生成AIの電力問題とは?深刻化する電力需要と企業が取り組むべき解決策
課題解決のためのノウハウ
生成AIをはじめとする高度なデジタル技術の急速な普及により、データセンターが消費する電力量はかつてないペースで増加しています。いまや電力の確保そのものが、データセンターの成長や競争力を左右する時代に入ったといっても過言ではありません。
こうした電力需要の急拡大に対する有力な解として注目されているのが、「電力(ワット)」と「情報通信(ビット)」を一体のインフラとして最適化するワット・ビット構想です。
本記事では、このワット・ビット構想を踏まえ、「次世代データセンター」をどのような視点で選ぶべきかを整理します。「電力効率」「環境負荷低減」「新しい価値創造」という3つの軸から、これからの時代に求められる判断基準を解説していきます。
「ワット・ビット構想(連携)」は、それぞれ独立したインフラとして整備・運用されてきた「電力(ワット)」と「情報通信(ビット)」を、一体のものとして捉える政策・インフラ構想です。それぞれの地域の特性や電力需要の動向、電力系統の制約まで加味して設計・運用し、全体的な最適化を目指しています。
電力の余力とデジタル需要を同時に結びつければ、送電ロスや設備増強の負担を抑えつつ、電力効率の底上げが可能です。さらに、再生可能エネルギーを有効活用することで環境負荷を低減するほか、データセンターを分散させれば災害時のレジリエンス(回復力)を高めることができるため、BCP/DRの観点でも有効とされています。
また、電力データとIT機器の稼働状況を連携させることで、需給調整や新たなサービスの創出も期待されています。
このようにワット・ビット構想は、エネルギー制約時代におけるデジタル基盤の在り方を根本から見直し、持続可能性と競争力を両立させるための中核的な考え方といえるでしょう。
生成AIの普及によりGPUサーバーによる処理が増え、データセンターの電力需要は拡大しています。しかし、拠点となるデータセンターが都市圏に集中しすぎると、災害や停電、電力需給の逼迫といった影響を同時に受けやすくなります。一方で、再生可能エネルギーは地域差や変動が大きく、送電網の容量や増強にも制約があるのが実情です。
こうした前提から、「単に電力を遠方に運ぶ」だけでなく「電力の条件に合わせてデータセンターを分散し、情報を通信で届ける」という発想が重要になるのです。電力(ワット)の供給能力と情報通信(ビット)のつながりやすさをセットで考え、立地からネットワーク、運用までを一体で最適化することで、結果的に電力効率の向上や環境負荷の低減などにつながります。
ワット・ビット構想のように、電力と情報通信を一体で捉えることで、データセンターはどう変わるのでしょうか。ここでは、同構想によって期待される価値を「電力効率向上」「環境負荷低減」「新しい価値創造」の3つの観点から整理します。
再生可能エネルギーの発電拠点の近くにデータセンターを配置し、電力を地産地消しながら、情報だけを送ることで、送電ロスや送電網の増強負担を最小限に留められます。
さらに、電力の使用状況とサーバーやIT機器の稼働状況を連携させれば、必要な電力量が見通しやすくなり、計画的な設備投資にもつながります。電力の需要ピークの平準化や、電力に余力のある拠点へ処理を逃がすといった柔軟な運用、容量不足・発熱増への対策として設備や配置を都度見直す手間など、さまざまなコストを抑えながら安定稼働を実現できるでしょう。
データセンターの持続可能性を支えるのは、再生可能エネルギーの活用です。
ワット・ビット構想では、再生可能エネルギーの導入が進む地域でのデータセンターの運用を促し、再生可能エネルギーの有効活用と送電ロス削減を後押しします。さらに、リアルタイムで電力を制御することで、電力の需要変動に備えた火力発電の稼働を抑え、CO2排出量の削減に直結します。
こうした取り組みは、GX(グリーン・トランスフォーメーション)とDX(デジタル・トランスフォーメーション)を支える基盤にもなるでしょう。
データセンターや通信インフラの分散配置は、災害リスクの分散に直結します。また、データセンターが再生可能エネルギーの豊富な地域へ広がることで、周辺の通信インフラも整備され、関連するITサービスや運用ビジネスが生まれるなど、地域活性化の呼び水にもなります。
さらに、電力供給の余力を根拠に、バックアップやDRの配置先を最適化できれば、将来の増設余地も見据えた拠点選定や構成提案などの、柔軟なサービス拡張が可能になるでしょう。
ワット・ビット構想の進展により、データセンターは集中型から分散配置への転換が進む可能性があります。こうした潮流の中で重要となるのが、将来の成長と競争力を左右する「次世代データセンター」をどう見極めるかという視点です。
ここでは、エネルギー制約時代において持続可能性と事業価値を高めるための確認ポイントを整理します。
電力供給に余力のある地域でも、災害のリスクが高くては意味がありません。地震や津波、洪水などのリスクをデータに基づいて評価し、低リスクの拠点を選ぶことで分散配置によるメリットを引き出します。
地域分散でレジリエンスを高めるには、各拠点が非常時に自立して動き続けられるかが重要です。停電時の非常用発電や燃料の確保、復旧までの手順などを確認し、長時間にわたる運転に耐える備えがあるかを見極める必要があります。
ワット・ビット構想では、電力データとIT機器の稼働状況をリアルタイムに把握し、運用に反映させる体制が求められます。24時間365日の監視はもちろん、障害時の対応や運用手順の整備など、現地での対応がスムーズに行われる仕組みが整っているかを確認しましょう。
これらの要件を高い水準で満たしているのが、香川県高松市にあるデータセンター「Powerico(パワリコ)」です。ここからは、次世代データセンターの要件について、Powericoを例に紹介します。
Powericoは香川県高松市に立地しています。気象庁震度データベースによると、同地域は過去100年間(1919年〜2023年)に震度6以上の地震が発生しておらず、震度5以上も3回にとどまっています。PL値(液状化可能性指数)は0判定で、液状化のリスクも限りなく低い環境です。
また、南海トラフ地震で想定される津波が高松市沿岸に3m(満潮時)と想定される一方で、Powericoは海岸から約7km・海抜約14.5mの高台に位置しています。さらに、地表から1.5mのかさ上げも施工しており、津波や浸水のリスクを徹底的に排除しています。
Powericoは、異なる変電所からの2系統受電(66kV本線・予備線)を採用し、地中管路による引き込みで断線リスクを低減しています。
一瞬の停電に対しては、サーバー用のUPS(無停電電源装置)が即座に反応し電気を供給し続けます。このUPSは、必要な台数に対しさらに2台の余力を持たせた「N+2構成」を採用しており、非常用自家発電設備が立ち上がるまで途切れることなく給電を続けるため、システムが停止するリスクを低減できます。また、非常用自家発電設備も、予備を確保した「N+1構成」です。このほか、安定して稼働を続けるため、空調用のUPSも備えています。
発電設備は無給油でも72時間の連続運転が可能です。さらに、複数の燃料供給会社と「優先供給協定」を締結している点も大きな強みとなっています。
Powericoでは、ISMS(ISO/IEC 20000)認証の枠組みのもと、専門技術員が機器・システムの稼働状況を24時間365日体制の監視センターで常に監視しています。あわせてログやリソース、パフォーマンスなどの各種指標も対象とし、運用状況を多角的に把握しています。
また、オプションサービスの監視サポートと運用サポートを組み合わせることで、事前に取り決めた運用手順書に基づき、現地での障害検知・切り分けから復旧対応までを一貫して支援する体制も大きな特長です。
さらに、BCP対策として年1回の復旧訓練を実施することで初動対応力を高めており、非常時にも確実な対応が期待できるのです。
データセンターは、生成AIや高度なデジタル技術の普及などを背景に、電力需要が急増する課題に直面しています。これからのインフラ戦略には、電力(ワット)と情報通信(ビット)を一体で捉える視点が欠かせません。
「ワット・ビット構想」に基づいた「次世代データセンター」は、エネルギー効率の最大化と高度なレジリエンスを両立させる重要な拠点です。これからの拠点選定において「災害リスクへの強さ」や「長時間運転を支える設備」、「24時間365日の監視・運用体制」は、欠かせない要件になります。
電力制約や環境負荷という課題を乗り越え、ビジネスの継続性を確かなものにするために、ワット・ビット構想を具現化したPowericoのような次世代データセンターを検討の軸に据えてみてはいかがでしょうか。