GPUサーバーとは?GPUサーバーのメリットや高密度サーバーのデータセンター運用のポイントを解説

課題解決のためのノウハウ
こんにちは、STNetの髙橋 伸昌です。データセンター「Powerico(パワリコ)」の設備運用を担当しています。
時間の経過とともに管理が難しくなる汎用機や特殊筐体といったレガシーシステムは、企業にとっての課題です。多くのシステム担当者が持つ悩みかも知れません。この問題が難しいのは、さまざまな事情から一掃ができないということ。このお悩み、「なくす」のではなく「外部に管理を任せる」ことに視点を変えることで解決できるかもしれません。委託先としては、設備が整っているデータセンターが最適です。
今回のコラムでは、社内で抱えるレガシーシステムをデータセンターに預けるケースを想定し、移設する際に知っておきたいポイントを解説します。
まず、レガシーシステムの定義について確認しておきましょう。「レガシー(legacy)」は遺産を意味する言葉ですが、コンピューターに関する文脈では「過去の技術や仕組み」を指します。
この記事で想定するレガシーシステムは、主に汎用機です。汎用機とはメインフレームのことで、企業の基幹業務といった大規模なデータ処理を扱うコンピューターを指しています。それ以前のコンピューターがある程度限定的な用途でしか使えなかったことに対して、さまざまな用途に使える汎用性の高さからこのような名前がついています。最近では、ホストコンピューターという呼称の方がピンと来る方も多いかもしれません。
こうしたレガシーシステムは、その特性上大型化しやすいだけでなく、企業の用途に合わせた特殊な筐体も多くなっています。
こうした汎用機の多くは1980年代に登場したもので、40年以上にわたって使われているものもあります。当然、現在のインターネットを中心としたオープンで柔軟なIT環境や設計思想に合わない部分が出てくるため、できれば刷新したいものです。にもかかわらず、レガシーシステムの刷新が非常に困難であることにはいくつか理由があります。
刷新するために基幹システムをストップすれば、長期の業務停止は避けられず、その一方でシステムの移行はリスクを伴う大きなプロジェクトにならざるを得ません。
レガシーシステムは、しばしばほかのシステムやアプリケーションと密接に統合されており、これらの相互依存性を解消することは技術的に非常に複雑で、難しいという事情があります。
こうしたレガシーシステム刷新を手掛けられるITベンダーや、IT人材そのものが不足しているという事情もあります。
レガシーシステムから新システムへの移行は、多大なコストを要します。
このように刷新のハードルが高いレガシーシステムですが、今後も管理し続けるためにはスペースの恒久的な確保が必要であること、管理する担当者の手間や工数がかかることなどにより、企業にとっては大きな負担を抱えることになります。
こうしたレガシーシステムの管理の問題点を解決するひとつの手段が、設備の整ったデータセンターに筐体ごと預けてしまうというものです。
データベースやアプリケーションをクラウドに移行させるという手段も考えられますが、インターネットを介した環境へ移行する手間がかかったり、クラウドセキュリティ対策のように新たに取り組まなければならない課題が発生したりします。こうした点を考慮すると、現在のレガシーシステムの管理を外部に委託し、システム利用環境は大きく変えないという選択肢の方が現実的といえるでしょう。
ここからは、レガシーシステムをデータセンターへ移設するにあたって、注意したいポイントを具体的に解説しています。
データセンターが提供している標準ラックではなく、レガシーシステムや持ち込みラックを設置したい、あるいは、専用の区画やケージを作り、その中での保管を希望されるお客さまもいらっしゃることでしょう。実際に持ち込みラックを設置する際の注意点について解説します。
レガシーシステムを設置するにあたって一番の問題は、機器の重量になるのではないでしょうか。レガシーシステムはサイズも大きく、重くなることがあります。利用したいデータセンターの床がその荷重に耐えられるものなのか、事前の確認が必要です。
専用のケージの設置にあたって注意したいのは、ケージを作るためには標準ラックが設置してある既存スペースを使わなければいけないということです。これは、余分なスペースの契約が必要になってくることを意味します。また、そもそも建物構造的にケージが作れないこともあるでしょう。データセンターを選定するにあたっては、事前に確認しておきたいポイントです。
レガシーシステムには水冷の冷却方式で稼働している筐体もあります。サーバールームへの液体の持ち込みを禁止しているデータセンターもあるので、水冷冷却方式のレガシーシステムが持ち込みできるのかを確認しておきましょう。
レガシーシステムは、通常とは異なる筐体やサイズ、重さになることがあります。設置する環境が整っていても、実際に現地まで運ぶことができるのか、搬入搬出時はどのようなことに気をつけるべきなのか、疑問を持たれる担当者もいることでしょう。
結論から言えば、作業前には必ず現地確認することがおすすめです。その際のポイントについて、以下で見ていきましょう。
まず、データセンター内の動線(廊下の幅や天井の高さなど)を確認しましょう。レガシーシステムはサイズや重量が特殊であることがあり、いきなり搬入しようとすると、サーバールームまでの廊下の幅が十分ではなかったり、エレベーターの積載重量を超過していたり、といった問題が発生する可能性があります。搬入の際には、各データセンターで決められている搬入搬出ルールに沿って行い、共用部の床や壁に養生が必要な場合は忘れずに実施しましょう。
また、搬入だけではなく搬出時にも注意が必要です。搬入後にデータセンター内で、建物構成が変更されている場合があります。搬入時に問題がなかったから大丈夫と決めつけるのではなく、作業前にはあらためて動線と搬入搬出ルールを確認しておきましょう。
加えて、忘れがちになるのが、レガシーシステムが木枠で梱包されているケースです。この場合、キッティングルームのような、木枠を開梱する場所の確保が必要になります。事前にどこで開梱するか、確認を忘れずに行いましょう。
さらに、大型トラックを使用する際にも注意が必要です。レガシーシステムやそのほかの機材の大掛かりな搬入搬出に大型トラックを使うとして、全長が長い大型トラックが入れる道幅を確保できるのか、大型トラックがデータセンターの荷さばき室へ入庫できるのか。実際の積み込み積み下ろしを想定して確認しておきたいポイントです。
レガシーシステムのなかには、特定の電力要件が必要となるものがあります。
一般的にレガシーシステムには、単相、三相電源が必要になるため、現在使用している筐体がどのような電源を使っているのか、移設したいデータセンターで提供可能なのか確認しておきましょう。
また、電源の確保だけではなく、コンセント差込口にも注意が必要です。
コンセントの形状は機器ごとに違います。持ち込もうとしているレガシーシステムの電源は、データセンターが提供するコンセント差込口に差し込むことができるのか、事前確認しておきましょう。
電源構成に関しては、1系・2系のように別の電源系統を用意し、電源を冗長化することも重要です。データセンターでは、サーバールーム向けUPS(無停電電源装置)が設置されていることがあります。UPSは商用電源が消失した場合を想定していますが、UPSが何分間保証しているのか確認することも、電源の品質という観点から重要です。
なお、建物が頑丈であっても、自然災害やそのほかの緊急時に電力会社からの電源供給がストップする可能性はゼロではありません。最悪の事態を考えて、多くのデータセンターでは非常用発電機を備えていますが、無給油で何時間電力供給がもつのか、さらには自然災害が長引いた場合に燃料の確保をどのように行うのかも確認しておきましょう。
加えて確認しておきたいのが、UPSや非常用発電機の点検頻度です。非常時の電源確保はデータセンターにとっての死活問題でもあり、大規模停電が発生したので発電機を回したら動かなかったでは話になりません。重要設備をどのくらいの頻度で点検しているのかも大切なポイントといえるでしょう。
レガシーシステムを含むサーバーやネットワーク機器を安全に運用するためには、適切な温度、湿度の範囲で行う必要があります。
まず、温度についての注意点です。通常、機器が稼働しているとどうしても熱が発生します。当然、機器ごとに冷却用のファンが設置されていますが、冷却するための空気が温かいままでは意味がありません。つまり、サーバールームそのものの温度が適切に管理されていることが大切なのです。
また、見落とされがちなポイントですが、温度だけではなく湿度の管理も重要です。湿度が高いと結露が発生する原因にもなり、機器故障につながるリスクとなります。実は、湿度は高いだけではなく低い状態でも問題で、この場合には静電気が発生しやすい状態となってしまいます。当然、静電気も機器故障につながるリスクです。
こうしたことからも温湿度管理がとても重要であることがわかりますが、自社内で24時間365日適切な温湿度管理を行うのは容易ではありません。通常、データセンターでは温湿度管理が徹底されており、SLA(サービス水準合意)で定めている場合もあるので安心です。
多くのレガシーシステムには、今まで蓄積したお客さまの貴重なデータやシステムが含まれています。このため、入退管理システム、防犯システムなど、物理的なセキュリティ対策は非常に重要な要素といえます。この観点からも、データセンターへの移設を考えてみましょう。
まず、入退管理システムについてですが、データセンターは商業施設のように誰でも入れる建物ではありません。特にレガシーシステムが設置されるサーバールームにはお客さまから預かった大切なデータが置かれているため、認証を受けた人物しか入室できません。いつ、誰が、どこに入室したのかが正確に記録されています。
また、データセンターには、監視カメラが屋内・屋外の至るところに設置されており、誰がどのエリアに入り、何をしたのかが記録されています。死角の多いサーバールームでの不正行為を防止するために、必須の防犯システムといえるでしょう。
なお、入退記録や監視カメラの映像は個人情報に該当します。監査対応などで記録提出が必要な場合に、委託先であるデータセンターから記録の開示や報告が可能なのか、事前に確認しておきましょう。
レガシーシステムの管理について具体的なシーンの想定を含めて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
冒頭でも述べたように、汎用機や特殊筐体などのレガシーシステムを管理することは企業にとって大きな負担になるものの、一気に刷新するには高いハードルがあることも事実です。今回は、ひとつの解決策としてレガシーシステムをデータセンターに丸ごと移設するケースについてご紹介しました。ご担当者さまが実際に移設先を考えるとき、注意すべきポイントの参考になれば幸いです。
株式会社STNet データセンターサービス部
データセンター設備課
髙橋 伸昌
2019年よりデータセンター「Powerico(パワリコ)」の設備運用業務に従事。
データセンター電気設備の運用管理が主な担当。データセンターの受変電設備の維持・管理に従事するとともに、
定期点検や修繕、サーバーラックへの安定した電源供給を考慮した設備停止を行っている。
不測の事態を想定し、電源設備障害訓練も実施。日ごろからお客さま、委託業者とのコミュニケーションを大切にし、
円滑な対応が可能になるよう努めている。
※このプロフィールは執筆時点のものです。