると「一部領域にレガシーシステムが残っている」が34.2%、「半分程度がレガシーシステムである」が13.0%、「ほとんどがレガシーシステムである」が15.5%となっています。特に「ほとんどがレガシーシステムである」企業の割合は、米国やドイツといった海外企業と比較して大きく後れをとっており、日本のDX推進における深刻な課題が浮き彫りになっています。

参考:DX動向2025|IPA 独立行政法人情報処理推進機構

「2025年の崖」から継続するリスク

「2025年の崖」は2025年で突然終わるものではないという認識が必要です。2025年は本格的なリスク顕在化の始まりに過ぎず、対処しなければ2026年以降もリスクは継続・拡大します。

経済産業省も2025年5月に「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を公表し、継続的な取り組みの必要性を強調しています。システム障害の発生数が3倍になるとの試算もあり、早急な対応が求められます。対策を先送りにすればするほど、システムの複雑化と人材不足が深刻化し、脱却のハードルは高まる一方です。

参考:レガシーシステムモダン化委員会総括レポート|経済産業省

レガシーシステムから脱却する3つの方法

レガシーシステムからの脱却には、企業の状況や予算に応じた適切な手法の選択が求められます。ここでは主要な3つのアプローチを確認していきましょう。

モダナイゼーション

モダナイゼーションとは、既存のレガシーシステムを現代的な技術に適合させながら刷新する手法です。過去の資産を活かしながら最新技術に対応できるため、コストを抑えつつシステムの競争力を維持できます。リホスト(新しいシステム基盤への移行)、リライト(プログラミング言語の書き換え)、リプレイス(新しいパッケージソフトウェアへの移行)などの手法があり、企業の状況に応じて選択できます。既存システムの良い部分を残しながら段階的に刷新できるため、リスクを最小限に抑えられる点が大きなメリットです。

モダナイゼーションとマイグレーションの違いについて詳しく知りたい方は、「モダナイゼーションとマイグレーションの違いとは?システム刷新アプローチの判断基準を解説」も併せてご確認ください。

マイグレーション

マイグレーションとは、既存システムから全く新しいシステムへ完全に移行する手法です。「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」においても、レガシーシステムからの脱却において重要なアプローチの一つとして位置づけられています。システム全体を置き換えるため大規模なプロジェクトとなりますが、最新技術を最大限活用でき、レガシーシステムの問題を根本から解決できます。システム全体を見直す良い機会となるため、業務プロセスの最適化も同時に進めることができます。

クラウドの活用

クラウドサービスを活用することで、オンプレミスのレガシーシステムから柔軟で拡張性の高いシステムへ移行できます。初期投資を抑えられ、最新機能を常に利用できる点が大きなメリットです。SaaS型のパッケージシステムなら、業務をシステムに合わせる「Fit To Standard」の考え方で短期間での導入が可能になります。必要な時に必要な分だけリソースを利用できるため、電力消費を抑制しながら効率的なシステム運用を実現できます。また、クラウド環境では自動的にセキュリティアップデートが適用されるため、セキュリティリスクの低減にもつながります。

クラウド移行の具体的な課題と解決策については、「クラウド移行の課題とは?自社システムをスムーズに移行する方法を解説」もご覧ください。

また、クラウド移行の詳しい手順については、「オンプレミスからクラウドへの移行完全ガイド」も併せてご確認ください。


まとめ:2025年を迎えた今こそレガシーシステム脱却を加速させるとき

「2025年の崖」は始まったばかりであり、対策を進めるのに遅すぎることはありません。レガシーシステムからの脱却を成功させるには、まずシステムの現状を正確に把握し、優先順位をつけて段階的に進めることが不可欠です。モダナイゼーション、マイグレーション、クラウド活用など、自社のビジネス戦略に最適な方法を選択し、持続可能なデジタル変革を実現していきましょう。

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よくあるご質問

Q. レガシーシステムとは

A. レガシーシステムとは、新しい技術の登場により相対的に古くなった既存のコンピューターシステムを指します。技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化などの問題を抱え、経営・事業戦略上の足かせとなるシステムです。

詳しくは「レガシーシステムの定義」をご覧ください。

Q. レガシーシステムが抱える課題

A. レガシーシステムが抱える課題として次の5つが挙げられます。

  1. 保守・運用コストの増大:旧世代の技術を理解できる人材が減少し、部品調達も困難になるため、保守に多額の費用がかかる
  2. セキュリティリスクの増加:サポート終了により適切な保守が困難になり、最新のセキュリティ基準に対応できない
  3. DX推進の障壁:クラウドやAIなど最新技術との連携が困難で、データ活用やビジネス変革を阻害
  4. 技術継承の困難化:システムを理解する人材の退職や高齢化により、属人化が進行
  5. 市場変化への対応力低下:システムの機能追加や改修に多くの時間がかかり、デジタル競争で後れを取る

詳しくは「レガシーシステムが抱える5つの課題」をご覧ください。

Q. レガシーシステムから脱却するためには

A. 主に3つの方法があります。既存システムを現代的な技術に適合させながら刷新する「モダナイゼーション」、既存システムから全く新しいシステムへ完全に移行する「マイグレーション」、そしてオンプレミスから柔軟で拡張性の高い「クラウドの活用」です。

詳しくは「レガシーシステムから脱却する3つの方法」をご覧ください。