IT資産管理の重要性とは?セキュリティリスク対策とツール選定のポイント

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中小企業のIT投資を後押しする国の施策、IT導入補助金。補助金により、ITシステム導入の初期コストを大幅に削減できます。この記事では、IT導入補助金の対象事業者や対象製品、申請区分ごとの補助内容や補助率、実際の申請手順などをわかりやすく解説します。クラウド移行やシステム刷新を検討していて、IT導入補助金の活用を検討している企業のIT担当者さまは、ぜひ最後までご覧ください。
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者のIT投資を支援する国の施策です。ソフトウェアやクラウドサービス、ハードウェア機器などの導入費用が対象となります。中小企業のDX推進を後押しし、業務効率化や生産性向上、付加価値向上を図ることを目的としています。補助金を活用することで、ITシステム投資にかかる初期コストを大幅に抑えられるメリットがあります。IT導入補助金制度は2012年に開始され、年々制度が拡充されてきました。
例えば、2024年度版では、インボイス制度対応や複数社共同IT投資への支援など、さまざまな区分の補助金メニューが用意されています。ここでは、どのような事業者が対象なのか、またどんな製品やサービスが補助の対象となるのかを解説します。
IT導入補助金対象の事業者と要件について解説します。下記は2024年度の事業者別の一例です。
事業者種別 | 資本金の額 | 従業員数 | |
---|---|---|---|
資本金・従業員規模の一方が、右記以下の場合対象(個人事業を含む) | 製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 | サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 | 小売業 | 5,000万円 | 50人 | ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 | ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 | 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
従業員規模が右記以下の場合対象 | 医療法人 社会福祉法人 学校法人 |
- | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | - | 100人 |
IT導入補助金の対象となるのは、上記の中小企業、各種法人団体、個人事業主などです。ただし、業種によっては資本金や従業員数の基準が異なる場合があります。上記以外の業種については、公式サイト「IT導入補助金2024」の補助対象者の欄でご確認ください。
どの対象に当たるか判断がつかない場合は、所管の経済産業局に確認することをおすすめします。
特定のIT製品やサービスを導入する際に、その費用の一部が補助金の対象となります。
主な対象は、クラウドサービス、ERPパッケージソフト、セキュリティソフトなどです。クラウドサービスの具体例としては、SaaSのグループウェアやECサイト構築サービス、IaaSのサーバーリソースなどがあげられます。
一方、汎用的なパソコンやタブレット端末、通信回線の費用は対象外となるケースが多い(※1)ようです。
※1 変更になる可能性があるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
参照:IT導入補助金2024
ここでは、2024年度を例として、中小企業・小規模事業者対象のIT導入補助金の申請区分と補助内容について解説します。申請区分は、通常枠のほか、インボイス対応やセキュリティ対策推進、複数社連携IT導入など、目的に応じて複数あります。それぞれの特徴を押さえたうえで、自社に最適な補助金を選びましょう。
通常枠は、サービス等生産性向上IT導入支援事業として補助を行う枠です。中小企業・小規模事業者向けに補助額が2つのパターンに分かれています。
・5万円以上150万円未満(補助率2分の1):ITツールの導入機能が1機能以上の場合
・150万円以上450万円以下(補助率2分の1):ITツールの導入機能が4機能以上の場合
主にソフトウェアやクラウドサービスなどのIT投資に幅広く活用できる補助金枠で、導入するITツールの機能数によって補助上限額が変わります。機能数が多ければ上限額も高く設定されているため、本格的なシステム導入にも対応できます。経費の半額が補助対象となり、初期コストを抑えられるメリットがあります。
電子インボイスの制度化に向け、2023年10月から導入が開始された新しい枠で、以下の2つのタイプがあります。
【インボイス対応類型】
・50万円超350万円以下(補助率3分の2):ITツール(会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトなど)のうち2機能以上を導入する場合
・50万円以下(補助率4分の3、小規模事業者は補助率5分の4):上記と同等のITツール1機能を導入する場合
・10万円以下(補助率2分の1):ハードウェア(PC・タブレット等)導入の場合
・20万円以下(補助率2分の1):ハードウェア(レジ・券売機等)導入の場合
【電子取引類型】
・下限なし~350万円(補助率3分の2):受発注までのシステム一式の構築が対象
いずれのタイプも、電子インボイスに対応したITシステムの新規導入が必須条件となります。インボイス対応類型は製品のみ、電子取引類型はより広範なシステム構築に対して補助が受けられます。
中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援する枠です。
・5万円以上100万円以下(補助率2分の1):独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービスが対象
対象のサービスは、ウイルス対策ソフト、ログ管理ソリューション、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、セキュリティASPサービスなどがあります。
10者以上の中小企業・小規模事業者が共同でITシステムを構築する場合に活用できる枠です。
【基盤導入経費】
・50万円超350万円以下×グループ構成員数(補助率3分の2):ITツール(会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトなど)のうち2機能以上を導入する場合
・50万円以下×グループ構成員数(補助率4分の3、小規模事業者は補助率5分の4):上記と同等のITツール1機能を導入する場合
・10万円以下×グループ構成員数(補助率2分の1):ハードウェア(PC・タブレット等)導入の場合
・20万円以下×グループ構成員数(補助率2分の1):ハードウェア(レジ・券売機等)導入の場合
【消費動向等分析経費】
・50万円×グループ構成員数(補助率3分の2):消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システムなど(クラウド利用料は最大1年分)
<上記を踏まえたうえ、さらに基盤導入経費と消費動向等分析経費の合計が下記のとおり>
・下限なし~3,000万円以下
【事務費・専門家費】
・下限なし~200万円以下(補助率3分の2): 参画事業者のとりまとめに係る事務費、専門家費などの経費
複数社連携IT導入枠の活用により、自社単独よりも大きな規模のIT投資が可能となります。ただし、地域DXや生産性向上を狙いとした、複数事業者連携によるIT投資プロジェクトが主な対象になるなど、一定の要件を満たす必要があります。
IT導入補助金の申請には期限があり、手続きにも一定のルールがあります。毎年、複数回に分けて募集が行われることが多いため、スケジュールを確認し、必要書類を整えたうえで適切に手順を踏む必要があります。また、申請時の注意点にも目を配りましょう。
申請受付期間や交付決定日は、年度ごとに異なるため、公式サイトなどで最新の情報を確認する必要があります。
確定している募集回のスケジュールのみ公表されており、以降のスケジュールは随時更新されていきます。詳しくは公式サイト「IT導入補助金2024」の「事業スケジュール」に書かれています。また、各募集回の交付決定は、申請締切から約1~2カ月後が予定されています。
主な必要書類は、交付申請書、事業計画書、見積書、現在事項全部証明書などで、jGrants(Jグランツ=電子申請システム)の専用サイトから電子申請を行います。jGrantsとは、補助金の電子申請を一元的に管理するシステムで、各種申請や審査状況の確認を効率的に行うことができます。
事前準備として、本人確認のためのgBizID(GビズID)プライムの取得、電子証明書のインストールなどもしておきましょう。gBizIDとは、1つのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできる共通認証システムのサービスです。gBizIDには、IDプライム、IDメンバー、IDエントリーという3種類のアカウントがあります。サービスにより必要なアカウントが異なりますが、ここではIDプライムが必要となります。gBizIDプライムの取得や詳細は公式サイトに書かれています。
参照:gBizID
申請から交付までには、一連の手順を踏む必要があります。下記に順に解説します。
1.交付申請:交付申請書、事業計画書、見積書などの必要書類をそろえ、jGrants専用サイトから電子申請を行います。
2.交付決定:提出された書類に基づき審査が行われ、交付決定や不交付決定が通知されます。
3.ITツールの発注・契約・支払い:交付決定後に、補助対象のITツールを発注・契約し、導入費用の支払いを行います。
4.事業実績報告:ITツールの導入が完了したら、実績報告書とともに請求を行います。
5.補助金交付: 実績報告書が承認されると、補助金の交付が行われます。
6.事業実施効果報告:一定期間経過後、ITツール導入による業務効率化などの効果を報告する必要があります。
申請時点で、既に発注や契約、支払いを済ませた製品・サービスは補助対象外です。前年度に不採択決定となった事業については、事業内容を変更するなど、公募要領で定められた一定の条件を満たせば再度申請できる場合があります。
補助金の交付には加点要件があり、要件を満たせば加点されて採択される可能性が高まるメリットがあります。一方で、過去に不正受給などの事実があれば減点される可能性があります。加点・減点の有無は審査で判断されますので、注意しましょう。
IT導入の時期をしっかりと見越して、あらかじめ補助金申請の計画を立てることが何より重要です。申請書類は、公募要項に基づいて正確かつ丁寧に作成し、事業計画では、ITツールの導入によってどのような効果が期待できるのかを具体的に示しましょう。
申請時の注意点、再申請に関わるルールは毎年変更になる可能性があります。必ず最新の情報を確認しましょう。
参照:IT導入補助金2024
IT導入補助金は、初期費用を大幅に軽減できるメリットがあります。原則として返済の必要がなく、複数回の申請も可能です。高い採択率も魅力的なポイントのひとつといえるでしょう。
IT導入補助金は、ITシステムの導入にかかる費用の一部が補助対象となります。具体的には、クラウド利用料やセキュリティソフトの購入費、システム構築費、ASP利用料などです。初期費用の大部分がカバーされるため、企業の負担は大幅に軽減されます。中小企業でも本格的なIT投資が可能になり、競争力の強化につながります。
IT導入補助金は、返済の必要がない給付型の補助金です。金利の心配や借入れへの抵抗感もないため、中小企業にとってIT投資の障壁が大きく下がります。自社の資金繰りを気にすることなく、機動的にシステム刷新を行えるメリットがあります。
IT導入補助金の申請は、同一年度内であれば複数回行うことが可能なため、インボイス関連の補助金と通常枠の補助金を別々に活用できます。翌年度以降の継続申請については、公募要領で定められた条件を満たす必要があります。段階的なシステム投資や、新たな目的に応じて補助金を活用できる点が魅力です。
IT導入補助金は高い採択率となっており、補助金申請のハードルはそれほど高くありません。上手にIT投資の機会を捉えられる良い制度といえるでしょう。適切な計画と準備を行えば、採択される可能性は高いと考えられます。
IT導入補助金は、中小企業の生産性向上やITシステム投資を強力に支援する国の重要な施策です。IT導入補助金を上手に活用することで、新しいITツールの導入における初期コストを大幅に抑え、競争力のある事業体制を構築できます。しかし、補助金の種類が多岐にわたり、対象製品やサービス、申請手順など、活用するための情報が複雑で分かりづらいのが現状です。
本記事では、2024年度を例に挙げて、IT導入補助金についてポイントをわかりやすくまとめました。自社のニーズに合わせて最適な補助金の種類を選び、スムーズな申請を心がける必要があります。手続きが難しい場合は、専門家に相談するのも賢明でしょう。
STNetではクラウドやセキュリティ分野のITソリューションを提供しており、IT導入補助金の対象にもなっています。代表的なものとして、柔軟性と安全性を兼ね備えたクラウドサービスのSTクラウド サーバーサービス[FLEXタイプ]や、サイトの脆弱性を診断する「セキュリティ診断サービス」、不正アクセスからサイトを守るクラウド型WAFの「Scutum」サービスなどがあります。お客さまのニーズに合わせた最適なIT環境をご提供していますので、ITシステム投資をお考えの企業担当者さまは、補助金の活用と併せてご検討いただき、ぜひお気軽にご相談ください。