教育のICT化を実現するクラウド活用のメリットと課題

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課題解決のためのノウハウ

政府の「GIGAスクール構想」のもと、教育現場でのICT化が加速しており、クラウドサービスの活用が注目を集めています。クラウドサービスを適切に活用することで、遠隔授業の実施や教育データの分析が可能になります。 また、学校と家庭をシームレスにつなぎ、柔軟な学習環境を実現することができます。さらに、教育現場の業務効率化、教職員の働き方改革なども期待できます。本記事では、教育分野でのクラウド活用のメリット、課題と対策、適切なサービス選定のポイントを解説します。

教育のICT化とクラウド活用の必要性

児童生徒一人ひとりに合わせた個別最適な教育を実現するには、ICTの効果的な活用が不可欠です。しかし従来の校内システムだけでは対応に限界があり、クラウドサービスの導入が欠かせません。クラウドを活用することで、より効果的な教育環境を構築できます。

ICTで実現を目指す新しい教育とは

教材のデジタル化やオンライン学習の導入で、個別最適な学びの実現を目指します。さらに、デジタル技術を活用した思考力や問題解決能力の育成も目標に掲げられています。

文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」では、児童生徒1人1台の端末と高速ネットワーク環境を全国に整備し、ICTを効果的に活用した新しい教育を実現することを目指しています。これは、令和元年に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」に基づいています。

また、教職員の業務効率化によるワークスタイル改革も期待されています。

参照:安心と成長の未来を拓く総合経済対策|閣議決定(令和元年12月)

   GIGAスクール構想の実現パッケージ~令和の時代のスタンダードな学校へ~|文部科学省(令和元年12月)

クラウド活用が不可欠な理由

従来の校内システムだけでは、デジタル化への対応や柔軟性確保が困難です。クラウドサービスを活用することで、システムの刷新やデータの一元管理、業務の効率化など、さまざまな課題を解決できます。加えて、セキュリティ対策の強化やコスト削減の実現にもつながるため、クラウドの導入が求められています。

教育現場でのクラウド活用のメリット

クラウドを活用することで、さまざまなメリットが得られます。具体的には以下のようなものが挙げられます。

柔軟な遠隔・オンライン授業が可能に

クラウドサービスを導入すれば、児童生徒・教師ともに場所を選ばずにオンラインで授業に参加できるようになります。リアルタイムでつながることで、授業の臨機応変な運営が可能になり、教育現場の働き方改革やスタイル変革を大きく後押しします。さらに遠隔地の講師を簡単に招へいできるなど、新しい学びの実現にもつながります。

マルチデバイスでシームレスな学習体験

クラウド上に生徒の学習データなどを一元的に集約・管理することで、生徒はPCやタブレット、スマートフォンなど、さまざまな端末を使って場所を選ばずにコンテンツにアクセスできるようになります。家庭と学校の学習環境をシームレスに統合し、自宅でも学校でも継ぎ目なく学習を続けられるため、効果的な家庭学習をサポートできます。

教育データの高度な分析と活用が実現

生徒の学習履歴、テスト結果、アクセスログなど、これまで管理が難しかったデータをクラウド上で一元的に収集・蓄積できます。AIなどを活用してビッグデータ分析を行えば、個々の生徒に最適な学習指導方法を見つけられるほか、カリキュラムの改善や新しい教育サービスの開発にも活かせます。データに基づく的確な教育の最適化が可能になります。

コスト削減と効率化

クラウドならシステムリソースを必要な分だけ柔軟に調達できるため、過剰な投資を抑えてコストを削減できます。また機器の調達、運用、保守など一連の業務をクラウドベンダーに委託可能なので、教職員の業務負担を大幅に軽減し、教育現場の業務効率化やワークスタイル変革にもつながります。

柔軟性とスケーラビリティ

生徒数の増減など需要に応じたリソース拡張が容易で、万が一の災害時にもデータの損失を防ぎ、教育活動を継続することができます。

クラウド導入における課題とその対策

一方で、セキュリティ対策や人材育成など、いくつかの課題に適切に対応する必要があります。

データ漏えいリスクに備えた多層的なセキュリティ対策

クラウド上に生徒の成績や指導要録、個人情報などの機密データが集約・一元管理されるため、外部からの不正アクセスによるデータ漏えいリスクが高まります。このリスクに備え、認証の強化による厳格なアクセス制限、データの暗号化、ファイアウォールの多重化など、多層的なセキュリティ対策を徹底して講じる必要があります。最新のセキュリティ技術を組み合わせて総合的な防御力を高め、機密データを万全に保護しなければなりません。

クラウドリテラシーの習得と運用体制の整備

クラウドサービスは従来のシステムとは特性が大きく異なるため、それを適切に運用するためにはクラウドの仕組みや特徴の十分な理解が求められます。そのため教職員に対し、クラウドリテラシー教育を行い、知識の習得と人材育成に注力する必要があります。加えて、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえ、セキュリティ面も含めた適切な運用体制を学校単位、教育委員会単位で構築することが不可欠です。

参照:教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン|文部科学省(令和6年1月)

標準化・異なるシステム間の連携の課題

クラウドを教育現場に導入する際、既存の校務システムやデータとの連携が課題となります。データフォーマットや規格、デバイス、ブラウザなどが統一されていないと、システム間でデータのやり取りがうまくいきません。さらに教育委員会と学校、各学校間でも使用しているシステムが異なるケースがあり、データの相互運用性が損なわれます。このような課題に対処するには、教育機関全体で統一のデータ標準や接続規格を定め、個別に運用されているシステムを標準化していく必要があります。関係者間での綿密な調整と、段階的な標準化の推進が求められます。

ネットワーク環境の整備

クラウドを利用するためには、安定した高速のインターネット環境が必要になります。オンライン授業やクラウドデータへのアクセスに支障が出ないよう、ネットワーク環境の強化が求められます。

教育現場に最適なクラウドサービスの選定ポイント

教育機関の規模やニーズに合わせて、セキュリティ面も含めた適切なサービスの選定が求められます。

教育目的・ニーズに合致した機能性

クラウドサービスを導入する際は、何のために活用するのかという教育現場の本来の目的やニーズに合致した機能性が最も重要です。遠隔・オンライン授業の実施、家庭学習のサポート、教育データの分析活用など、目的に応じて必要となる機能が異なります。

児童・生徒の個人情報を守るセキュリティ要件と個人情報保護

生徒の個人情報や成績データなどの機密情報を守るため、個人情報保護法や文部科学省ガイドラインに準拠したセキュリティ対策が施されているかどうかを確認する必要があります。

規模・ニーズに適した安定性・拡張性

教育機関の規模や利用者数、中長期的なニーズに合わせて、以下の点が求められます。

安定した可用性

  • 24時間365日の稼働
  • 高速な通信環境
  • 大容量データのダウンロード/アップロードに対応
  • データのバックアップ体制

柔軟なスケーラビリティ

  • リソースを将来の需要変化に合わせて柔軟に拡張・縮小可能
  • ニーズに合わせたコスト最適化

学習履歴データの管理・分析機能

生徒個々の学習履歴や進捗状況を適切に管理・追跡するとともに、蓄積されたビッグデータを高度に分析できる機能が求められます。

実績と運用保守サポート体制

サービスの長期利用を見据え、ベンダーの実績や財務体力、技術力を確認します。教育現場の特性を理解した専門的なサポート体制があるか、有事の際の対応力も選定ポイントです。また、必要に応じて運用保守業務の外部委託が可能かどうかも検討しましょう。

以上の点を踏まえて、教育機関の特性に合ったクラウドサービスを選定することが肝心です。

クラウドサービスで実現する次世代の教育ICT環境

教育現場におけるICT化の実現に向けて、クラウドサービスの導入は不可欠です。クラウドを活用することで、遠隔・オンライン授業の実施や家庭学習のサポート、教育データの効率的な一元管理と分析など、さまざまなメリットが得られます。一方で、セキュリティ対策やクラウドリテラシーの向上、適切なサービス選定など、いくつかの課題もあります。これらの課題に対応するためには、文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」や「GIGAスクール構想」などの政策を踏まえつつ、適切なクラウドサービスを選定することが求められます。

STNetのSTクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]は、そうした課題を解決する適切なソリューションです。独自のGUIツール「FLEX GUI」で柔軟にクラウド環境を設計・構築でき、オンライン授業システムや学習管理システムなど、目的に応じたアプリケーションをスムーズに導入・活用することができます。

また、データセンター「Powerico(パワリコ)」のハウジングサービスを利用することで、成績データや指導要録などの重要データをデータセンター内に置き、高い物理的セキュリティの下でデータのバックアップや災害対策を実現できます。さらに、校務支援システムなどの運用はPowericoのハウジングサービスで行い、オンライン授業用のウェブ会議システムや一時的なリソース需要に応じた運用はSTクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]で行うなど、ハウジングとクラウドを組み合わせた柔軟な活用が可能です。

そのほか、PowericoのハウジングサービスとAWS、Azureなどのパブリッククラウドとの閉域接続が可能な「ST-WANダイレクトコネクト(クラウド接続)」や、高速・高品質なインターネット接続サービス「STIA」もおすすめです。STIAはSTクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]やPowericoと組み合わせて利用すれば、システムに最適な通信性能を実現できます。

教育機関の規模やニーズに合わせて、これらのサービスを活用することで、次世代の教育ICT環境を実現できます。STNetは教育分野支援の実績も多く、運用保守委託も可能です。当社に委託をご検討の場合、単一の教育機関だけでなく、複数の自治体や教育委員会で設備共有すれば、より費用対効果の高いシステム構築も可能です。四国でも複数の教育委員会や自治体が検討を進めています。ご興味をお持ちの教育現場担当者の方は、お気軽にお問い合わせください。

この記事で紹介しているサービス

STクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]

一般的なパブリッククラウドサービスの手軽さに加え、サーバー基盤構築に重要な「安心感」と「自由度」を兼ね備えた新しいクラウドサービスです。

Powerico(パワリコ)

自然災害リスクの低い安全な立地と高信頼のファシリティ、多様な運用サービスで、お客さまのサーバーを安全に保管・運用します。

STIAサービス

従来のベストエフォート方よりも高速で、かつ、新しい機能を盛り込んだインターネット接続回線です。

ST-WANダイレクトコネクト(クラウド接続)

大手パブリッククラウド向けに異なる経路・設備で構成した専用ネットワークで直接接続するサービスです。