ESGとは?意味やSDGs・CSRとの違い、
サステナブル経営への道筋を解説

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課題解決のためのノウハウ

ESG(Environment, Social, and Governance)は、企業の持続可能性や社会的責任を評価する重要な指標として、ビジネス界で急速に注目を集めています。デジタル技術の進化により、IT部門はESG推進の重要な担い手となっています。本記事では、経営者からIT担当者までが、ESGの意味を理解できるよう詳しく解説するとともに、IT活用によるESG取り組みのメリットと、そのための具体的な推進ステップを紹介します。

ESGの概要、SDGs・CSRとの違い

ESGの基本概念を理解し、類似概念との違いを明確にすることで、企業のサステナブル経営の基礎を築きます。

なぜIT部門がESGを理解する必要があるのか

企業のESG目標達成において、IT部門は重要な役割を担っています。環境面では、ITシステムの効率化やエネルギー使用量の最適化による環境負荷低減、社会面ではデータプライバシー保護と情報セキュリティの確保、ガバナンス面ではデジタル化による業務の透明性向上など、IT部門の取り組みはESG経営の成功に直結します。

ESGとは

ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス=企業統治(Governance)の頭文字を取った概念です。社会貢献活動のみならず、企業の持続可能な成長に不可欠な要素として位置付けられています。

環境面では、CO2排出量の削減や再生可能エネルギーの活用、廃棄物の適切な処理など、地球環境への配慮が対象となり、社会面では、従業員の働き方改革や人材育成、地域社会との共生などが含まれます。ガバナンス面では、経営の透明性確保や適切な情報開示、コンプライアンスの徹底などが求められます。これらの要素が総合的に評価され、企業の持続可能性が判断されます。

再生可能エネルギーについて詳しくは、「自然エネルギーと再生可能エネルギーの違いとは?重要なポイントを徹底解説」をご覧ください。

ESGが注目される背景

ESGへの注目が高まる背景には、グローバルな社会変化や環境問題の深刻化があります。気候変動や資源枯渇などの環境問題が顕在化し、国際的には2015年のパリ協定やSDGsの採択が大きな転換点となりました。また、企業の社会的影響力の増大に伴い、その責任も問われるようになっています。さらに、投資判断の基準としてもESGの存在感が増しています。長期的な企業価値の向上には、環境・社会課題への取り組みと適切な企業統治が不可欠との認識が広まっています。

参照:パリ協定|外務省

SDGsとの違い

SDGsは2030年までに達成すべき17の国際目標であり、全世界共通の持続可能な開発目標です。一方、ESGは企業評価の枠組みであり、企業のSDGs達成に向けた取り組みがESG評価にポジティブな影響を与えます。

例えば、SDGsの「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標に対して、企業が再生可能エネルギーの導入を進めることは、ESGの環境面での具体的な取り組みの一例です。SDGsが目指すべき方向性を示すのに対し、ESGはその実現に向けた企業の取り組みを体系的に示す役割を果たします。

参照:SDGsとは?|外務省

持続可能な社会への目標と企業の取り組みについて詳しくは、「持続可能な社会実現のために―再生可能エネルギー導入で企業ができる取り組みとは?」をご覧ください。

CSRとの違い

CSRは企業の自主的な社会貢献活動を指し、主に企業の善意による取り組みです。一方、ESGはより包括的で、企業価値の向上と直接的に結びついた経営戦略の一部として位置づけられます。

CSRが個別の社会貢献活動という側面が強いのに対し、ESGは経営戦略の中核要素として、環境・社会・ガバナンスの各側面から企業の持続可能性を高める取り組みを促進します。

参照:CSR(企業の社会的責任)|厚生労働省

企業がESGに取り組むメリット

ESGへの取り組みは、企業価値の向上や持続的な成長につながる多様なメリットをもたらします。特に、デジタル技術の活用は、これらのメリットを最大化する重要な役割を果たします。

投資家からの評価向上

ESG評価の高い企業への投資が増加しており、資金調達の幅が広がっています。特に、デジタル技術を活用した環境負荷の可視化や情報開示の充実は、投資家からの信頼獲得につながります。環境事業への投資を目的として発行される債券であるグリーンボンドの市場は年々拡大傾向にあり、環境配慮型の事業に対する投資機会が増加しています。こうした資金調達の多様化は、長期的な成長のための投資を可能にし、企業の持続的な発展を支える基盤となります。

リスク管理の強化

ESGへの取り組みは、将来的な法規制の強化を見据えた対応にもなります。デジタルツールを活用したコンプライアンス管理や環境データの収集により、環境規制や労働法制の厳格化などへの対応を効率化できます。また、データに基づく規制順守の姿勢は、企業の信頼性向上にもつながります。

イノベーションの促進

ESGの視点で業務プロセスを見直すことで、デジタル化による効率化が進み、コスト最適化につながります。例えば、クラウドサービスの活用やペーパーレス化は環境負荷を減らすと同時に、長期的なコスト最適化への効果をもたらします。IoTやAIなどのデジタル技術の活用が、新たなイノベーションを生む契機となります。

人材確保・育成

ESGを重視する企業の姿勢は、優秀な人材の採用と定着につながります。デジタルツールを活用した柔軟な働き方の実現や、ITスキル育成プログラムの提供により、従業員の仕事への意欲とモチベーション向上が期待できます。

ブランド価値の向上

ESGへの積極的な取り組みは、企業イメージの向上に直結します。デジタル技術を活用した情報発信や、環境データの可視化により、環境保護や社会貢献、透明性の高い経営への取り組みを効果的に示すことができます。これにより、消費者や取引先からの信頼獲得につながり、長期的な競争力強化が実現します。

サステナブル経営のための ESG推進ステップ

ESGを経営に組み込むための具体的なステップを理解し、実践することで、持続可能な企業価値の創造が可能となります。各ステップにおいて、IT部門は戦略的なデジタル基盤の構築や運用を通じて、ESG推進の実効性を高める重要な役割を担います。

Step1: 重要課題の特定

ESG課題のなかから自社にとって優先的に取り組むべき項目を特定します。データ分析ツールを用いて社会課題や事業リスクを洗い出し、自社への影響度と社会的重要度をチェックします。社内外の関係者の意見も考慮しながら、注力すべき課題を選定します。

Step2: 推進体制の構築

ESG推進を確実に実行するための体制を整備します。経営層主導のESG委員会を設置し、全社的な方針を決定します。IT部門も含め各部門にESG推進責任者を配置し、デジタル技術を活用した部門間の情報共有と連携を強化します。外部専門家の意見も取り入れ、客観的な視点を確保します。

Step3: 目標設定とKPI策定

特定された重要課題に基づいて、具体的な中長期目標を設定します。各部門でKPI(主要業績評価指標)を策定し、CO2排出量削減率や女性管理職比率など、具体的な指標を定めます。これらの目標達成に向けて、いつまでに何をどこまで達成するかの道筋を時系列で明確化します。

Step4: アクションプランの策定

Step3で設定した目標を達成するための具体的な実行計画を策定します。例えば、CO2削減なら省エネ機器の導入時期や範囲、必要な人材、予算、デジタル技術などの経営資源を適切に配分し、プロジェクト管理ツールを活用して実行スケジュールと担当部署を明確にします。

Step5: モニタリングとPDCAサイクルの実施

社内の情報システムを活用し、設定したKPIを定期的に測定して、進捗状況を可視化します。システムによる自動的なデータ収集と分析により、四半期ごとに進捗をチェックして課題を特定します。年に一度の見直しでは、収集したデータに基づいて目標と施策を見直し、必要に応じて調整します。このPDCAサイクルにより、継続的な改善を図ります。

Step6: 情報開示と外部評価への対応

ESG情報の収集・分析・報告プロセスを構築し、データの収集・分析・報告プロセスを効率化します。統合報告書やウェブサイトを通じて定期的に情報開示を自動化し、外部評価機関からの問い合わせに迅速かつ適切に対応できる体制を整え、企業の透明性と信頼性の向上を図ります。

ESG実現を成功させるためのキーポイント

ESGを効果的に推進し、企業価値の向上につなげるための重要なポイントを解説します。これらのポイントは、ESGを企業活動全体に統合し、持続可能な成長を実現するための基盤となります。

Point1: 経営戦略とESGの統合

ESGを企業の中期経営計画の中核に位置づけ、財務目標とESG目標の一貫性を確保します。ESGパフォーマンスと経営者報酬を連動させることで、経営層のコミットメントを強化し、全社的なESG推進の原動力とします。

Point2: 全社的な意識向上とスキル開発

経営層向けESGワークショップを定期的に開催し、リーダーシップの強化を図ります。従業員向けにはESG教育プログラムを導入し、全社的な理解と実践を促進します。また、ESG推進に関する社内の認定制度などを設け、取り組みの活性化と従業員全体のスキル向上、モチベーション維持を図ります。

Point3: 関係者との協力を強化

投資家向けに定期的な説明会を開き、ESGに関する戦略や進捗状況を共有します。また、顧客や取引先と連携し、ESGに関する取り組みを協力して進め、すべての事業プロセスにおいて取り組みを広げていきます。さらに、地域社会と積極的に対話し、その地域に根ざしたESG活動を推進します。

Point4: IT部門によるESG推進の具体化

環境(E)面では、オフィスのIT機器の省エネ化や環境配慮型システムの導入など、企業全体のITインフラのグリーン化を推進します。社会(S)面では、リモートワーク環境の整備やオンライン教育プラットフォームの提供により、多様な働き方や学びの機会を創出します。ガバナンス(G)面では、ERPシステムによる業務の可視化や、AIを活用した法務文書チェックなど、経営の透明性とコンプライアンスの強化に貢献します。経営層はこれらの取り組みを中期経営計画に組み込み、必要な投資判断を行います。

Point5: イノベーション創出に向けた組織文化の醸成

ESG課題の解決に向けた提案制度を設け、従業員のアイデアを積極的に取り入れます。さらに、他社や研究機関との協業により、新たなソリューションの開発を促進します。また、ESG関連の新規事業開発チームを設置し、権限を付与することで、革新的な取り組みの実現を目指します。

まとめ:企業がESGを推進する意義

本記事では、ESGの概要から具体的な取り組み方まで幅広く解説しました。ESGは企業の持続可能な成長を促進し、長期的な企業価値の向上に寄与する重要な経営テーマです。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)のそれぞれの領域で具体的な取り組みを進め、全社的に推進していくことが求められます。特にIT部門は、環境負荷低減やデータ管理の最適化を通じて、ESG推進の重要な役割を担います。

特に環境(E)への取り組みでは、IT部門による環境配慮型インフラの選択が重要な鍵となります。例えば、STNetのデータセンター「Powerico(パワリコ)」は、脱炭素型データセンターを目指し、RE100に対応した再生可能エネルギーの利用を希望する顧客向けに、100%再生可能エネルギーでの提供を開始しています。

このような環境配慮型のITインフラを活用することで、企業は自社のESG目標達成を加速させることができます。環境負荷の低減だけでなく、長期的なエネルギーコストの最適化や、持続可能な社会への貢献にもつながります。Powericoの活用にご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

ESG経営の実現のためには、経営層のリーダーシップのもと、IT部門を含む全社的な取り組みを段階的に導入し、継続的に改善を重ねていくことが大切です。ESGを経営の中核に据え、社会と企業の持続的な成長を目指していくことが、これからの企業に求められる姿勢といえるでしょう。

この記事で紹介しているサービス

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