ゼロデイ攻撃とは?
仕組みや被害事例から学ぶ効果的な対策方法を解説

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サイバー攻撃が巧妙化する現代において、最も防御が困難とされるのが「ゼロデイ攻撃」です。修正プログラムが存在しない脆弱性を悪用するこの攻撃は、2024年にJAXAや量子科学技術研究開発機構(QST)といった重要機関でも被害が確認されており、IPA「情報セキュリティ10大脅威2024」でも5位にランクインしています。従来のセキュリティ対策では防ぎきれないゼロデイ攻撃に対し、企業はどのような備えが必要なのでしょうか。本記事では基本的な仕組みから最新事例、実践的な対策方法まで解説します。

ゼロデイ攻撃とは何か?基礎知識と増加する脅威

企業のDX推進とテレワーク普及が加速する中、従来のセキュリティ対策では対処困難な新たな脅威が注目されています。ゼロデイ攻撃の基本概念から現在の深刻な状況まで理解していきましょう。

ゼロデイ攻撃の定義と仕組み

ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアの脆弱性が発見されてから修正プログラムが提供されるまでの「0日」の期間に行われるサイバー攻撃です。攻撃者は開発者がまだ認知していない未知の脆弱性を発見し、対策が講じられる前に悪用します。修正パッチが配布される日を1日目とすると、その前の無防備な状態が「ゼロデイ」に相当し、既存のセキュリティソフトでは検知が困難です。

この攻撃の深刻さは、対象となる脆弱性がソフトウェアベンダーにとって完全に未知であることにあります。通常のサイバー攻撃では、脆弱性の存在が公表されてからパッチが提供されるまでの間に攻撃が行われますが、ゼロデイ攻撃ではその前段階から攻撃が開始されるため、防御側に準備時間が全くありません。攻撃者は脆弱性の情報を独占的に保有し、標的を慎重に選んで最大限の効果を狙います。

従来攻撃との違いと特徴

一般的なサイバー攻撃は既知の脆弱性を狙うため、セキュリティパッチの適用により防御できますが、ゼロデイ攻撃では修正プログラム自体が存在しません。従来型のウイルス対策ソフトでは検出できず、ファイアウォールや侵入検知システムも効果的に機能しない場合があります。攻撃の痕跡が発見されるまでに時間がかかるケースが多く、被害が拡大してから発覚することも少なくありません。

従来攻撃との最大の違いは、防御側に「準備時間がゼロ」であることです。既知の脆弱性を狙った攻撃では、脆弱性情報の公開からパッチ適用までの間に対策を講じる時間がありますが、ゼロデイ攻撃では攻撃者が一方的に優位な立場に立ちます。また、攻撃コードが高度に設計されており、システムログにも痕跡を残しにくい特徴があります。このため、攻撃の発見が遅れ、被害が拡大する可能性が高くなります。

情報セキュリティ10大脅威における位置づけと増加背景

IPAの「情報セキュリティ10大脅威2024」において、ゼロデイ攻撃は5位にランクインし、2023年の6位から順位が上昇しています。増加背景には、既知の脆弱性対策の強化により攻撃者が未知の脆弱性に着目していること、テレワーク普及による攻撃対象拡大、ダークウェブでの脆弱性情報取引活発化があります。金銭目的以外にも、企業イメージダウンや政治的理由など攻撃動機の多様化も影響しています。

特に注目すべきは、ゼロデイ脆弱性の市場価値の高騰です。サイバー犯罪者にとって未知の脆弱性は高額で取引される貴重な資産となっており、組織的な脆弱性の発見と販売を行うグループも存在します。また、AIやIoT機器の普及により攻撃対象が拡大し、従来のPC環境だけでなく様々なデバイスが標的となっています。国家レベルの支援を受けたAPT(Advanced Persistent Threat)グループによる長期潜伏型攻撃の増加も、ゼロデイ攻撃の脅威を高める要因となっています。

参考:情報セキュリティ10大脅威 2024

サイバー攻撃の最新動向については、以下の資料で詳しく説明しています。

ゼロデイ攻撃の手口と深刻な被害事例

実際のゼロデイ攻撃がどのような手法で行われ、どの程度の被害をもたらすのかを確認します。攻撃手口の理解は効果的な防御策を検討する上で不可欠です。

主要な攻撃手法とその特徴

ゼロデイ攻撃では、攻撃者が様々な手法を組み合わせて未知の脆弱性を悪用します。代表的な攻撃手法を理解することで、適切な防御策の検討が可能になります。

標的型メール攻撃

業務関連の正当なメールを装い、悪意のあるファイルやリンクを送付してWebブラウザやPDFリーダーの未知の脆弱性を悪用する手法です。受信者が添付ファイルを開いたりリンクをクリックしたりすることで、システムが感染する仕組みです。

VPN・ネットワーク機器への攻撃

リモートアクセス機器やネットワーク機器の脆弱性を狙い、企業の内部ネットワークへの不正侵入を図る攻撃です。コロナ禍以降のリモートワーク普及により、VPN機器を狙った攻撃が急増しています。

水飲み場攻撃

標的企業の関係者がよく訪問するWebサイトに悪意のあるコードを埋め込み、訪問者のシステムを感染させる巧妙な手法です。業界特有のサイトや取引先のサイトが狙われることが多く、発見が困難な攻撃として知られています。

国内重要機関を標的としたゼロデイ攻撃事例

2024年から2025年にかけて、日本の重要機関で相次いでゼロデイ攻撃による深刻な被害が発生しています。これらの事例は、国家レベルの機関でも防ぎきれない脅威の深刻さを物語っています。

JAXAでは中国系ハッカー集団「MirrorFace」による計4回の攻撃を受け、そのうち2回がゼロデイ脆弱性を悪用したものでした。VPN機器の未知の脆弱性から約5,000人分の職員情報と1万件以上の機密文書が窃取される深刻な被害が発生しました。攻撃者は2023年夏頃から長期間にわたって潜伏し、段階的に機密情報を収集していたことが判明しています。量子科学技術研究開発機構(QST)でも2025年1月に被害が判明し、2024年12月時点で既にゼロデイ攻撃による不正アクセスを受けていたことが明らかになっています。これらの事例では、いずれも高度なセキュリティ体制を敷いていたにも関わらず、未知の脆弱性を突かれて侵入を許してしまいました。

ゼロデイ攻撃による被害の種類と影響範囲

ゼロデイ攻撃による被害は多方面にわたり、直接的な損失から長期的な事業影響まで深刻な結果をもたらします。機密情報の窃取、マルウェア感染によるシステム停止、顧客データ流出による法的責任の発生、企業ブランドイメージの失墜など、企業経営に重大な打撃を与えます。

業界別の特有リスクも存在し、製造業では知的財産の流出、金融機関では顧客の金融情報漏洩、医療機関では患者の個人情報流出といった深刻な問題が発生します。復旧にかかる直接的なコストに加え、取引先との信頼関係悪化や新規顧客獲得への悪影響など、長期的な事業継続への影響も無視できません。

サイバー攻撃を受けた際の具体的な被害について詳しく知りたい方は、「サイバー攻撃を受けるとどうなる? よくある被害事例と企業の対策を解説」もご覧ください。

ゼロデイ攻撃への対策方法

修正プログラムが存在しないゼロデイ攻撃に対しても、適切な対策により被害を最小限に抑えることが可能です。予防策から事後対応まで、企業が実施すべき具体的なアプローチを説明します。

基本的なセキュリティ対策の徹底

ゼロデイ攻撃対策の基盤となるのは、基本的なセキュリティ対策の確実な実施です。完全な防御は困難でも、攻撃の成功確率を下げ、被害を限定する効果が期待できます。

OSやアプリケーションを常に最新状態に保つことで、既知の脆弱性を通じた攻撃を防ぎ、攻撃者の侵入経路を限定できます。次世代アンチウイルス製品やEDR(Endpoint Detection and Response)の導入により、シグネチャに依存しない振る舞い検知機能を活用し、未知のマルウェアも検出可能となります。定期的な脆弱性診断により、システムの弱点を事前に把握し、リスクの高い箇所から優先的に対策を実施することが効果的です。

多層防御と最新技術の活用

単一の防御策では限界があるため、複数の防御技術を組み合わせた多層防御の実装が重要です。最新のセキュリティ技術を活用することで、従来型の対策では検知できない未知の脅威にも対応できます。

ファイアウォール、侵入防止システム(IPS)、サンドボックス環境を組み合わせた多層防御により、単一の防御策を突破されても他の層で攻撃を阻止できます。重要なデータの暗号化と隔離、ネットワークの適切なセグメンテーションにより、被害範囲を限定することが可能です。AI技術を活用した異常検知システムやゼロトラストアーキテクチャの導入により、過去のパターンに依存しない未知の攻撃を検出し、全てのアクセスを検証する体制を構築できます。

攻撃を受けた場合の迅速な対応手順

ゼロデイ攻撃を完全に防ぐことは困難なため、攻撃を受けた際の迅速かつ適切な対応体制の整備が重要です。初動対応の質が被害の拡大防止と早期復旧に直結します。

ゼロデイ攻撃の兆候を発見した場合、感染が疑われる端末を直ちにネットワークから切り離し、被害の拡大を防止します。セキュリティ管理部署への迅速な報告により、組織的な対応体制を整備し、専門チームによる詳細調査を開始することが必要です。インシデント対応計画に基づき、関係部署との連携、外部専門機関への相談、法執行機関への届出を実施し、攻撃の完全な除去を確認後、システムの段階的な復旧と再発防止策を講じることが必要です。

まとめ:ゼロデイ攻撃への備えで企業のセキュリティレベル向上を実現

ゼロデイ攻撃は修正プログラムが存在しない脆弱性を悪用する高度な脅威であり、セキュリティ対策が強固な組織でも被害を受ける可能性があります。完全な防御は困難ですが、多層防御の実装とAI技術を活用した未知の脅威検知システムの導入により、リスクを大幅に軽減できます。EDR製品や次世代アンチウイルスソフトによる振る舞い検知機能は、シグネチャに依存しない検出を可能とし、有効な対策となります。

STNetでは、ゼロデイ攻撃対策に効果的な包括的なセキュリティソリューションを提供しています。標的型サイバー攻撃対策サービス「iNetSec SF」は、未知のマルウェア活動を24時間365日監視し、感染端末を自動的にネットワークから分離することで被害拡大を防ぎます。「インターネットセキュリティサービス」では、ウイルスや迷惑メールがお客さま環境に侵入する前にクラウドでブロックします。また、Webアプリケーションファイアウォール「Scutum」は、Webサイトへの不正アクセスや攻撃を防御し、ネットワーク監視サービス「NetStare」では、異常通信を早期発見してセキュリティインシデントの拡大を防止します。ゼロデイ攻撃への備えでお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事で紹介しているサービス

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標的型サイバー攻撃による未知のマルウェア活動を検知、被害を防止し、「内部対策」を強化します。

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