導入事例-大塚HD-02

大塚ホールディングス株式会社

大塚グループの重要システムのインフラ運用を任せたことで
コア事業に注力する“攻め”のITを実現

世界の人々の健康に貢献する“なくてはならない企業”を目指し、革新的で独創的な医薬品の開発に挑戦し続ける大塚グループ。持続的成長を支える経営基盤強化の一環として、同グループではIT環境の統合・集約化を推進、製薬事業に不可欠なGLPシステムのインフラの運用を外部へ委託することを決断した。そのビジネスパートナーとしてSTNetを選定、移行先にはデータセンター「Powerico」を採用した。この決断によって同グループ内からは様々な成果が期待されている。

ポイント

大塚グループがSTNetをビジネスパートナーに選んだ最大の理由—。それは他のITベンダーが二の足を踏むGLPシステムのインフラ運用にまで踏み込んだ提案をしたからだった。

なぜその運用の委託に躊躇するのか。それはGLPシステムがGLP要件に適合して、医薬品の非臨床試験(安全性試験)が実施できるように対応したシステムだからだ。不正や薬害を防ぐために厳密な基準が設けられており、GLP基準に則ったシステムであることは必須である他、その運用までも基準に準拠することが求められる。大塚グループでは従来から仮想化基盤を採用し、リソース効率の向上を図ってきたが、GLPシステムは専門性が高く、インフラの運用にもGLP要件に関する知識の習得が必要になる。

GLPサーバー統合プロジェクトのメンバー

GLPサーバー統合プロジェクトのメンバー

そもそもGLPシステムのインフラ基盤をクラウド化し、インフラ運用をアウトソースするのは、国内製薬業界としては前例がない試みだったという。「ITベンダーにとってはGLPシステムのインフラ運用に必要な要件を理解し、各社のこれまでに培ってきた運用ノウハウの集約化を図る作業が必要です」と大塚製薬 徳島研究所 安全性研究センターで情報管理室 室長の小原直樹氏は指摘する。それを踏まえたうえで、「何を」「どういう手順で実施するか」を手順書(SOP)にまとめ、SOPに基づいて運用し、さらに実施した作業については全て記録に残し監査や作業検証に対応できなければならない。

要件を満たす運用体制整備を図る 付加価値の高い対応力を評価

この課題に対し、STNetはあらゆる運用業務に関する手順書(SOP)と実施記録の整備に加え、それを回していくための運用体制も新たに構築した。STNetは自治体、金融機関などミッションクリティカルなシステムの構築・運用を数多く担うほか、遠隔医療を支えるシステムの構築・運用など医療分野での実績も豊富だ。そのプロジェクトで主導的な役割を果たした人材を、GLPシステムのインフラ運用の運営管理者、運用責任者、資料保存責任者、信頼性保証部門責任者に抜擢。大塚ホールディングス(以下、大塚HD)とグループ会社のアドバイスのもと、何度も運用手順などのブラッシュアップを重ねた。さらに運用を担う全メンバーへの専門教育、SOP教育を徹底することで、求められる運用レベルの確保と外部監査へ対応準備を進めたという。

「業界固有の基準や規則に対応した体制を整備し、求める運用レベルを実現するのは容易なことではありません。ファシリティだけでなく、人を含めた管理が行き届いたSTNetだからこそ実施できた。正直、ここまで徹底できるとは驚きました」と大塚HD コーポレートサービス部 IT企画室 室長補佐の眞野 民男氏は述べる。

システム構成についても万全を期した。ネットワークは各社GLP施設からレイヤ3レベルで論理的にクローズドな環境でつながる構成だ(図)。仮想環境のHA構成に加え、多くのハードウエアも冗長化した。「各社が自前で運用していた従来は、電気設備の法令点検により、サーバーの電源OFF、立ち上げに伴う稼働確認などが必要でしたが、今はそれらの作業が不要になり、計画停止以外は“止まらないシステム”を実現できました」と大塚製薬工場 情報システム室課長の小林 泰浩氏は述べる。データについても、遠隔データセンターにバックアップ保存する仕組みを構築し、DR(ディザスタ リカバリ)対策を強化した。

■大塚ホールディングスが実現したGLPシステムの新インフラ基盤

わずか2カ月で新運用体制を整備 30%以上の運用コスト削減が可能

すでにグループ内の大塚製薬、大塚製薬工場のGLPシステムは2016年末から統合サーバー環境下で運用されており、2017年後半には大鵬薬品工業も加わる。運用定着による成果が見えてくるのは少し先となるが、新たな運用体制に寄せる期待は大きい。

その1つが、運用管理の自社負担が劇的に軽減できることだ。日常の目視点検はもちろん、トラブル対応、外部監査やバリデーションなどの作業もSTNetが対応するため、インフラ回りに人員を割く必要がない。「その分をコア領域、すなわち各社のノウハウの蓄積であるアプリケーションの運用に多くの人員と時間を充てることができます。創薬の研究開発など新たな価値創出に向けた基盤づくりが進むと期待しています」
と眞野氏は語る。

コスト面についてもメリットが大きい。「インフラや一部ツールの共有化に加え、インフラ運用の手間が不要になるため、グループ全体で30%以上のコスト削減が可能になる見込みです」(眞野氏)。
納期通りに新たな運用体制をスタートできたことへの評価も高い。「期間が短いこともあり、当初は納期までに構築できるかと不安でしたが、GLP要件に対応したSOPをゼロベースから2カ月という短期間で作成できたことに対して、グループ各社から高く評価する声が上がっています」と小原氏は語る。

加えて、予想外の波及効果も出ている。統合作業を進めていくうちにグループ内での業務面の情報共有が活発となったのだ。「インフラ以外でもグループ協業で対応できることが多くあることに改めて気づかされたのです。医薬品などの電子申請に関するノウハウ習得を協業して進めていく対応もその1つ。その他業務プロセスの共通化についても、グループ協業で進めていく機運が高まっています」と小林氏は期待を寄せる。

今後はGLPシステムだけでなく、他のGxPシステムの運用移管も視野に入れる。GxP領域のインフラ部分を集約していけば、ノンコア業務のスリム化がさらに加速する。「製薬の研究開発は10年、20年という長い時間をかけて投資をし、成果が出てはじめてリターンが得られる。長期的に事業を支援するビジネスパートナーとして、STNetには今後も大いに期待しています」(眞野氏)。

今後も大塚グループではコア領域への経営資源の集中を加速し、より革新的かつ独創的な製品を提供することで、さらなる成長を目指していく。

小原 直樹氏
眞野 民男氏
小林 泰浩氏
PROFILE

社名 :大塚ホールディングス株式会社   所在地 : 東京都千代田区神田司町2-9   資本金 :816億9000万円
社員数 : 連結 3万1215人(2016年9月30日現在)

事業概要 : 大塚製薬、大塚製薬工場、大鵬薬品工業、大塚倉庫、大塚化学、大塚メディカルデバイスなどからなる大塚グループの持株会社。大塚グループの理念の根幹をなす「創造性」を最大化するグループシナジーの創出を支援するとともに、世界の人々の健康に貢献する革新的な製品の提供を通じ、グローバル価値創造企業を目指す。
URL https://www.otsuka.com/

掲載している所属部署名、役職名は2017年1月時点のものです。

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