シャドーITとは?
企業が抱えるリスクと5つの効果的な対策方法

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テレワークの普及により、企業が把握していないIT機器やクラウドサービスを従業員が独自に業務利用する「シャドーIT」が急増しています。私用スマートフォンでの業務メール送信や、未承認のクラウドストレージ利用などが代表例で、放置すると機密情報の漏洩やマルウェア感染といった深刻なセキュリティインシデントにつながる恐れがあります。本記事では、シャドーITの基本的な定義から発生原因、具体的なリスク、そして企業が実施すべき5つの効果的な対策まで解説します。

シャドーITとは?基本的な定義と具体例

企業の情報セキュリティを脅かすシャドーITについて、その定義や具体的な事例、混同されやすいBYODとの違いを明確にします。

シャドーITの定義

シャドーITとは、企業が使用許可をしていない、または従業員が利用していることを企業側が把握できていないIT資産(デバイスや外部サービス)のことです。従業員が悪意なく業務効率化を目的として利用しているケースが大半であり、本人がリスクを認識していない点が問題となっています。

テレワークの普及により企業による物理的な監視が困難となり、シャドーITは増加傾向にあります。オフィス勤務であれば従業員の行動を目視で確認できましたが、在宅勤務ではどのようなデバイスやサービスを使用しているか把握しにくくなっています。結果として、企業が知らない間にセキュリティリスクが蓄積されていく状況が生まれています。

シャドーITの具体例

シャドーITには、デバイス、サービス、ネットワークなど様々な種類が存在します。これらは無料で利用できるものが多く、従業員が個人で気軽に導入しやすい特徴があります。

デバイス系

私用PC、スマートフォン、USBメモリを企業の許可なく業務に使用するケースが該当します。例えば、自宅のパソコンで会社のメールにアクセスしたり、個人のスマートフォンで顧客情報を閲覧したりする行為です。

サービス系

フリーメール、個人契約のクラウドストレージ、LINEなどのチャットツールを業務で利用します。Google DriveやDropboxの個人アカウントに業務ファイルを保存したり、GmailやYahoo!メールで取引先とやりとりしたりする事例が挙げられます。

ネットワーク系

公共Wi-Fiや自宅の私用回線で業務データにアクセスします。カフェや駅などで提供される無料Wi-Fiを使って社内システムに接続するケースが代表的です。

シャドーITとBYODの違い

シャドーITとBYOD(Bring Your Own Device)の決定的な違いは、企業の承認があるか否かです。
BYODは従業員の個人デバイスをシステム管理部門の管理下で業務に活用する仕組みです。企業が事前に利用規定を定め、セキュリティポリシーを適用した上で個人端末の業務利用を許可します。一方、シャドーITは企業の許可を得ずに独自に使用する点が本質的に異なります。

BYODは適切に管理すればセキュリティリスクを抑えられますが、シャドーITは管理外のため情報漏洩やマルウェア感染などの危険性が高まります。企業側が存在を把握していない以上、セキュリティ対策を施すことができず、インシデント発生時の対応も後手に回ってしまいます。

シャドーITが発生する3つの原因と背景

シャドーITの発生を防ぐためには、なぜ従業員が無許可のIT資産を利用してしまうのか、その根本原因を理解することが不可欠です。

テレワーク・リモートワークの普及

新型コロナウイルス感染症の影響により、自宅やカフェなど様々な場所で業務をおこなう機会が増加しました。この働き方の変化が、シャドーIT増加の最も大きな要因となっています。

オフィス勤務時代は誰がどの端末を利用しているか物理的に監視できていましたが、場所を問わない働き方では企業による把握が困難となっています。従業員が各自の判断でツールを選択する余地が拡大し、企業側の管理体制が追いついていない現状があります。在宅勤務では「会社のパソコンが手元にないから、とりあえず自分のパソコンで作業しよう」という判断が生まれやすく、結果としてシャドーITにつながっています。

従業員の業務効率化・利便性ニーズ

企業が提供するツールに使いにくさや機能不足があると、従業員は無料で高機能な個人向けツールを独自に導入してしまいます。社内承認プロセスが煩雑であることも要因です。

例えば、社内のファイル共有システムが容量不足だったり動作が遅かったりすると、従業員は個人契約のクラウドストレージを使い始めます。また、新しいツールの導入申請に時間がかかる場合、業務を優先して個人で利用できるサービスを選択してしまうケースもあります。業務効率化という善意の行動が、結果的にセキュリティリスクを生み出しているのが現状です。

セキュリティリテラシー・意識の不足

従業員のセキュリティリスク認識の欠如も深刻な問題です。「無料だから」「便利だから」と気軽に利用してしまい、シャドーITの危険性を理解していないケースが大半を占めます。

企業側の教育不足により、従業員は無意識のうちにリスクの高い行動をとってしまいます。公共Wi-Fiでの業務データアクセスや個人クラウドストレージへの機密情報保存などが、セキュリティインシデントにつながる可能性を理解していない従業員が多く存在します。「自分だけなら大丈夫」「ちょっとの間だけだから問題ない」という意識が、企業全体のセキュリティホールを生み出しています。

シャドーITがもたらす4つの重大なセキュリティリスク

シャドーITは企業に深刻なセキュリティインシデントをもたらす可能性があります。4つの主要なリスクと実際の被害事例を紹介します。

機密情報・個人情報の漏洩

シャドーITによる最大のリスクは、企業の機密情報や顧客の個人情報が外部に漏洩することです。私用デバイスの紛失・盗難、クラウドサービスの設定ミスによる外部公開、離職時の情報持ち出しなどが発生しています。

2022年6月には、関西圏の自治体で業務委託先職員が市民46万人分の個人情報をUSBメモリに入れて無断持ち出し・紛失した事案がありました。企業が管理していない個人所有のUSBメモリが使用されており、典型的なシャドーITによる情報漏洩リスクが現実化した形となりました。

IPA「情報セキュリティ10大脅威2025」でも、内部不正による情報漏洩が10年連続でランクインしています。

参考:情報セキュリティ10大脅威 2025|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

マルウェア・ウイルス感染の拡大

セキュリティ対策が不十分な私用デバイスが感染源となり、社内ネットワーク全体にマルウェアが拡散する危険性があります。アンチウイルスソフト未導入の個人デバイスが社内LANに接続すると、他の機器にも感染が広がる可能性が高まります。

2022年10月には、県立高校教員が私用PCで業務データを扱い、遠隔操作を受けた事案が発生しました。この事例では部員23名の個人情報が流出した疑いがあると発表されています。教員が善意で自宅のパソコンを使用した結果、マルウェアに感染し情報漏洩につながった典型的なシャドーITのリスクが顕在化した事例です。

不正アクセスの増加

暗号化されていない公共Wi-Fiを利用すると、第三者に通信内容を盗聴され、不正アクセスのリスクが高まります。カフェや駅などの公共Wi-Fiは暗号化されていないことが多く、通信内容の盗聴・覗き見が容易です。

盗み見た情報をもとに社内システムへ不正侵入される危険性があり、VPN未使用での社外アクセスは特に危険度が高くなります。攻撃者は公共Wi-Fiを監視し、ログイン情報やアクセストークンを傍受することで、正規ユーザーになりすまして企業ネットワークに侵入します。特にリモートワークが増加した現在、社外からのアクセスが日常的になっており、不正アクセスの機会も増大しています。

アカウントの乗っ取り・悪用

認証設定が脆弱なシャドーITは、ID・パスワードが漏洩しやすく、アカウント乗っ取りの被害に遭いやすい特徴があります。セキュリティ機能が弱い個人向けサービスや多要素認証未設定のアカウント、公共Wi-Fi経由でのログイン情報盗聴が原因となります。

アカウント乗っ取り後は業務データの窃取、取引先への迷惑メール送信などの被害が発生する可能性があります。2023年8月には、大手IT企業で委託先2社のアカウントが第三者に乗っ取られ、そのアカウントを悪用して社内システムへ不正アクセスされた事案が発生しました。この結果、当該IT企業や関係会社の従業者等の個人データ約5万7千件が漏洩する被害となりました。企業が自社で管理していない委託先のアカウントが悪用され、深刻な情報漏洩につながってしまった典型的な事例です。

企業が実施すべきシャドーIT対策5選

シャドーITのリスクを最小化するために、企業が取り組むべき5つの効果的な対策を解説します。

現状把握とIT資産の可視化

シャドーIT対策の第一歩は、社内でどのようなデバイスやサービスが使われているかを正確に把握することです。現状を知らなければ適切な対策を立てることはできません。

従業員へのヒアリングで「なぜそのツールを使っているのか」理由を聞き取り、許可済みITをリスト化します。この際、従業員を責めるのではなく、業務改善のための情報収集という姿勢で臨むことが大切です。従業員のニーズや不満を把握することで、企業側の改善ポイントが明確になり、効果的な代替策の提案につながります。

IT資産管理ツール・MDMの導入

IT資産管理ツールやMDM(モバイルデバイス管理)などを導入することで、デバイスやソフトウェアの利用状況を可視化・管理できます。これらのツールは技術的な対策の柱となります。

IT資産管理ツール

社内ネットワークに接続されたIT資産を一元管理し、未承認デバイスの接続を検知します。どのようなハードウェアやソフトウェアが社内ネットワークに接続されているか、リアルタイムで把握することが可能です。

操作ログ取得機能

「誰が」「いつ」「どのデバイスで」「どんな操作をしたか」を記録し、不正利用を検出します。インシデント発生時の原因究明にも役立ちます。

MDM

モバイルデバイスを一括管理し、インストール可能なアプリの制限や利用時間の把握ができます。スマートフォンやタブレットの管理に特化したツールです。

IT資産管理の詳しい情報については、「IT資産管理の重要性とは?セキュリティリスク対策とツール選定のポイント」も併せてご覧ください。

CASBによるクラウドサービス管理

CASB(キャスビー)を活用すると、従業員がどのクラウドサービスを利用しているかを可視化し、セキュリティポリシーを適用できます。クラウドサービスの利用が当たり前になった現在、CASBは必須の対策といえます。

CASBは「Cloud Access Security Broker」の略で、クラウドサービスと端末の中間に配置され、クラウド利用状況を監視・制御します。「誰が」「いつ」「どのデバイスで」クラウドを利用したかを把握でき、データ漏洩につながる操作の検知や未承認クラウドサービスへのアクセスをブロックできます。例えば、個人のDropboxアカウントへのアクセスを自動的に遮断し、代わりに企業公認のクラウドストレージへ誘導することが可能です。

セキュアで使いやすい代替ツールの提供

従業員が利便性を感じられるセキュアなツールを企業側が提供することで、シャドーITの発生を根本から防げます。禁止だけでなく代替案を示すことが肝心です。

ファイル共有

ビジネスプラン対応のクラウドストレージ(Box、Microsoft OneDrive for Business等)でセキュアな環境を整備します。個人向けサービスと同等以上の使いやすさを持ちながら、企業のセキュリティポリシーが適用されます。

コミュニケーション

法人向けチャットツール(Microsoft Teams、Slack Enterprise等)で安全かつ効率的な社内コミュニケーションを実現します。LINEの代替として使えるビジネスチャットを提供することで、個人アプリの業務利用を防ぎます。

メール

法人向けメールサービス(Microsoft 365、Google Workspace等)でセキュリティと使いやすさを両立します。フリーメールを使う必要がなくなります。

セキュリティポリシー策定と従業員教育の徹底

ツール導入だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることがシャドーIT対策の要となります。技術と人的対策の両輪が必要です。

セキュリティポリシーの策定

業務で使用して良いデバイス・サービスを明文化し、システム管理者への申請・承認フローを整備します。ルールが曖昧では従業員も判断できません。

定期的な研修実施

シャドーITの危険性を具体的に説明し、実際のインシデント事例を共有して注意喚起をおこないます。自分事として捉えてもらうことが大切です。

セキュリティ監査の実施

定期的に社内のIT資産利用状況を監査し、シャドーITが発生していないかチェックします。監査があることで抑止力にもなります。

インシデント対応手順の整備

万が一シャドーITによるセキュリティインシデントが発生した際の報告ルートや初動対応を明確にしておきます。早期発見・早期対応が被害の拡大を防ぎます。

従業員のセキュリティリテラシー向上が、シャドーIT削減の鍵を握っています。

企業に必要なセキュリティ対策の全体像については、「企業に必要なセキュリティ対策の基本と実践のポイント」も併せてご確認ください。

シャドーIT対策で企業のセキュリティ体制を強化

シャドーITは企業が把握していないIT資産の業務利用であり、情報漏洩やマルウェア感染といった深刻なリスクをもたらします。テレワーク普及や従業員の業務効率化ニーズにより増加傾向にあるため、現状把握、IT資産管理ツール導入、セキュアな代替ツール提供、従業員教育という多角的な対策が必要です。禁止するだけでなく従業員のニーズに応える環境整備が、シャドーIT削減の鍵となります。継続的な監視・教育・改善により、安全な業務環境を構築していきましょう。

STNetでは、企業のセキュリティ対策に効果的なセキュリティソリューションをご提供しています。標的型サイバー攻撃対策サービス「iNetSec SF」は、未知のマルウェア活動を24時間365日監視し、感染端末を自動的にネットワークから分離します。「インターネットセキュリティサービス」では、ウイルスや迷惑メールがお客さま環境に侵入する前にクラウドでブロックします。セキュリティ対策の強化をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事で紹介しているサービス

iNetSec SF

標的型サイバー攻撃による未知のマルウェア活動を検知、被害を防止し、「内部対策」を強化します。

インターネットセキュリティ

Webサイトの閲覧や電子メールの送受信などのインターネット利用におけるセキュリティを高めることができるサービスです。

よくあるご質問

Q. シャドーITとは

A. シャドーITとは、企業が使用許可をしていない、または従業員が利用していることを企業側が把握できていないIT資産(デバイスや外部サービス)のことです。私用スマートフォンでの業務メール送信や、個人契約のクラウドストレージの業務利用などが代表例です。

詳しくは「シャドーITとは?基本的な定義と具体例」をご覧ください。

Q. シャドーITとBYODの違い

A. BYODは企業の承認と管理のもとで個人デバイスを業務利用する仕組みですが、シャドーITは企業の許可を得ずに独自に使用する点が異なります。BYODは適切に管理すればセキュリティリスクを抑えられますが、シャドーITは管理外のため危険性が高まります。

詳しくは「シャドーITとBYODの違い」をご覧ください。

Q. シャドーITが発生する原因

A. テレワークの普及による管理の困難化、従業員の業務効率化ニーズ、セキュリティリテラシーの不足の3つが主な原因です。特に、企業提供ツールの使いにくさや機能不足が、従業員を個人向けサービスの利用に向かわせています。

詳しくは「シャドーITが発生する3つの原因と背景」をご覧ください。

Q. シャドーITのリスク

A. 機密情報・個人情報の漏洩、マルウェア・ウイルス感染の拡大、不正アクセスの増加、アカウントの乗っ取り・悪用といった4つの主要なセキュリティリスクがあります。実際に数十万件規模の個人情報漏洩事例も報告されています。

Q. シャドーIT対策で重要なこと

A. 禁止するだけでなく、従業員が利便性を感じられるセキュアな代替ツールを提供することです。IT資産の可視化、管理ツールの導入、セキュリティポリシーの策定、従業員教育を組み合わせた多角的なアプローチが効果的です。

詳しくは「企業が実施すべきシャドーIT対策5選」をご覧ください。