ランサムウェアの感染経路とは?被害に遭わないために知っておきたい対策のポイント

課題解決のためのノウハウ
Webアプリケーションの必要性が増す現代ビジネスにおいて、WAF(Web Application Firewall)は欠かせないセキュリティ対策ツールとなっています。本記事では、WAFの基本概念から選定・導入のポイントまでを詳しく解説し、情報システム部門の皆さまが直面する課題解決に役立つ情報を提供します。
WAFは、Webアプリケーションへの攻撃を検知・防御し、ビジネスの継続性と顧客データの保護を実現する、不可欠なセキュリティ対策ツールです。
WAFはWebアプリケーションを標的とした攻撃から守るセキュリティツールです。通常のファイアウォールがネットワークレベルで防御を行うのに対し、WAFはアプリケーション層(ネットワーク通信の最上位層で、ユーザーが直接操作するソフトウェアの動作する層)でのセキュリティを提供します。
近年、Webアプリケーションを標的とした攻撃が急増しており、従来のセキュリティ対策だけでは十分な防御が困難になっています。WAFは、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった、Webサイトの脆弱性を悪用した高度な攻撃を検知・防御し、ビジネスの継続性と顧客データの保護を実現します。
具体的な攻撃被害の事例を以下に紹介します。
WAF未導入の出版社Webサイトで、SQLインジェクション攻撃による情報流出が発生しました。攻撃により、会員のメールアドレス、名前、住所、連絡先(電話、FAX番号)などの個人情報が流出した可能性が判明しました。この事態を受けて、同社はWAFを導入し、不正アクセスへの対策を強化しました。この事例は、WAFの事前導入があれば、SQLインジェクション攻撃を検知・防御し、情報流出を防ぐことができた可能性を示しています。
WAFを導入していなかった地方自治体のふるさと納税特設サイトが、クロスサイトスクリプティング(XSS)の被害に遭いました。サイトを通じて、クレジットカード決済者のクレジットカード情報、ログイン情報などが、約1,000件漏洩した可能性があります。対応として、サイトの利用者にクレジットカード再発行の手続きについて周知し、カードの再発行手数料の負担などが発生しました。また、当該ふるさと納税特設サイトの信頼性が損なわれてしまいました。その後、WAFを導入して以降はクレジットカード情報の漏洩は確認されておらず、WAFによる防御の有効性が実証されています。この事例は、公共サービスにおいてもWebアプリケーションのセキュリティ対策が重要であることを示しています。
これらの事例は、規模や業種を問わずあらゆる企業、さらには公共サービスに至るまで、Webアプリケーションを使用するすべての組織がサイバー攻撃のリスクに直面していることを示しています。WAFは、これらの多様な脅威に対する効果的な防御手段として、ますます必要性を増しています。
WAFは、Webサーバーとインターネットの間に位置し、すべてのHTTP/HTTPSトラフィック(Webサイトへのアクセスに関するデータ通信)を監視します。主な機能は以下があります。
WAFはさまざまな種類のWeb攻撃から効果的にシステムを防御します。ここでは、WAFで防御可能な主な攻撃、WAFの種類と特徴、そして主要なWAFサービスの比較を順に紹介します。
まず、WAFが対応できる主な攻撃の種類を理解することで、その重要性と効果を把握できます。
攻撃の種類 | 説明 | WAFによる防御方法 |
---|---|---|
SQLインジェクション | データベースへの不正操作による顧客情報の漏洩 【例】 ・クレジットカード番号、個人情報など重要データの流出 ・企業の機密情報への不正アクセスのリスク |
特殊文字やSQLコマンドの検出とブロック |
クロスサイトスクリプティング(XSS) | 正規サイトへの悪意のあるプログラムの埋め込み 【例】 ・フィッシングサイトへの誘導によるID・パスワードの窃取 |
不正なスクリプトの検出と無効化 |
クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF) | 利用者の意図しない操作の強制実行 【例】 ・不正な商品購入や会員情報の改ざん ・金銭的被害の発生リスク |
不正なリクエストの検出と拒否 |
ファイルインクルージョン攻撃 | 重要ファイルへの不正アクセス 【例】 ・機密情報の漏洩やシステム破壊のリスク ・業務継続性への重大な影響 |
不正なファイル参照の検出と防止 |
DDoS攻撃 (アプリケーション層) |
サービスを利用不能にする大量アクセス攻撃 【例】 ・業務中断による損失 ・顧客対応の遅延や信用低下 |
トラフィック分析と異常検知 |
セッションハイジャック | ログイン状態の乗っ取りによる不正操作 【例】 ・個人情報の窃取や不正取引の実行 ・なりすましによる被害 |
セッションIDの保護と検証 |
Webスクレイピング | 自動化ツールによる大量データ収集 【例】 ・価格情報や商品情報の流出 ・サイトパフォーマンスの低下 ・競争優位性の喪失 |
異常なアクセスパターンの検出と制限 |
WAFは、これらの攻撃に対して事前に定義されたルールやAI/機械学習を用いて検知・防御を行い、Webアプリケーションの安全性を高めます。
WAFの主な攻撃への対応を理解したところで、次にWAFの種類と特徴を見ていきましょう。WAFの選択にあたっては、組織のニーズに合わせて適切なタイプを選ぶことが重要です。
WAFの種類 | 特徴 | 利点 | 考慮点 |
---|---|---|---|
クラウド型 WAF |
・クラウドサービスとして提供 ・導入が容易 ・初期投資が少ない |
・迅速な導入が可能 ・運用管理の負担が軽い ・スケーラビリティが高い |
・カスタマイズ性に制限がある可能性 ・ データの所在に関する懸念 |
ソフトウェア型WAF | ・オンプレミスのサーバーにインストール ・ カスタマイズ性が高い |
・詳細な設定が可能 ・データの管理を自社内で完結 ・既存インフラとの親和性 |
・導入に時間とコストがかかる ・ 運用管理の負担が大きい |
組織のニーズや既存のITシステム基盤に応じて、適切な種類のWAFを選択することが求められます。
主要なクラウドサービスプロバイダーが提供するWAFには、それぞれ特徴があります。ここでは、代表的なサービスを簡潔に比較して紹介します。
WAF サービス名 |
クラウドサービスプロバイダー | 主な特徴 | 強み |
---|---|---|---|
AWS WAF | Amazon Web Services |
AWSサービスとの統合が容易 | ・柔軟なルール設定 ・AWSサービスとのシームレスな連携 |
Azure WAF | Microsoft | OWASP(※)トップ10の脆弱性に対応 | ・Azureサービスとの統合 ・包括的な脆弱性対策 |
Cloud Armor |
Google Cloud | Cloud CDNと併用可能 | ・機械学習ベースの異常検知 ・グローバルに分散したエッジロケーションを活用した防御 |
※OWASP:Open Worldwide Application Security Projectの略で、Webアプリケーションセキュリティに関する主要な脆弱性リストを提供する、国際的な非営利団体
使用しているクラウドプラットフォームや特定のセキュリティ要件に応じて、最適なWAFを選択することが重要となるでしょう。なお、各サービスの詳細な機能や最新の更新情報については、常に変化している可能性があるため、最新の情報を確認することが不可欠です。
WAFの導入は強力なセキュリティ対策となる一方で、適切な運用と管理が求められます。組織に最適な導入戦略を立てるために、以下のメリットとデメリットを理解することが重要です。
WAF導入には、主に以下のようなメリットが挙げられます。
一方でWAFの運用には、課題もあります。
これらの課題に対処するためには、適切な運用体制の構築と専門知識の習得が不可欠となります。
適切なWAFの選定と導入により、効果的なセキュリティ体制を構築し、ビジネスリスクの軽減と法令遵守を実現することが可能になります。
WAFを選定する際は、以下の点を考慮する必要があります。
これらのポイントを総合的に評価し、組織のニーズに最も適したWAFを選択することが成功の鍵となります。
WAFの導入時には、以下の点に注意を払う必要があります。
これらの課題に対し、運用負荷の軽減には、クラウド型WAFやマネージドWAFの利用が効果的です。マネージドWAFは、セキュリティのサービス提供者による監視や運用管理を含むため、社内の運用負担を最小限に抑えながら、高度なセキュリティ対策を実現できます。また、段階的な導入を行うことで、コストと運用負荷を抑えつつ、効果を最大化することが可能です。
WAF導入の必要性を経営層に説明する際は、以下の点を強調することが効果的です。
経営層の理解と支援を得ることで、WAF導入プロジェクトの成功確率が高まり、組織全体のセキュリティ態勢の強化につながります。
WAFは、変化し続けるWeb脅威に対する効果的な防御手段として、今後ますます必要性を増していくでしょう。しかし、サイバー攻撃の手法が日々進化するなか、WAFの導入だけでは十分とは言えません。組織のデジタル資産を守り、ビジネスの継続性を確保するためには、WAFの導入と適切な運用に加え、総合的なセキュリティ対策が不可欠です。
近い将来、WAFはAIや機械学習技術の発展により、より高度な脅威検知と自動対応が可能になると予想されます。また、クラウドコンピューティングの普及に伴い、クラウドネイティブなセキュリティソリューションの重要性も増していくでしょう。
このような総合的なアプローチを実現するため、STNetでは以下のサービスをご提供しています。
「Scutum」サービスは、高度な機能を備えたクラウド型WAFサービスです。最先端のWAFエンジンと経験豊富なセキュリティの専門家による運用支援により新たな攻撃にもいちはやく対応します。運用の手間もなく、純国産、24時間365日の監視体制という点でも導入のハードルが低く、お客さまのWebアプリケーションを常に最新の脅威から守ります。
Webセキュリティに不安をお持ちの方には、まずセキュリティ診断サービスによる現状の把握をおすすめしています。セキュリティ診断サービスでは、Webサイトの脆弱性を徹底的に診断し、専門家による詳細な脆弱性の特定と対策提案を行います。脆弱性が発見された場合は、「Scutum」サービスの導入で、確実な防御体制を構築できます。
また、プラットフォームの脆弱性や運用上の課題が明らかになった場合は、より安全で安定したインフラ環境への移行をご提案します。STNetは、安全性と使いやすさを兼ね備えたIaaS型クラウドサービス「STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]」を提供しています。国内最高水準のデータセンター「Powerico(パワリコ)」で運用しており、高い信頼性と堅牢なセキュリティを実現します。お客さまのビジネスの成長に合わせてクラウドリソースを柔軟に調整可能です。
これらのサービスを組み合わせることで、包括的なセキュリティ対策を実現できます。STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]はWAFの性能要件に応じてクラウドリソースを柔軟に調整できるため、「Scutum」サービスとの連携により効率的な運用が可能です。さらに、両サービスのログを統合分析することで、より精度の高い脅威検知が可能になります。この相乗効果により、お客さまは安全で効率的なWebアプリケーション環境を構築することが可能になります。お客さまのセキュリティニーズに合わせた包括的なサポートを提供し、安全なデジタルビジネス環境の構築をサポートいたしますので、ご興味のある方はぜひSTNetにお気軽にご相談ください。