UTMとは?
企業のセキュリティ強化に不可欠な統合脅威管理をわかりやすく解説

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課題解決のためのノウハウ

サイバー攻撃が日々進化する中、企業のセキュリティ対策の重要度はますます高まっています。しかし、多岐にわたる脅威に個別に対応するのは困難です。そこで注目されているのが「UTM(統合脅威管理)」です。本記事では、UTMの基本から導入のメリット、選定のポイントまでわかりやすく解説します。

UTM(Unified Threat Management)の基本概念

企業のネットワークセキュリティにおいて、多様化する脅威への対策は日々の課題となっています。UTMは、この課題に対する効果的なソリューションとして注目を集めています。

UTMの定義と必要性

UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)は、ファイアウォールやアンチウイルスなど複数のセキュリティ機能を一つの機器やソフトウェアに統合したセキュリティソリューションです。従来は個別に導入・管理していたファイアウォール、アンチウイルス、不正侵入防止などの機能を一元化することで、包括的なセキュリティ対策を実現します。

昨今、複数の手法を組み合わせた高度なサイバー攻撃が増加しており、個別の対策では十分な防御が難しくなっています。UTMは、これらの脅威に対して統合的なアプローチで対応します。

最新のUTMでは、AI技術を活用した高度な脅威検知や、ゼロトラストセキュリティの概念を取り入れた製品も登場しています。AI技術により、従来の定義ベースの検知では発見が困難だった新種のマルウェアや不正アクセスの検知が可能になりつつあります。また、ゼロトラストセキュリティの考え方を取り入れ、「信頼せず、常に検証する」という原則に基づき、より細かなアクセス制御も実現しています。

ゼロトラストセキュリティについて詳しくは、お役立ち資料「ゼロトラストセキュリティ導入ガイド 企業のためのネットワーク戦略」をダウンロードしてぜひご覧ください。

UTMの仕組みと主な構成要素

UTMは通常、企業のネットワーク境界に設置され、内外のすべての通信をリアルタイムで監視・制御します。主な構成要素は以下の通りです。

  • ファイアウォール:通信の制御と不正アクセスの防止
  • アンチウイルス:マルウェアの検知と駆除
  • 侵入検知/防止システム(IDS/IPS):不正な通信パターンの検知と遮断
  • Webフィルタリング:有害サイトへのアクセス制御

これらの機能が連携することで、多層的な防御体制を構築します。例えば、Webフィルタリングで不正なサイトへのアクセスを防ぎつつ、万が一のマルウェア侵入に対してはアンチウイルスが対応するという具合です。

最新のUTMでは、ファイルの動作を分析する技術により、既知の脅威だけでなく、新種のマルウェアなど未知の脅威も検知・防御できるものが登場しています。

このようにUTMは、複雑化するサイバー脅威に対して、統合的かつ効率的な防御を実現する効果的なソリューションです。

UTMの主要機能

UTMは複数のセキュリティ機能を1つのプラットフォームに統合し、効率的なネットワーク保護を実現します。UTMの主要な機能を解説します。

ファイアウォール

ネットワークの出入口に位置し、トラフィックを監視・制御して不正アクセスを遮断します。内部ネットワークと外部ネットワークの境界で動作し、設定されたルールに基づいて通信の許可・拒否を判断して、安全な通信のみを許可します。例えば、社内のサーバーに対する外部からの不正アクセスを防いだり、従業員が業務に関係のないウェブサイトにアクセスすることを制限したりが可能です。

ファイアウォールについて詳しくは、「ファイアウォールの基本ガイド!運用のポイントまで詳しく解説」をご覧ください。

アンチウイルス/アンチマルウェア

ネットワークを通過するファイルやデータを常時スキャンし、ウイルスやマルウェアを検出・駆除します。定期的に更新されるウイルス定義ファイルを使用し、最新の脅威にも対応します。例えば、従業員がメールの添付ファイルを開く前に自動的にスキャンし、ウイルスが含まれていた場合は警告を出したり、自動的に隔離したりします。

侵入検知/防止システム(IDS/IPS)

ネットワーク上の不審な活動をリアルタイムで監視し、攻撃パターンを検知して、サイバー攻撃を早期に発見・防止します。IDS(Intrusion Detection System:不正侵入検知システム)は検知のみを行い、IPS(Intrusion Prevention System:侵入防御システム)は検知した攻撃を自動的にブロックする機能を持ちます。例えば、ハッカーが社内ネットワークへの侵入を試みた場合、その不審な活動を検知し、管理者に通知します。IPSの場合は、さらに自動的にその侵入を阻止します。

Webフィルタリング

URLカテゴリやキーワードベースでフィルタリングを行い、従業員による不適切なWebサイトへのアクセスを制限して、マルウェア感染リスクを低減します。例えば、ギャンブルサイトや成人向けコンテンツなど、業務に関係のないウェブサイトへのアクセスを自動的にブロックします。これにより、セキュリティリスクを低減します。

VPN(仮想プライベートネットワーク)

インターネットなどの公衆ネットワーク上に、暗号化された安全な通信経路を作り出す機能です。テレワークが一般化した昨今において、VPNの需要は急速に高まっています。例えば、在宅勤務の従業員が会社のネットワークに安全にアクセスしたり、複数の支社間でセキュアに情報をやり取りしたりする際に不可欠です。UTMに組み込まれたVPN機能は、設定や管理が容易で、他のセキュリティ機能と連携できる利点があります。

VPNについて詳しくは、「クラウドのセキュリティ対策にVPN接続?メリットや接続方法を解説」をご覧ください。

アプリケーション制御

アプリケーション制御は、ネットワーク上で使用されるアプリケーションを識別し、利用状況を適切にコントロールする機能です。例えば、業務に不要なSNSアプリの使用を制限したり、ファイル共有アプリの使用を監視したりできます。これにより、生産性の向上やデータ漏洩リスクの軽減が期待できます。また、帯域を大量に消費するアプリケーションの使用を制御することで、ネットワークのパフォーマンス維持にも役立ちます。

このように、UTMは複数のセキュリティ機能を統合することで、包括的なネットワーク保護を提供します。各機能が連携して動作することにより、単体のセキュリティ製品では実現できない、効率的で強固な防御を実現します。

ネットワークセキュリティについて詳しくは、「ネットワークセキュリティとは?企業が直面するリスクと対策の全貌を解説!」をご覧ください。

UTMとファイアウォールの違い

従来のファイアウォールだけでは、進化し続けるサイバー攻撃への対応が困難になっています。UTMは、この課題に対する解決策として注目を集めています。

機能の範囲と統合性

ファイアウォールは主にネットワークの境界でのトラフィック制御を担当しますが、UTMはより包括的なセキュリティ機能を提供します。アンチウイルス、Webフィルタリング、不正侵入防止など、複数のセキュリティ機能を1つのプラットフォームに統合することで、効率的な運用と一元管理を実現します。

脅威への対応能力

UTMはファイアウォールの基本機能に加え、高度な脅威検知・防御機能を備えています。ファイルの動作分析や不審な通信パターンの検知により、新種のマルウェアやゼロデイ脆弱性(※)にも柔軟に対応でき、より包括的なセキュリティを提供します。

※ ゼロデイ脆弱性とは、ソフトウェアやシステムに存在する未知の脆弱性のことを指します。この脆弱性が発見されてから修正プログラム(パッチ)が提供されるまでの期間、システムは攻撃に対して無防備な状態になります。

このように、UTMは従来のファイアウォールの機能を包含しながら、より包括的で強固なセキュリティ対策を提供します。

UTM導入のメリットとデメリット

UTMの導入を検討する際は、企業の規模や要件に応じて、そのメリットとデメリットを慎重に確認する必要があります。

メリット

UTM導入の最大のメリットは、複数のセキュリティ機能が連携して動作することによる、強固な防御体制の構築です。統合的なセキュリティ対策により、従来の個別製品では見落としがちだった脅威も効果的に検知・防御できます。

また、一元管理による運用効率の向上も大切なメリットです。単一のインターフェースですべての機能を管理できるため、セキュリティ状況の把握が容易になり、運用担当者の負担を大幅に軽減できます。

さらに、個別の製品を購入・管理する場合と比べて、総合的なコストを削減できる点も見逃せません。管理工数の削減により人件費の抑制も期待できます。

デメリット

UTMには考慮すべき課題もあります。多くの機能を1つの機器に集約することで、ネットワークのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。特に全機能を有効にした場合、処理負荷が増加し、通信速度が低下することがあります。

また、個別製品と比較して細かいカスタマイズが制限される場合があり、特殊な要件への対応が難しいケースも考えられます。

コスト面では、初期導入時の投資に加え、ライセンス更新や保守サポートなど、継続的な費用が発生することを考慮する必要があります。

さらに、多機能ゆえの設定の複雑さも課題となります。適切な設定や運用には専門知識が必要となる場合があり、運用体制の整備も必須です。

UTM導入の検討においては、これらのメリットとデメリットを自社の環境や要件に照らし合わせて、総合的に判断することが大切です。

UTM選定のポイント

UTMの導入は企業のセキュリティ基盤を左右する重要な決定事項となります。製品選定時の主なポイントを解説します。

処理性能と拡張性

UTM選定の基本となるのが、処理性能と拡張性です。現在のネットワーク利用状況だけでなく、将来的な利用量の増加も見据えて検討する必要があります。例えば、スループットなどが過小な性能では業務に支障をきたし、過大な性能では無駄なコストとなってしまいます。

セキュリティ機能の充実度

自社のセキュリティ要件に適合する機能が搭載されているかを確認します。ファイアウォール、アンチウイルス、不正侵入防止、VPNなど、必要な機能が十分に提供されているか、また、それらの機能の性能や精度も検証しましょう。

管理画面の使いやすさ

日常的な運用管理を行う管理画面の使いやすさは、運用効率に直結します。設定変更やログ確認などの基本操作が直感的に行えるか、運用担当者の視点で評価することが大切です。

ベンダーのサポート体制

セキュリティ製品において、ベンダーのサポート体制は必須の項目です。24時間365日の技術サポート提供の有無、セキュリティ情報の更新頻度、緊急時の対応体制などを詳しく確認します。特に、新たな脅威に関する情報の更新は、システムを最新の攻撃から守るために不可欠です。

コストパフォーマンス

製品選定では、初期導入費用だけでなく、ライセンス更新費用や保守費用などを含めた総所有コスト(TCO)を考慮する必要があります。投資対効果を正確に把握することで、適切な予算配分が可能となります。

TCOについて詳しくは、「クラウド時代のTCO戦略とは?IT投資を最適化する総所有コストの理解と管理」をご覧ください。

他システムとの連携

既存のITインフラやセキュリティツールとの連携も大切な選定基準です。スムーズなシステム統合により、効率的な運用と包括的なセキュリティ管理が実現できます。

これらのポイントを総合的に検討し、自社の環境と要件に最適なUTM製品を選定することが効果的なセキュリティ対策に導く鍵となります。

まとめ:現代のネットワークセキュリティにおいてUTMの存在は不可欠

UTMは、複雑化するサイバー脅威に対する効果的な防御手段として、今や企業のセキュリティ戦略に欠かせない存在となっています。AI技術の活用やゼロトラストセキュリティとの統合など、UTMの進化は今後も続くでしょう。企業は最新のトレンドを把握し、自社のセキュリティ体制を常に最適化していく必要があります。

UTMの導入を検討する際は、自社のIT基盤環境や要件を十分に分析し、適切なソリューションを選択することが重要です。

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UTMを効果的に活用することで、企業は複雑化するサイバー脅威から自社のシステムを守りつつ、IT部門の負担を軽減できます。これにより、セキュリティに関する懸念が減り、企業は本来のビジネス成長に注力しやすくなります。さらに、UTMを高速なSTIA回線と組み合わせることで、セキュリティと通信品質の両面で優れたネットワーク環境を実現できます。このような総合的なソリューションにより、企業は安全かつ効率的なIT基盤を構築し、デジタル時代の競争力を高めることができるのです。

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